坂本龍一 第8回 「エコのファッション化」について言いきる
第8回 「エコのファッション化」について言いきる
地球環境問題がファッション化していると懸念を示すのは、オウプナーズでもおなじみ服飾史家でコラムニストの中野香織さん。
さまざまな要素が絡み合う複雑な問題に、教授はどう言いきるのか?
まとめ=オウプナーズPhoto by Jamandfix
はやくから環境問題に真剣に取り組んでいらっしゃる坂本教授に、ぜひご意見をうかがいたいのです。
「倫理」「環境」「人道」に配慮することはとてもよいことだとは思うのですが、いまではそういう配慮を表現することがファッションにすらなってしまい、ブランドのエコバッグを買うために行列しているお客にシャンパーニュがふるまわれたり、チャリティパーティにこれみよがしに高価な装いのセレブが集ったり、という虚栄がむんむんにおう図を見ると、なんだかヘンだ、滑稽だ、と感じるのです。
しかも、環境や倫理への配慮を欠くブランドへのはげしいバッシングさえはじまる始末で、こんな風潮に「環境ファシズム」の恐怖さえ感じます(それってまったく「人道的」じゃない!)。
実際、「エコ疲れ」(eco fatigue)という新たなトレンドに思わずほっとしたり。
こんなブキミな、矛盾に満ちた風潮でも、結果として環境に貢献できればそれでよい、と考えるべきなんでしょうか? 教授のお考えをお聞かせください。
中野香織
危機感の個人差と現状
うーん。いろんな考えがあっていいんじゃないでしょうか。
温暖化の現状をどの程度危機的ととらえているかは個人差がありますが、確実に言えることは、危機に対応できる時間は短くなっているということです。
このことはぼくの個人的考えだけではなく、科学者の集まりであるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル)も、レポートごとに危機度は高まっていると警鐘を鳴らしています。
IPCCも、数年前のレポートではかなりゆるい数字を予測していたのですが、実際のCO2の濃度や温度の上がり具合をみて数字を修正せざるを得なくなり、いまでは近未来的に、まずい状況になりつつあるとしています。
6500万年前に小惑星の衝突で恐竜が絶滅したように、いま温暖化という“小惑星”は確実に地球に向かってきている。ゴタゴタ言っている場合じゃない、もう行動をおこすしかないんだ、そうじゃないと死ぬんだ……というのが、ぼくの現状に対する認識です。
ファッション化は悪いことじゃない
現状認識は個人個人で違うのは当然ですが、ファッション的、あるいは普段の生活のなかでカジュアルにエコが語られるということは、いいことだと思います。
もちろん、一過性のブームで終わってしまうのは問題だけど、ファッションレベルでも語られるくらいポピュラーになっているということは悪いことじゃない。
たとえば、エコでモテる、ということでもいい。実際若い女の子のほうが、エコに対する意識は先をいっている。オヤジたちの意識のほうが遅れているでしょ?
モテたいからエコ、でもかまわないのです!
だって、いちばん高いでしょう、そういうモチベーション。
スタイリング|櫻井賢之
グルーミング|ふじた まゆみ(ビタミンズ)
衣装協力|ランバン ジャパン(Tel.03-3289-2782) ニットジャケット21万5250円、ポロシャツ12万8100円、ネクタイ4万5150円、トラウザーズ21万7350円
撮影協力|TIME & STYLE EXISTENCE(Tel.03-5464-3205) VALLEハイチェア3万9000円
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