ピエール・バルー、フレンチ サウダージ・ミュージックの原点を探る
ピエール・バルー、フレンチ サウダージ・ミュージックの原点を探る
フランスを代表する文化的自由人、Pierre Barouh(ピエール・バルー) 。
日本では、映画『男と女』への出演・主題歌でもうお馴染みだが、ムーンライダースやYMOをはじめとした80年代から90年代の日本の文化的アーティストたちとも親交もとても深い人である。
さらに彼が立ち上げた自主音楽レーベル『サラヴァ』は、設立から40年目を迎え、彼が日本に伝えたフレンチ サウダージ・ミュージックやフレンチボッサは、日本の音楽シーンに大きな影響を与えている。
今年(2007年)で73歳になるピエール・バルー。そんな彼が9年ぶりにオリジナル・アルバム『Daltonien』をリリース。
日本のアーティストたちとのコラボレーション曲も収録されており、現在もなお、わが国にいい風を送り続けていることには驚かされる。
そして、15年ぶりのホール・コンサートが、2007年9月17日(月・祝)に恵比寿ガーデンホールにて決定。
ゲストアーティストに、HASYMOの高橋幸宏、カヒミカリイを迎えるなどファンにはたまらない内容となっている。
今回は、来日前のピエールに、フレンチ サウダージ・ミュージックの原点や彼の音楽人生についてお話をしていただいた。
文=金子英史(本誌)写真=三浦順光
音楽をやろうと思ったキッカケを教えてください。
13歳か14歳のころだったか家の下にあった小さな映画館で「悪魔は夜来る」という映画を見ました。
そのなかで歌われていた歌にとても感動して、それ以来、自分は一生音楽と言葉と映像で人生を表現しようと思ったのです。
小さい頃は、どんな音楽、ミュージシャンを聴いていましたか?
小さい頃は、母や祖母が家でずっと歌を歌っていたんです。ラディノの歌です。
ほかの音楽を聴きだしたのは、思春期になってからですね。
音楽的に影響を受けたアーティスト・ミュージシャンを教えてください。
ビリーホリデー、ジョルジュ・ブラッサンス、シャルル・トレネなど数えきれません。
若い頃、旅に出られていたとのことですが、いちばん、思い出に残っている土地は? それはなぜですか?
それぞれの土地に思い出はありますが、
私は現在を生きることに夢中で、あまり思い出にひたる暇がないのです。
ブラジル音楽との出会いは? なぜ、ボサノバ、いわゆるサウダージ・ミュージックに惹かれたのでしょうか。
1959年にポルトガルで初めてブラジル音楽を、シブーカから聴きました。
当時、ジョアン・ジルベルトが最初のレコードを出したばかりでした。
ですから、そのときはまだボサノバという言葉もありませんでしたし、ヨーロッパでもだれもその音楽を聴いたこともなかったのです。
ジョアンとヴェニシウス・ド・モラエス、アントニオ・カルロス・ジョビン。
この3人のなす音楽のメロディーライン、ハーモニーの美しさ、そして深みのある詩。
すべてが想像もできないくらいゆたかで新しいものでした。
当時としては、多分、かなり珍しいと思うのですが、インディーズの音楽レーベルを立ち上げた理由を教えてください。
映画「男と女」は自主制作の映画でした。
資金調達のために私はフランシス・レイとふたりで書いた歌の出版権を売ってフイルム代を捻出しようとしたのですが、無名の監督でしかも映画に歌を使うことは、当時、とてもありえない発想だったので、だれも買おうとしませんでした。
そこで「それなら自分でやってやる!」とつくったのがサラヴァ音楽出版だったのです。
映画が大成功したときに、最初は印税で2枚だけ、2アーティストだけのレコードをつくるつもりでした。
それが、ブリジット・フォンテーヌとジャック・イジュランのレコードでした。
しかし、それをプロデュースしはじめると、つぎからつぎへとすばらしい才能をもちながら世の中に認められないアーティストたちが、私のもとに集まってきたのです。
そこからがはじまりました。
"サラヴァ(SARAVAH)"という名前の由来は?
ブラジルの奴隷たちがアフリカからもってきた信仰でつかわれる言葉、「あなたに幸あれ」という意味なんです。
「Saravah !」と声をかけたら「Saravah !」と返すのです。
音楽だけでなく、俳優としても活躍されていましたが、俳優業からなにか音楽的に得たもの、インスピレーションを受けたことはありますか?
