第26回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(3)
Lounge
2015年4月17日

第26回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(3)

第26回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その3・最終回)

アントワン・ダガタ氏へのインタビューの最終回。シャッターを切る瞬間はどのように訪れるのか、また、作品のなかにしばしば本人が登場する彼の作風の真意とは。そんな話を聞きながら、あらためて彼の写真を見ることで、作品への理解が深まると同時に、彼が写真を通して表現したいものの正体が、より鮮明に見えてくるようでした。(北村信彦)

Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

直感で自分とおなじ感触をもった人を選ぶ

──隣り合わせの空虚とエクスタシーを切り取る、とのお話でしたが、シャッターはどんな瞬間に切るんですか?

ダガタ 感じたときに切る、としかいえないですね。だからいつでも小さなカメラを携帯しています。でも、結局撮るのは夜ばかりなんですけど(笑)。人を撮るときにも直感で自分とおなじニオイのする人を選んでいます。たぶん彼らも私同様、孤独感や空虚感といった感触を自分のなかにもった人だと思います。撮影ポイントも直感ですね。はじめての土地でも、どこで撮ればいいのか直感でわかるようになってきました。

──撮った場所や人のことは全部覚えていますか?

ダガタ 名前は私にとって重要ではありませんので覚えていません。メモも取りません。しかし、そのときのフィジカルでエモーショナルなコミュニケーションのことだけは、よく覚えています。

世界の一員として写真のなかに紛れる自分

──今回の写真展では、入り口付近にダガタさん自身が写った写真のみを展示したコーナーがありますね

ダガタ 自分自身が登場する写真というのは、私の写真の特徴でもあります。私だとはわかりにくいかもしれませんが、あのコーナーだけでなく、会場内のさまざまな写真に私の姿が混じっています。はじめの頃はそうでもなかったのですが、徐々に自分が写真のなかに多く登場するようになってきました。セルフでシャッターを切ったものもあれば、誰かにカメラをわたして撮ってもらったものもあります。ですが、それらの写真はあくまでもセルフポートレートではありません。その世界の一員として写っているのです。

──それは撮る側と撮られる側という境界をなくそうという試みですか?

ダガタ そうです。これは私のロジックを正当化する行為なのです。私にとって写真家とは、客観的に対象を撮る者ではなく、紛れなくてはいけない存在なのです。森山大道さんは「写真はアメーバだ。向こうから感染してくる」といいましたが、私の考えもまったくおなじです。写真家は被写体と隔たりをもった存在ではなく、目の前の現実の一部にならなければならないと考えています。ですから今回この個展のタイトルも『SITUATION』としました。

北村 こうしてダガタさんの言葉を聞いてから写真を見ると、さらに理解が深まりますね。自分の思ったとおりだった点も再確認できましたし、まったく新たな意味を見出すこともできました。夜と明け方にしか撮らないってところもいいですよね。このインタビューを読んだオウプナーズ読者の方にも、ぜひ生で作品を見てほしいと思います。彼の言葉を思い出しながら作品を見ると、きっと作品に隠された深い意味を見出すことができると思いますから。ダガタさん、きょうは貴重なお話をどうもありがとうございました。

ダガタ こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。

第26回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その3・最終回)

アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』
日程|2月1日(金)まで開催中
時間|12:00~20:00(月曜定休)
場所|RAT HOLE GALLERY
港区南青山5-5-3

HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
電話|03-6419-3581

           
Photo Gallery