THEATER|巨匠ピーター・ブルックによる新作舞台『ザ・スーツ』
THEATER|アパルトヘイトにより発禁された短編小説を翻案
巨匠ピーター・ブルックによる新作舞台『ザ・スーツ』の来日公演が決定
現代演劇界の巨匠ピーター・ブルックによる最新作、『ザ・スーツ』の来日公演が決定! 11月6日(水)から11月17日(日)まで、パルコ劇場で上演される。
Text by YANAKA Tomomi
愛人が置き忘れたスーツを「客」としてもてなす!?
20世紀を代表する演出家、ピーター・ブルック。彼のつくりだす舞台は、最小限の舞台装置と俳優の言葉と肉体によって、イマジネーション豊かな劇空間を生み出すことで知られている。日本では1973年の『真夏の夜の夢』を皮切りに公演を重ね、昨年も『魔笛』の来日公演で、演劇ファンに喜びをもたらしたばかりだ。
そして、その興奮覚めやらぬ日本で、新作舞台の公演が決定。南アフリカ出身の小説家、キャン・センバが1950年代に書き上げたものの、アパルトヘイトの制約により発禁処分となってしまった幻の短編。それを翻案した新作であり、これまでに世界10カ国21都市で上演された話題作が、ついに日本でも幕を開ける。
物語の舞台は1950年代の南アフリカ。中流弁護士フィロメンの妻、マチルダが愛人との情事に及んでいる最中、フィロメンがその場に踏み込んだため、愛人に置き忘れられてしまったスーツ。妻を責めつづけるように、夫はそのスーツを「客」としてもてなすよう命じる。食事の席に同席させ、散歩も一緒にさせ、不倫をしたことを片時も忘れないようにそのスーツを扱わせるのだ。「罪」を背負ったマチルダを巡るストーリーが、最小限のキャストとミニマムな小道具のなか、繰り広げられる。
ピーター・ブルックが、「劇場において、そのままの姿で存在しつづけるものは、なにひとつない。使い古されるだけのテーマもあるが、長い時を経て蘇るテーマもあるのだ」と語るように、夫婦、男と女、そして社会における女性の居場所といったテーマが現代に蘇り、舞台上でその姿を変貌させ、いま再び新鮮な感覚をもって誕生する『ザ・スーツ』。“なにもない空間”から、観客の想像力を最大限に引き出すピーター・ブルックによるクリエーション、そして繰り広げられるドラマを存分に味わいたい。