坂本龍一 第5回 「エコ」について言いきる
第5回 「エコ」について言いきる
昨今の“エコブーム”を憂える読者から、教授に質問。
企業はエコを利用しているのか?
メディアは真実を伝えているのか?
われわれは、どうすればいいのか?
まとめ=オウプナーズPhoto by JAMANDFIX
主にテレビや映画のドキュメンタリーの編集を生業としております。
一般の人々のあいだでもエコロジーへの関心が高まっており、
私の仕事でもそうしたテーマに沿った番組や映画などを編集する機会が増えましたが、
私個人、最近のいわゆる「エコブーム」は実益にかなったものか、疑問を感じています。
とくに企業などがエコを謳い文句にキャンペーンを展開していますが、
結局のところ自社のイメージアップによって商品をたくさん買ってもらおうという、
便乗エセエコ(エゴ)ロジーにとどまっているのではないか。
番組も視聴率重視の考えか、真実を伝えきれていないのが現状です。
私は仕事上で知り得た公開可能な情報を、
なるべく知らせることのできる知人とシェアし、
それを実践していくことしかできません。
われわれ一人ひとりができることは本当にかぎられた小さな努力ですが、
それでも50年後には北極の氷は間違いなく消滅するでしょう。
坂本さんは、こんな状況について、どのようにお考えでしょうか?
身の丈にあったことを
南米のアンデス地方に伝わる、有名なハチドリの話です。
ある日山火事がおきて、動物たちは逃げた。でも小さなハチドリだけは、口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としつづけた。
それを見て、ほかの動物たちは「そんなことやって何になるんだ」と笑ったけど、ハチドリは「私にできることをしているだけ」と言ってやめなかった。
おまえは、ハチドリだ!
ハチドリはハチドリができることを、つまり身の丈にあったことをやった。
ハチドリであることを自覚して、逃げないでやりなさい。
ということだと思います。
無力感におそわれることも
地球温暖化にもさまざまな意見や説があります。
科学者にもいろんな立場の人がいて、中立ではなく、ある企業寄り、政府寄りということもあります。
ぼくらは専門家ではないからわからないけど、インターネットなどでさまざまな情報を得ることはできるのだから、自分なりに判断する目をもたないといけない。
わからないから、といって何も行動しないのはもったいない。踏み出した一歩が誤りだと気がついたら、修正すればいいのです。
あまりにも問題が大きすぎて無力感におそわれることもあるでしょう。そんなときは「Think pessimistically, act optimistically」、考えるときは悲観的に、行動するときは楽観的に、です。
悲観的に考えるということは、最悪のケースをも想定しておくということだから、とても科学的な姿勢です。でも行動するときは楽観的に、ポジティブにしないと意味がないですから。
スタイリング|櫻井賢之
グルーミング|ふじた まゆみ(ビタミンズ)
衣装協力|ランバン ジャパン(Tel.03-3289-2782) ニットジャケット21万5250円、ポロシャツ12万8100円、ネクタイ4万5150円、トラウザーズ21万7350円
撮影協力|TIME & STYLE EXISTENCE(Tel.03-5464-3205) VALLEハイチェア3万9000円