第12回 ボリス・ミハイロフという謎解き その2
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2015年4月17日

第12回 ボリス・ミハイロフという謎解き その2

第12回 ボリス・ミハイロフという謎解き その2

edit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

「BEACH」より。© Boris Mikhailov

絶妙の“ツボ”をもったユーモアのセンス

今回も前回に引き続き、ボリスさんの話をしたいと思います。

ボリスさんの作品の根底に流れる共通点をひとことで表現するなら「奥の深いユーモアのセンス」でしょうか。言葉数は少ないんだけど、一言ボソッということが笑いのツボにハマってるというか、声に出して笑うわけじゃないんだけどハートが笑うというか、作品からはそういう絶妙のユーモアのセンスを感じます。グロいようでいてカワイさがあるんですよね。

レセプションに来てくれた女性の人たちには、そういうところがちゃんと伝わっていたようでした。レセプションの後、ボリスさんにそのことを伝えると、彼もすごく喜んでくれたんですが、彼がいうには、自分の作品が日本人には理解しやすいことはわかっていたというんですよ。なぜなら日本には昔から俳句のような、いわゆる三段落ちの伝統がある。自分の作品もそれと似たような部分があるから、と。

「BEACH」より。© Boris Mikhailov

展示全体で表現されるインテリの香り

ボリスさんの作品にはどこか制圧された部分に魅力を感じます。あと、一筋縄じゃいかないようなロシアの国民性も感じますね。

僕らだったら簡単にギブアップしちゃうようなところでも、気のもちようで弾き飛ばすというか。展示に関しても、何時間もかけて何度も何度もやり直すんです。そいうのを見てもギャラリーは本と違うというのを改めて感じますね。

まず全体を見て、そこでどう感じるか。どう感じさせるが勝負なんです。今回僕はたまたま最終準備のときにいなかったので、帰って来てすっかり展示されている状態のものを見たんですが、一目見て「おっ、おもしろいな」と思うと同時に、なんてインテリで、なんてモダンなんだろうと感じました。

さっきもいったユーモアのセンスというのはインテリジェンスにつながっています。ネタ自体はけっこうベタですし、ひとつだけ見ても「なにこれ?」というかんじなんですが、それをああいう作品同士のつながりにして、さらにちょっと言葉を添えて、あのカタチにしてしまうあたりがすごい。やっぱり彼は相当なインテリだと思いますよ。

ボリス・ミハイロフ写真展「BEACH」
日程:2007年2月28日(水)~3月25日(日)
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581

ボリス・ミハイロフ Boris Mikhailovは、1938年、旧ソビエト連邦ウクライナの大工業都市ハリコフ生まれ。(現在ベルリン在住)鉄道工社の電機工であった28歳で写真を始めます。その後、当時社会主義体制の抑圧下、タブーとされていたヌードを撮影したことで職を失い、写真家として独立します。エネルギッシュな活動により重要なアーティストとしての評価を築いていきます。旧ソ連体制下、自由な制作活動を規制される中、体制への風刺をこめた作品やきわめて私的な情景を写しとった写真を数々撮影。圧力に屈しない柔軟な精神から生まれた、真実を見つめようとする、激しく、しかし、あたたかいまなざしは、ヨーロッパでまず評価され、それから、世界的に認められるようになります。 90年代に入ると、世界各都市における美術館での個展、作品集などを通して、ラディカルかつユーモアに満ちた独自の作風に対する賞賛が高まり、ハッセルブラッド賞(2000年)を受賞するなど、次々と活動の幅を広げていきました。 1998年に初来日。日本では、「荒木経惟との二人展=冬恋=」(シュウゴアーツ/1999年)、「交錯する流れーMoMA現代美術コレクション」(原美術館)などで紹介されています。

RAT HALE GALLERY:http://www.ratholegallery.com
HYSTERIC GLAMOURオフィシャル:http://www.hystericglamour.jp
Bueno! Books:http://www.buenobooks.com

           
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