飯野賢治さんが生んだ、クリエイティブなトークタイム

飯野さんの人柄をあらわすエピソードがある。この日、more trees nightがはじまったのは19時30分。トークショーがはじまったのは20時だった。それから1時間ほどして芳香ただよわせた料理がつぎつぎ運ばれてきた。

トークショー中のmore trees事務局長 水谷伸吉さんと『Restaurant-I』オーナーシェフ 松嶋啓介さん、そして飯野賢治さんの前には小皿に取り分けられた料理が置かれた。3人とも皿にチラリと目を配る。しかし、トークは大事なポイントにさしかかっているため終わらせることができない……。

左から水谷伸吉さん、飯野賢治さん、松嶋啓介さん

そのとき、マイクを握った飯野さんがおもむろに口を開いた。「ちょっと料理を食べましょう。聞いているひとたちも、はやく食べたいという顔をしているし。森の話をして腹を空かせるというのも、なにかちがう気がしますよね。なによりおいしそうだ」──その一言で場は和み、見るからにおいしそうなラザニアの湯気が消える前に、参加者は舌鼓を打つことができたのである。

飯野さんがmore treesの賛同人として名を連ねるきっかけとなったのは坂本龍一さんとの深い親交からだったという。じつは飯野さん、若かりしころに坂本さんとの対談を経験している。そのさい、ふたりのお気に入りのレストランがぴったり一致したことをきっかけに長い親交がスタートしたという。

「それでも、森のことを考えたり、環境のことを考えるようになったのは、この数年。more treesの賛同人は坂本さんからの依頼だったので断りませんでしたが、僕は自分の知らないことで利益だけを目的に名前だけを貸したりするのは嫌なので、それから勉強しましたね。時代も急に変わってきた」

木とひととの関係を思い知らされました

そんな飯野さんは最近「木」にかんしてある衝撃を受けた。「いま、とある都市計画にたずさわっているのですが、どうしても木を伐らなければならないところがあって、住民の方々に説明に行ったんです。そしたら、いろんな意見が飛び出してきました。そこは裕福な方の多いエリアなので、そういうことに関心がないのかなと思っていたのでおどろきました。木とひととの関係を思い知らされましたね」

絶えず話題を作り、環境に対する深い造詣と独自の考え方を披露し、参加者たちと触れ合った飯野さん。食事をしながらのトークと歓談は、じつに11時過ぎまでつづいた。この日の参加者からは口々に「参加してよかった」という声が聞かれた。

初回の信藤三雄さんにつづき、今回も森をちがった視点で考える場を提供することになったmore trees night。次回の開催はまさにこの記事の公開直前となる9月16日の第3木曜日。場所は『Restaurant-I』、参加定員は30名。誰でも参加できるが、応募多数となった場合は抽選となる。

9月のゲストは、編集者／クリエティブディレクターの後藤繁雄さん。後藤さんは現在、千代田区にできた話題の施設『3331 Arts Chiyoda』を中心にアートと都市をつなぐプラットフォームを作ろうという取り組みを展開しているそう。more treesも森と都市をつなぐプラットフォーム。当日は組織や場所をプラットフォームとして定義づけながら、これまで後藤さんが取り組んだ事例をもとにトークを展開する予定だ。森と都市と美酒と美食が、次回のお楽しみになりそうだ。

more trees night vol.3
日程｜9月16日（木）
オープン｜19:30　スタート｜20:00
会場｜Restaurant-I
東京都渋谷区神宮前1-4-20 パークコート神宮前1F
http://www.restaurant-i.jp/index.html
ゲスト｜後藤 繁雄（編集者/クリエイティブディレクター）
定員｜30名限定
（定員を超えた場合は抽選となります）
会費｜6000円
（会費の一部はmore treesの森づくりに役立てられます）
お申込は下記フォームから
http://bit.ly/moretreesnight

問い合わせ
info@more-trees.org