靴に恋した男がつくる美しきシューズコレクション|SERGIO ROSSI
FASHION / WOMEN
2015年3月21日

靴に恋した男がつくる美しきシューズコレクション|SERGIO ROSSI

Sergio Rossi|セルジオ・ロッシ

デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

靴に恋した男がつくり出す、世にも美しいシューズコレクション(1)

2013年にセルジオ・ロッシのコレクション&デザインディレクターに就任したアルジェロ・ルジェリ氏が来日。6歳のころにファッション業界で働く決意をしてから、ラグジュアリーブランドでのシューズデザイナーとなり、順調にキャリアを重ねて来た彼に、靴への思いを存分に語ってもらった。

Photographs by HOKARI Mai
Translation by ASANO Yujin
Interview and Text by IKEAGMI Hiroko(OPENERS)

僕が6歳でファッション業界を目指したわけ

―― あなたは6歳のときにファッションの世界で働こうと決めたそうですが、なぜそう思ったのですか?

僕の祖母は裁縫や刺繍が好きな人だったんだけど、彼女の影響が大きいね。夏休みになると決まって海の近くの家で一緒に過ごしていて、彼女の手仕事を近くで見ながら育ったんだ。

――ファッションの中でも、シューズデザイナーになろうと

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

そう、とにかく僕は靴が大好きなんだ。デザインする時も、朝自分のコーディネートを考える時も、街行く人を見ている時も、ウィンドウーショッピングしている時もいつだって靴に目を奪われしまう。
それに、靴はファッションにおいて欠かせないアイテムになった。靴はどんな色の、どんな素材の一足を選ぶかによって、その日のファッションスタイルが決まる重要なラストピース。だから、シューズデザイナーになれて幸せだね。

――ヴェニスの学校を卒業されてから、順調にステップアップを重ねていますね

ヴェニスの学校では、靴づくりのためのテクニックやマテリアル、構造なんかを徹底的に学んだよ。それから、ジョルジオ アルマーニやトム フォードでシューズデザインを担当してきたんだ。

――その後、2013年にセルジオ・ロッシのコレクション&デザインディレクターに就任されたわけですが、ファッションブランドでの仕事と、セルジオ・ロッシでの仕事に違いはありますか?

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

決定的な違いはセルジオ・ロッシがシューズメゾンであり、靴づくりの全てを自社でおこなっている点だね。ジョルジオ アルマーニやトム フォードではあくまでシューズはコレクションアイテムの一部にすぎなかったけれど、セルジオ・ロッシでは本当にいろいろな角度から靴だけにフォーカスして創り上げていく。

ステッチは美しいのか、見た目は完璧か、デザインの仕様はどうなのか、シルエットは、素材は適切なのかと、セルジオ・ロッシのこだわりはたくさんある。そして、デザイン同様に、履きやすさもとても重要なテーマだよ。

――シューズデザイナーやファッションデザイナーで参考としている人は

アズティン・アライアを尊敬しているよ。彼がほかのデザイナーと根本的に違うところはカッティングパターンにあると思う。女性の丸みを帯びた柔らかいボディを決して締め付けず、つつみ込むようなあのカッティングは靴づくりにも取り入れたいと常々思っているんだ。

ミラノで発表したばかりの秋冬コレクションのなかに、タイツのようなソフトな履き心地のサイハイブーツがあるのだけど、あれはまさにアライアの影響だろうね。

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

Sergio Rossi|セルジオ・ロッシ

デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

靴に恋した男がつくり出す、世にも美しいシューズコレクション(2)

180センチを超える長身のアルジェロ氏は、まるでモデルのようにハンサムなイタリア男だ。彼がデザインするうえで思い浮かべる女性像や、自身のファッションについても伺った。

――毎シーズン、さまざまなテーマを打ち出しますがアイデアソースはどこからくるのですか

古いフィルムから発想を得たこともあるし、スケッチからインスピレーションを受けこともあったりと、毎シーズン決まった方法でテーマを探すわけではないんだ。ただ、意識していることは外に出て深呼吸をすること。そして、自分の目を見開いて、街や人から雰囲気やニュアンスなどを汲み取るように心がけているよ。

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

――テーマが決まってから靴をデザインしていくのですね。特定の女優やセレブリティをイメージしたりしますか

特定の人をアイコンとしてデザインすることはないよ。ただ、かならずイメージはしている。どういった女性かというと、知的で芯の通ったバランスのとれた人とでもいうか。そう、セルジオ・ロッシが似合う女性はいつだって洗練されてなきゃだめなんだ。そして、彼女のプロポーションやコーディネートを活かすための靴はどんなだろうと考える。こうして思い描いたデザインアイデアを基に、スタイルや素材、色や仕様について徹底的にリサーチするんだよ。

――そして、今回のテーマはアンリ・マティスということで

なによりも、彼の使うエネルギッシュな色や明るさが好きだ。この印象的な色をシューズというアイテムに注ぎ込んだら、いったいどんなコーディネートがうまれるだろうということを最初に考えたよ。
それから、難しいラインやシルエットが可能になったのは、セルジオ・ロッシのテクニックがあってこそ。たとえば、このグリーンのグラディエーターサンダルは、グログランのリボンのパイピングや、立体的なストラップなど、本当に苦労した。シューズの外側と内側でまったく異なる表情を見せる独創的なサンダルが完成したのもアトリエのおかげだね。

――コレクションのなかには、あなたが好きな赤のビジューサンダルもありますね

そう、僕が赤が好きだってよく知ってるね。最初につくったシューズも赤のスエードのサンダルだった。でも、僕にとって赤は特別な色。本当に赤に似合うシルエットやデザインだと自分で納得できるシューズにしか、この色は使わないんだ。

――ところで、あなたの今日のファッションも素敵ですね。小さいころからおしゃれだった?

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小さい頃は母が薦める服を着る普通の少年だったけど、あんまりジーンズやスニーカーがはかない子供だったよ。自分でファッションを楽しむようになったのは20代。いろんなものをミックスしてスタイルを完成させるのが好きなんだ。上から下までひとつのブランドで借りてきたようなスタイルじゃつまらない。やっぱり、自分で編集する楽しみがないとね。

もちろんシューズとのコーディネートも忘れちゃだめだけど、着こなすときに重要なポイントは出したい身体のラインと身につけるアイテムとのバランスが大事だと考えているよ。

――では、今季のコレクションとコーディネートするとしたら

すごくいい質問だね。個性的なエネルギッシュなカラーを配したコレクションだから、ウエアの色調をシックな色で統一するのもいいよね。ただ、僕がおすすめしたいのは、勇気をもってカラーをミックスすること。イエローやレッド、オレンジなどの暖色と、サンダルに使われているようなブルーやグリーンをミックスしたらきっと素敵だよ。

SERGIO ROSSI|デザインディレクターのアルジェロ・ルジェリ氏インタビュー

Angelo Ruggeri|アルジェロ・ルジェリ
イタリアのシチリア生まれ。ヴェニスのPolitecnico Calzatiriero(靴工業大学)を優秀な成績で卒業後、シューズデザイナーとしてのキャリアをスタートさせる。ジョルジオ アルマーニやトム フォードでの経験を積んだのち、セルジオ・ロッシのデザインチームに参加。2013年3月より、同ブランドのコレクション&デザインディレクターに就任。

セルジオ・ロッシ カスタマーサービス
Tel 0570-016600

撮影協力
BAXTER SHOWROOM
http://omobito.jp/baxter/

 

           
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