数々の著名NYブランドのパターンを手掛けるoomaru seisakusho 2 大丸隆平氏に聞く
数々の著名NYブランドのパターンを手掛けるoomaru seisakusho 2 大丸隆平氏インタビュー
新しいビジネスを創り出すoomaru seisakusho 2
oomaru seisakusho 2の存在を知ったのは数年前です。自身のブランド「OVERCOAT」のプレス展示会でした。その「OVERCOAT」はジェンダーレス、エイジレス、サイズレス、同じモデルが数型並ぶというコンパクトなものでした。メンズライクなシンプルな生地に、眼からウロコのモードな立体裁断が際立ったコートです。oomaru seisakusho 2はニューヨークにあるパターンメイキングの会社。ニューヨークのラグジュアリーブランドのパターンを一手に請け負っています。ヨーロッパのブランドには必ずクリエーターの横に日本人モデリストがいます。日本人の繊細な手技がどのメゾンでも信頼を得て必要とされているのです。oomaru seisakusho 2は外注で、ニューヨークの多くのメゾンの片腕となっています。ジェイソン ウー、パブリックスクール、アレキサンダーワンなど常にクライアントは80社くらい。ありそうでなかったファッションの技術者集団です。念願叶ってニューヨークのアトリエを訪れ大丸さんにインタビューしました。
Photographs by YAMADA AkiraText by HAGIWARA Terumi
デザインの定規—OVERCOAT
Q:ニューヨークに来たきっかけは?
A:2000年から2007年まで東京でパタンナーをしていました。米国の資産家の奥さんがやっているブランドにスカウトされてニューヨークへ。期待して来ました。
Q:幸運なスタートですね。
A:いえ、来てみたら業績悪化で滞在ビザもとってくれず見放されたんです。片道切符で来ていたし、本当に裸一貫になってしまい途方に暮れました。
Q:帰ることもできなかったのですね。
A:とりあえず、アジア人が共同生活するアパートに入り仕事を探したんです。その時、ルームメイトの中国人に頼まれてパターンの仕事を手伝いました。
Q:技術のおかげですね。
A:はい、立体裁断は言葉が喋れなくてもできますから。でも単位がインチなのでピッチが大きく、なれるまでは大変でした。それから3年、一人でパターンの仕事をし続けました。これは東京での経験のおかげだと思っています。これからはスタッフを育てることが大切だと思い、日本人の技術者ばかりの集団「oomaru seisakusho 2」を作ったんです。
Q:今、スタッフは何人ですか?
A:15人、全員日本人です。
Q:oomaru seisakusho 2の名前の由来は?
A:僕の父親が日本で(ファッションとは関係ない)工場をやっていてその2です。最近、大丸製作所3ができました。
Q:それは東京?
A:はい、oomaru seisakusho 2の東京アトリエです。ニューヨークのスタッフが「東京に帰るけれど仕事は続けたい」と望んで作りました。クライアントは全てニューヨークブランド。こちらで経験しているスタッフだし、インターネットもあるので作業は問題ありません。
Q:人を育て大切にするために会社まで作っちゃったんですね。技術も精神も日本での経験から得たもの。「OVERCOAT」を作り始めたのは?
A:デザインの定規を作りたかったんです。体型も性別も違う人が同じコートを着て、着こなせるバランスです。実際、僕の奥さん小さいんですけれど僕と同じものを着てるんですよ。
Q:次の目標は?
A:新しいビジネスを作り出します。物つくりの人もPRだと思っています。卸しの商売だけではなく、イーコマースか直営店を持つことかわからないけれど。コートのバイオーダーシステムも考えたいです。
インタビューを終えて
東京の文化服装学院に通い、その後も技を磨き、持ち前のビジネスセンスで会社設立。ニューヨークでパターンの仕事をはじめた頃は、チャイナタウンの小さな水着屋さんの裏部屋を借りていたそう。トム・ブラウンがそこに来て仕事を依頼していたそうです。今のオフィスもチャイナタウンですが、ぐっと広いスペースです。
大丸隆平|OOMARU Ryuhei
oomaru seisakusho 2/大丸製作所3 代表取締役
福岡県出身。日本のメゾンブランドにてキャリアをスタートさせ2006年に渡米。
2008年にoomaru seisakusho 2 incを設立し、多くのクリエイターに企画デザイン、パターン製作、サンプル縫製を提供する。
2012年 株式会社 大丸製作所3を東京に設立。
2014年 第2回CFDA FASHION MANUFACTURING INITIATIVE 受賞。
2015年 33回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞 受賞。
WWW.OVERCOATNYC.COM / WWW.OOMARUSEISAKUSHO2.COM
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/