第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)
Lounge
2015年4月17日

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

第13回 ボリス・ミハイロフという謎解き その3(番外編)

edit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

「BEACH」より。© Boris Mikhailov

ギャラリー全体の中でどう感じさせられるか

ボリスさんの話に関連して、今回はあらためてギャラリーというものについての話をしようと思います。

ボリスさんの場合もそうなんですが、展示全体から感じるあのニュアンスというのは、作品一枚一枚を見ていても感じないんです。彼が考えていたのは、やっぱり全体でどう感じさせるかなんですよ。けっして一点一点に執着させないんだけど、それでいて緊張感のある展示になっています。ある意味、余計なものが削ぎ落とされていないとあの感じは出ないでしょうね。しかし、だからといってベストアルバムでもダメなんです。

たとえばヨーロッパのギャラリーなどである人の作品を「これ全部」といって買っていくパトロンがいるのもわかる気がします。“この作品”ではなく“この世界”を手に入れたいということです。また一方で、ギャラリーの中でドキッとするものが、家に持ち帰ったときにドキッとするかというと、またそれも違う話でしょうね。

アンディ・ウォーホルのシルクスクリーンなんかも、街中のどこかのお店に飾られていると、なんとなく雰囲気に溶け込んでしまっていますが、あれもギャラリースペースで見ると全然見え方が違うんですよ。やっぱりそれぞれの作品には“居場所”がある。だから個展をやるアーティストは、まず箱(ギャラリー)を見るんです。

ポスターより。© Boris Mikhailov

ラットホールのストーリーを作っていきたい

ラットホールギャラリーに関しては、やっていくうちにひとつのストーリーみたいなものが見えてくるといいな、と思っています。
それは作家の交友関係でもいいですし、日本の写真史みたいなことでもいいですけど。いずれにしても、まずはこちらから片思いな気持ちをアーティストに投げかけて、そのアーティストがあの場所を見て、なにかひらめいて向こうからもアプローチしてくれるというカタチが理想。逆にいえば、それがないと成り立たないんです。

どこでもいいからやらせろじゃ話にならないし、誰でもいいからやりますよ、じゃダメなんです。そして、そういうスタンスがだんだん周りの人にも伝わっていけば、おのずとあの場所の本当の意味が出てくるんじゃないかと思っています。

ボリス・ミハイロフ写真展「BEACH」
日程:2007年2月28日(水)~3月25日(日)
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581

ボリス・ミハイロフ Boris Mikhailovは、1938年、旧ソビエト連邦ウクライナの大工業都市ハリコフ生まれ。(現在ベルリン在住)鉄道工社の電機工であった28歳で写真を始めます。その後、当時社会主義体制の抑圧下、タブーとされていたヌードを撮影したことで職を失い、写真家として独立します。エネルギッシュな活動により重要なアーティストとしての評価を築いていきます。旧ソ連体制下、自由な制作活動を規制される中、体制への風刺をこめた作品やきわめて私的な情景を写しとった写真を数々撮影。圧力に屈しない柔軟な精神から生まれた、真実を見つめようとする、激しく、しかし、あたたかいまなざしは、ヨーロッパでまず評価され、それから、世界的に認められるようになります。 90年代に入ると、世界各都市における美術館での個展、作品集などを通して、ラディカルかつユーモアに満ちた独自の作風に対する賞賛が高まり、ハッセルブラッド賞(2000年)を受賞するなど、次々と活動の幅を広げていきました。 1998年に初来日。日本では、「荒木経惟との二人展=冬恋=」(シュウゴアーツ/1999年)、「交錯する流れーMoMA現代美術コレクション」(原美術館)などで紹介されています。

RAT HALE GALLERY:http://www.ratholegallery.com
HYSTERIC GLAMOURオフィシャル:http://www.hystericglamour.jp
Bueno! Books:http://www.buenobooks.com

           
Photo Gallery