「男の女」のヒットのあと、世界中のプロデューサーからシナリオが送られてきて映画出演の話がありました。
しかし、それはすべて断りました。
実は、俳優業はあまり好きではないのです。
『男と女』は、友人との自主制作で、映画制作の一環として出演しただけなんです。
だから、私が俳優をするときは、友人からのたってのお願いや、自分が制作に関わるときだけです。
日本のドラマにも出ていたとの情報がありますが、出演することになったキッカケ・経緯を簡単に教えていただけますか?
友人であるタツムラ・ジン(龍村仁/映画監督)が誘ったからです。
それはたしか、ロシア人のバイオリンの先生役で面白かった(笑)。
日本に対する印象を教えてください。
日本は伝統と未来が同居する国、合理性と原始的なアニミズムが同居する国です。
最高にエキサイティングですよ。
今回、共演する高橋幸宏さん含め、YMO、ムーンライダースなど、日本のミュージシャンとは、80年代にアルバムの共同制作をしていたり、今回の新アルバム『Daltonien』にも日本のミュージシャンが参加するなど親交が深いですが、日本のミュージシャンにたいして、どのような印象をおもちですか?
80年代前半の日本人のプレーヤーたちは、(私と仕事をした彼らはちがうけど)先生のレッスンをよくおさらいしたいい生徒のようなプレーヤーが多かったですよね、いまはまったくちがう。
たぶん、
世界でもっとも独創的でレベルが高い音楽家たちがいる
と思います。
ジャケットにも新宿の光景が写っていたりしていますが、『Daltonien』のコンセプトはなんですか? またこのタイトル名の由来を教えてください。
CDにも書いたのですが、ダルトニアンとは色盲のこと。私はそうなのです。
タイトル曲のダルトニアンは、
色盲である自分は目の前にいる人の肌が何色でも関係ない
という人種差別の無意味さをうたった歌なんです。
ジャケットの新宿の街は、私の大好きな街のひとつです。日本は、まさに古さと新しさの混在する街です。
ジャケットに一緒に写っているネコはあなたのネコですか?
末娘が神社で拾ってきた子ネコです。最初は、娘の手のひらに入ってしまうほど小さかった。
話しかけると返事ができるネコなんです(笑)。
今回の日本でのライブ公演は、どんなところに注目したらよいでしょうか?
私の最高の音楽パートナーである、ジャン・ピエール・マスをはじめて日本に連れてきます。
彼と日本での最高のパートナー、ヤヒロ・トモヒロ(八尋知洋)、若きチンドン・ミュージシャンたち、そして朋友 高橋幸宏、カヒミカリイ、そのほかゲストも集まり、一期一会、出会いの夕べをつくりたかった。
いつものように一切取り決めなし、リハーサルなしでやります(笑)。
茶会と同じ、心の準備だけあればあとはその場でどう展開するか。
いつものようにドキドキしながらやります。
ですから、みなさんもハラハラしながら見てください(笑)。
日本のファンへメッセージをお願いします。
私のような寡作で気まぐれはアーチストをいつも応援してくれてありがとう。
日本の文化や人々にはいつもすばらしい刺激を受けています。
来年は日仏友好150年。音楽での日仏友好のイベントをプロデュースするつもりです。
今後、音楽レーベルの『Saravah』では、日本の若きアーティストを紹介していきます。楽しみにしてください。
『Daltonien』CD+DVD
価格:3,000 YEN (税込)
発売 : オーマガトキ
NOW ON SALE!
ピエール・バルー9年ぶりのオリジナル・アルバム発売中!
ピエール・バルー コンサート2007
公演日時:2007年9月17日(月・祝)
開場:16:00 開演:17:00
会場 : 恵比寿ザ・ガーデンホール
Musicians:
ピエール・バルー / Pierre Barouh
ジャン=ピエール・マス/Jean-Pierre Mas (piano)
ヤヒロ トモヒロ (perc.)
井野信義 (Wood bass)
マイア (Backing vocal & Flute)
ちんどんブラス金魚 (ちんどん)
スペシャルゲスト:
高橋幸宏
カヒミカリイ
チケット料金 :
全席指定 8,400円 (税込) 未就学児童入場不可
プレイガイド
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード : 265-107
ローソンチケット 0570-084-003 Lコード : 33648
e+ http://eplus.jp
主催:ディスクガレージ
後援:フランス大使館文化部
企画:ラミュゼ
協力:SARAVAH / オーマガトキ
制作招聘:MAKIMURA KENICHI / PROMAX
協賛:SG信託銀行
チケットに関するお問い合せ:ディスクガレージ 03-5436-9600(平日12:00-19:00)
当日券情報
9/15(土)より、当日券電話予約:03-5436-9700(12:00~16:00)受付。
9/17(月)会場にて15:00より発売予定。