リター|アンスナムから生まれた新プロジェクト!
LYTHA|リター
アンスナムから生まれた新プロジェクト!
利他主義にもとづいたリター 本格始動!
日本が誇る工場の高い技術力や職人技を存分に用いた服づくりが、高い評価を得ている日本のブランド、アンスナム。だが代表兼デザイナー中野 靖氏は、そんな技術が衰退し存亡の危機にある現状を憂いている。職人たちは高齢化し、技術を継ぐ者も少ない。なんとかしなければ、消えゆく技術もある。そこで中野氏が考え出したのが、LYTHA(リター)というブランドでありプロジェクトでもある。この秋、そのリターが本格的に始動。日本の服づくりの根幹をも揺るがす、利他主義をもたらすクリエイションを目指すリターとはいかに?
文=細村剛太郎写真=中野 靖
世界に誇る日本繊維産業の職人技術を駆使した服を世界に!
ここに紹介するリターは、アンスナムから生まれた新ブランドでありプロジェクトである。リターを語る前に、まずアンスナムというブランドについて触れておかねばならないだろう。
2005年、デザイナーの中野 靖氏がジャケット、パンツ、シャツ、コートの4型のみのコレクションを発表したことからスタート。中野氏はアンスナムを立ち上げ、さまざまな経験を積むなかで、日本国内のあらゆる工場とのつながりを構築してきた。アンスナムの服を手に取れば、その巧緻なつくりに驚愕するだろう。表に見えないマニアックさやストイックさ、ここまでやるかという徹底的なこだわり。正直、こんな服は見たことがない、と言っても過言ではない。中野氏は自分の服を体現するために、日本全国をまわり、日本の卓越した技術を探し求めたのである。
「日本の職人さんたちは本当にすばらしい。彼らと仕事をとおし時間を共有することで信頼関係を築きながら、アンスナムをつくりあげてきました。ときには一緒にお酒を飲んで関係性を高めました」(中野氏)。
職人との信頼関係。これが一番の収穫でもあり、アンスナムの欠かせない強みとなっている。ただ日本の伝統技をおし進めるためにはさらなる開発をし、開発をおし進めるためには伝統を尊重しなければならないことも理解している。言い換えれば、伝統技術とモダニズムのバランスである。それはアンスナムの服を製作するポリシーである、“クオリティーのうえに成り立つクリエイション”という言葉にあらわれている。素材、パターン、テーラリング技術、縫製など、すべてにおいてハイクオリティな技術をもつ職人がたずさわり、そこに中野氏の感性がくわわりアンスナムの製品がつくり出されるのだ。あえてシーズンテーマは設定しない。テーマは服づくりに枠を科し、テーマのための服づくりとなるからだ。服をつくることそのものがテーマともいえる、真摯な姿勢。しかし、中野氏は危機感にさいなまれていた。世界に誇れる稀有な技術をもっているにもかかわらず、日本の繊維産業が衰退していく現状を……。それはつきつめればアンスナムの、そして中野氏自身の存亡の危機でもある。
日本の技術の火を消すな! リターという服づくりプラットフォームプロジェクト
アンスナム立ち上げから早5年。そしてその文脈のなかで、リターが立ち上がるのだ。
「本気で工場をなんとかしなければと思いました。どうにかして貴重な技術を顧客のもとへとどけられないかと立ち上げたのがリターです」(中野氏)。職人との関係性をより強固なものへ。そして産業にあらたな展望を生み出し、これまでに実現し得なかった流れをつくり出すために、“セカンドライン”とは異なる位置づけであたらしいプロジェクトを立ち上げたのである。リターの本意は仏教に伝わる「利他」、ギリシャ語で「rytha=流れる」。
その仕組みはこうだ。商社を通さず、信頼関係にある工場とじか取引。紡績、縫製、加工、付属品など製造サイドのファクトリーにかんする詳細情報をブランドタグにすべて表明し、服づくりの中枢をあらわにする。それゆえ商品には多くのタグがつくことになる。それに対し工場はリターに対しサンプルを無償で提供する。こうして先行投資のリスクをさげ、それが価格にも反映される。つまり製作から消費までのすべてのレベルにおいて利他主義をもたらすことが、クリエイションの根幹となっているのだ。スタートしたのは2009年。あらゆる試行錯誤を経て、今秋の2010-11A/Wコレクションにて、はじめて本格的フルアイテムの発表となったのである。
アンスナムがディナーとすれば、リターはランチとしての導入口と位置づけている。セットアップでアンダー10万円程度と、価格もこなれていて費用対効果も高い。もちろん、アンスナムゆずりの質と今日性を湛えたクリエイションとなっている。取り扱いはエディション(表参道店、大阪店)、マイノリティレッブ(福岡、平尾本店、東京店)など鋭いセレクトアイに定評のあるショップをはじめ、全国セレクトショップを中心に展開を広げている。
「このコンセプトに協賛いただける工場を探しています。日本のすばらしい技術をなんとか残したいのです。ぜひ直接私にご連絡ください」(中野氏)。
そう、中野氏=リターがおこなっているのは、服づくりだけではない。世界に誇る日本の技術をなんとか残したいという情熱をもって、まさに利他な環境をつくろうとしているのだ。リターがみずから単なるブランドではなく、プロジェクトと呼んでいるゆえんである。
情熱は世界を変える。崇高なスピリットを湛える、クールな服をぜひまとってほしい。
中野 靖|NANANO Yasushi
アンスナム/リター デザイナー
2000年 エスモードジャポン メンズコース卒業。その後、さまざまな文化様式や伝統服飾に触れる目的で、のべ30カ国を巡る。帰国後、アパレルメーカーにてアシスタント、生産をつとめる。2005年に独立し、ANSNAM(アンスナム)を立ち上げる。翌年よりミラノ、パリでコレクションを発表。2009年より、新ブランドLYTHA(リター)を立ち上げる。自身でトロリーに自作の服を詰め、世界の有名ショップに売り込みにいったという経歴もある。
アンスナム/リター
Tel.03-3843-1517
http://www.ansnam.com/
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*取材に関する問合せ プレス担当:森廣 加奈子 (もりひろかなこ)
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