第16回 古屋誠一インタビュー(1)
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2015年4月17日

第16回 古屋誠一インタビュー(1)

第16回 古屋誠一写真展『im fluss 流れゆく』インタビュー(その1)

30年以上にわたりヨーロッパを拠点に活動を続ける日本人写真家、古屋誠一氏。
現在ラットホールギャラリーでは8月3日までの日程で、古屋氏の写真展『im fluss 流れゆく』が開催されています。
7月7日には、オープニングに際し来日した古屋氏本人によるトークショーもおこなわれました。
オウプナーズ編集部はその日、トークショー直前に特別に時間をいただき、単独インタビューを決行。
今回から3回にわたり、その際うかがった古屋氏の生の声をお届けいたします。

Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

出会いはボリスさんの送別会

──まずは、今回ラットホールギャラリーで展覧会を開催することになったきっかけを教えていただけませんでしょうか?

第16回 古屋誠一写真展『im fluss 流れゆく』インタビュー(その1)

古屋誠一 今年1月、三島の「ヴァンジ彫刻庭園美術館」での展覧会に合わせ来日していたんですが、そのときたまたま、このラットホールギャラリーで展覧会を開催中だったボリス・ミハイロフさんの送別会があると聞いたんです。
ボリスさんのことは以前からよく知っていましたので送別会に出席したところ、北村さんからオファーを受け、「喜んで」ということで引き受けました。

──作品的には、ヴァンジ彫刻庭園美術館で発表されたものも数多く含まれていますが、テーマは同様なんでしょうか?

大きなテーマとしては、ヴァンジでやった『Aus den Fugen』の延長線であることは間違いありません。
しかし、展示のスタンスが違います。
ヴァンジの場合、あの空間が作家に要求してくる部分が多分にありますので、

空間をどう使うかということを重要視しました。
その点ラットホールは、空間的にはフラットですので、よりテーマ性、物語性を重視した内容になっています。
さらに、私自身のスタンスの変化も現れています。

人生のターニングポイント的展覧会

──ということは、今回の展覧会には、これまでにない古屋誠一があるということですね?

第16回 古屋誠一写真展『im fluss 流れゆく』インタビュー(その1)

『古屋誠一 脱臼した時間』

そうです。
ヴァンジのときはあくまでも、いまは亡き妻のクリスティーネが軸でした。
しかし、今回は彼女のポートレートをぐっと少なくしました。
もちろん私という川の源流には、常にクリスティーネとの関係が流れています。
ですが、ヴァンジでの展覧会を含めこれまでの私は、彼女を私の内側に

閉じ込めたまま発表していました。
それに対し今回は、はじめて彼女を世界に向けて解放しました。

これは私自身にとって画期的なことです。

──なにが古屋さんをそうさせたんですか?

やはり時間でしょうね。彼女を捉えた写真自体はなにも変わりません。
しかし、22年という時間の中で私が変わったんです。
おもしろいもので、自分が変わると日常に対する反応も変わってきますし、刺さってくる写真も変わる。
でも、考えてみれば、それこそが写真の魅力なんじゃないでしょうか。

──そういえば古屋さんの写真は、いつも日常がモチーフになっていますね。

私にとって写真とは「見て、撮らなければならなかった日常」の集積です。
しかし、それを見てなぜ撮らなければならなかったのかという理由をすぐには検証しません。
なにかを感じたから撮るわけですが、たいてい撮った直後には意味がないのです。
だから私は撮った写真をフィルのまま放っておきます。それがある時間を経て呼びかけてくるんです。
ですから私の写真はいつも古い写真ばかり。
でもけっして古くはないんです。現像する私にとって、まさに“いま”意味をもつ写真ですから。

第16回 古屋誠一写真展『im fluss 流れゆく』インタビュー(その1)

古屋誠一写真展『im fluss 流れゆく』
日程:8月3日(金)まで開催中
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581

           
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