萩原輝美|ヴィクター&ロルフと対談
萩原輝美のファッションデイズ vol.108
オートクチュールはモードの実験場
ヴィクター&ロルフと対談
ヴィクター&ロルフは1998年オートクチュ-ルコレクションでデビューしました。3年目に発表の場をプレタに移しましたが、昨年からまたクチュールを復活。クチュールにカムバックしたヴィクター&ロルフに、そのデザイン活動の心境を聞きました。
Photographs by MATSUNAGA ManabuText by HAGIWARA Terumi
クチュールを愛するヴィクター&ロルフ
現在クチュール、プレタ、メンズと年6回のコレクションを発表しているヴィクター&ロルフ。こうしたカムバックデザイナーも含めて、クチュールコレクションが活気づいている。ショー前日、コーディネイトチェックをしているホテルの現場にデザイナーのふたり、ヴィクター・ホルスティンとロルフ・スノエレンを訪ねました。
――1998年のデビューコレクション、ボンブ(爆弾)は今でもはっきり覚えています。オーガンジーで膨らんだ大きな衿は、しぼむと美しいドレープの服に変身するというコンセプチュアルな服で衝撃的でした。
ロルフ えっ!あのショーを見てくれたんですか?今あのショーを知っている人は僕たちの周りにもあまりいないんだ。うれしいです。
――デビューのステージを、クチュールにした訳は?
ヴィクター オートクチュールはファッションの頂点だからです。頂点から降りて行く方が、逆より楽だからね。
――その後プレタに移りました。
ロルフ クチュールは限られた人との対応です。もっとたくさんの人の反応が知りたくなったんです。
――そして再びクチュールを始めたのは?
ヴィクター クチュールはデザイナーの自由が100パーセントなんです。プレタだと、量産のプロセスや価格に左右されます。だからクチュールでは実験的なこともできる。愛すべき大好きな仕事です。
――再デビューしたときの石庭のコレクションはとてもコンセプチュアルでした。
ロルフ あのドレスはすべて、アートピースとしてギャラリーが買い取ってくれました。明日発表する20体のうちの10点もすでに売約済みです。
レッドカーペット生地で作られたドレス
今シーズンのコレクションテーマは「レッドカーペット」。その作品の前で1点1点、丁ねいに説明してくれました。「クチュール服の定番ステージに新しい服を提案したかったんだ」。ドレス、靴、すべてレッドカーペットの生地で作られています。大きなリボンを結んだだけのシンプルなドレスです。
――テーマや素材はどんなアプローチで発想するのですか?
ロルフ ふたりで話します。話して話して話して…ふたりで決めます。
――意見が合わないこともあるのでは?喧嘩になることは?
ヴィクター 一度も喧嘩などしたことはない。話をすれば、分かり合える。
――10月、久しぶりの来日ですね。
ロルフ 2日だけだけれどすごく楽しみです。
――日本の女性のファッションについてどう思いますか?
ヴィクター 奥ゆかしさがあるところが僕たちの美意識に似ています。僕たちの服はセンシュアル(官能的)な服ではないからね。
――女性の魅力は何ですか?
ロルフ ミステリアス!
インタビューを終えて
コレクション前日のインタビューでさぞ、忙しいのでは?と思いながらフィッティング最中のホテルへ。無理矢理お願いしたコレクション直前のインタビューでしたが、話ぶりは淡々と穏やか。趣味は読書。どこにでもいるちょっとインテリおじさまという風体ですが、コレクションではいつもパワフル。どんでん返しのサプライズあり、マジックあり、時にユーモラス、時にシリアス!2人こそミステリアス!そんな思いを深めた1時間でした。10月には、眼鏡のイベントのために来日予定。日本に来た時には是非行ってみたいという京都。そこでの新しいビジネスプランを温め中とか。期待しています。
ヴィクター・ホルスティン(1969年イスラエル生まれ)
ロルフ・スノエレン(1969年オランダ生まれ)
ふたりはオランダのアーネム芸術アカデミーで知り合い、卒業後デュオ・デザイナーとして活動をはじめる。アムステルダムを拠点に98年からパリでコレクションを発表する。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/