萩原輝美|「トーマス ワイルド」デザイナー来日インタビュー
連載|萩原輝美のファッション・デイズ vol.46
「トーマス ワイルド」デザイナー来日インタビュー!
ロックやダークネスをベースに、ラグジュアリーでフェミニンなコレクションを展開している、ロサンゼルスを拠点とするブランド トーマス ワイルド。今回来日したデザイナー ポーラ・トーマスに、ファッションディレクターの萩原輝美さんがインタビューをした。
Interview&Text by HAGIWARA Terumi
相反するものを創作に落とし込む、パワフルなクリエイション
トーマス ワイルドの服と出合ったのは4年前。コレクションをしていないLAブランドは新鮮でした。フリルたっぷりのシフォンドレスにスカルのスタッズが付いたエンジニア・ブーツを合わせる。これがトーマス ワイルドスタイルです。エッジを利かせながらも女っぽい。モデルをしていたポーラ・ワイルドさんがブランド10シーズンを記念した写真集を発表するため、デザイナーとしては初来日。ウエルカムディナーで、ポーラさんにインタビューしました。
――ショー形式のコレクション発表はされていませんね。興味ありますか?
コレクションでトレンドの流れをつくることは、わかり易く必要です。でも私はコレクションに参加することでトレンドに流されてしまうことを避けたいのです。
――創作をするうえで一番意識していることはなんですか?
グロテスクなテーマ、たとえば「死」とか「悪」とかをフェミニンに落とし込む。相反するものを表現したいんです。
――イメージする女性は?
もちろん自分! 私が着たいものをつくってゆきたい。服のもつ力、服が着るひとを変えられるパワーを伝えたいのです。自分の意志で服を選んでいる女性は、世界中の30パーセントしかいません。服を楽しめる女性を増やしたいですね。
――ロンドンからL.A.に移った訳は?
22歳のときにロンドンからロサンゼルスに移りましたが、はじめの15、6年くらいは好きになれませんでした。でもデザイナーを目指し、実際に夢が叶ったのはL.A.です。ロンドンやニューヨークだったら競争が激しくて成功しなかったと思う。
――世界中で人気の高いファスト・ファッションについてどう思いますか?
危険ですね。なんのアイデアもなく、ただお金儲けしているだけですから。
――10年後の目標は?
今から10年は自分の仕事を充実させて、そのあとはいろいろなカタチでお返しができたら良いと思っています。人は欲張りだから、ときどき試練が必要。3年前、病気をしてつくづく感じました。
インタビューを終えて……パンク魂はロンドンっ子のDNA。おおらかに笑う姿はロサンゼルスの生活で培われたもの。人生の起伏すべてを自分の魅力に変えてしまう何ともパワフルなデザイナーです。
Paula Thomas|ポーラ・トーマス
『VOGUE』や『i-D』などのファッション誌でトップモデルとして活躍してきた英国人女性。2006年にブランド「THOMAS WYLDE」を設立。ブランド名は祖父であるロバート・トーマスと、曽祖母であるキャサリン・ワイルドにちなんでいる。
『Ten Times Rosie』
ハードカバー(240P)
発行|Rankin Photography
定価|4872円
映画『トランスフォーマー』でヒロイン役を演じたモデルのロジー・ハンティングストン・ホワイトレイ(Rosie Huntington-Whiteley)が「THOMAS WYLDE」の10シーズン分のアイコンコレクションを着用したもので、イギリス人フォトグラファーのRankin(ランキン)が撮影した。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップ「デザインワークス」のレディスのディレクションも担当。オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/