CIVILIZED|着やすさにこだわった、機能的なモードスタイルの提案
CIVILIZED|シヴィライズド
機能的なデザインをモードに表現
2011-12秋冬コレクション“MOBILITY”(1)
今季で3シーズン目を迎えるCIVILIZED(シヴィライズド)。デザイナー 奥川諭志氏によってスタートしたブランドは、マテリアル、カッティング、機能性をバランスよく融合させた、 ミニマルなスタイルを提案。“着心地”にとことんこだわったコレクションは、デビュー間もないにもかかわらず、急速に注目度を高めている。そんなシヴィライズドから2011-12秋冬コレクションが到着。今シーズンよりrumorsでの展開がスタートする。ここでアイテムの魅力や、服づくりへのこだわりについて、デザイナー奥川諭志氏に聞いた。
Text by OPENERSPhoto by TAKADA Midzuho
シャープなデザインをベースに、必要最低限の機能をプラス
──ブランドコンセプトとは?
簡単に言ってしまうと、毎日着れるようなもの。僕はとくにスーツを着て仕事をしているわけではないので、カジュアルウェアは毎日袖をとおすもの。たとえば冬だったらおなじブルゾンを1週間着ることもあるかもしれない。なぜおなじブルゾンかというと、単純にその1枚が使いやすいからなんですよね。
そういったアイテムには機能的な部分が必ず必要となってくると思うんです。かといってアウトドアとか、ワークというイメージを押し出してしまうと、普段着には見えなくなってしまう。あくまでも普段着として着れることがポイントなんです。
シンプルでシャープなデザインをベースに、必要最低限の機能、“あったらいいな”って機能をプラスする。そこで見た目が変わってしまっては意味がないので、パターンやカッティングに工夫を凝らし、スタイルをキープしています。天候や気温に左右されることなく、自然と手にとって着るような、そんな服を提案していきたいと思います。
機能的でありながらミニマルなシルエットをかなえるパターンの妙
──たとえばどういった部分に機能的なデザインがほどこされているのでしょう?
素材やカッティングの部分で言うと、たとえば今季のポリエステルのジャージですが、吸水速乾の生地を使用していて、これってスポーツメーカーが使うような素材なんです。見た目だけの部分ではなく、濡れてもすぐ乾くというのはやはり便利なわけで。それをスポーツメーカーがやるようなジャージではなく、ファッションアイテムとしてのデザインに仕上げています。
“いままで誰も知らなかったあたらしい技術”という部分ばかりではなく、みんな当たり前に知っていることを、ただ組み合わせるだけであたらしいものになったりする。
たとえばこの袖の切り替えですが、ハンガーにかけてあると変なふうに曲がっていて、違和感を感じるかもしれませんが、手首は内側、外側に曲げることが断然多いので、その向きにマチをつけているだけなんです。手を入れるとマチの部分にシワが寄り、ディテールとしてデザイン的なおもしろさをもたらしている。手首を曲げる時は曲げやすく、まっすぐにしているときはアクセントになる。こうした“見た目だけ”ではない、意味のあるデザインをプラスしたいんです。
CIVILIZED|シヴィライズド
機能的なデザインをモードに表現
2011-12秋冬コレクション“MOBILITY”(2)
シヴィライズドのこだわりがつまった“カバードベスト”シリーズ
──“カバードベスト”はデビューコレクションから継続しているシリーズとか。
これが1番、シヴィライズドが提案するスタイルがわかりやすいカタチでつまっているのかな、と思います。
ベストって、薄手のニットとか、ロンTとか、“これだけじゃちょっと寒いかな?”ってときに着ていくと思うんですけど、夜になって気温がもっと下がると、ベストだけじゃ寒かった……なんてことになったりするんですよね(笑)。
このカバードベスト、じつは後身ごろの内側に長袖が収納されているんです。後身ごろの内側にファスナーがついていて、開けると中から長袖が出てきます。ベストにくっついているのではずれはしないのですが、これをそのままベストの上に着てもらったり、下に着てもらったりして、季節の変わり目など、“ベストだけじゃ寒かった……”なんてときにすごく便利なんです。
最初に作ったときはベストの下に長袖をとおすスタイルしかできなかったんですけど、それだと一度ベストを脱いで、長袖を着て、その上にまたベストを着る、と、面倒だった。今回は着たままファスナーを開け、下にバサっと長袖部分を出し、そのまま背負うようにして着れば普通のブルゾンのようになるよう構造を変え、余計な動作を省きました。また、いままではベストと袖をおなじ素材でやっていたんですけど、今回はコンビにすることでベストの下に袖をとおすとスタジャンのように、上に着るとシャープなスポーツテイストのブルゾンのようにと、表情が変わるよう遊んでみました。
保温性も着方で三段階に調節できます。ベストの状態が保温性としては1番弱い状態。2番目がベストの下に着た状態、3番目がこれを上に着る状態。ベストの綿で身体が温まり、それを上から閉じ込めるように覆うので、一番体温が逃げない状態になります。この袖のパーツは水をはじく素材を使っているので、雨が降ったら袖のパーツを上に着てもらえればウールをぬらさずにすみます。そのときの天気や気温によって使い分けられるアイテムになっています。
CIVILIZED|シヴィライズド
機能的なデザインをモードに表現
2011-12秋冬コレクション“MOBILITY”(3)
──3シーズン目となる今季のテーマは?
“MOBILITY=可動性”をテーマにした、文字どおり動きやすさにフォーカスしたコレクションです。メンズの服ってとくにそうなんですけど、しっかりとした固い素材が好まれるんです。理由は打ち込みがよく、使い込むほどに味が出るなど、単純に魅力的なんです。シヴィライズドでもしっかりとした固いナイロンを使ったブルゾンなどを展開していますが、やはり全然伸びない。
そういった生地を使ったアイテムはやはり動きづらく、我慢して着るというのもめずらしいことではないのですが、やっぱり疲れちゃいますよね。どうせなら動きやすく作りたい、固い素材を使ってもストレスのない着心地にしていくことがまず頭に浮かびました。そこから“MOBILITY”をキーワードに、コレクションを展開していきました。
ブランドによりますが、そういった部分の不自由さはサイズで調整することが多いんです。伸びないのであれば遊びの分を寸法で広げる。でもシヴィライズドが求めるのはあくまで“シャープさ”なので、パターンを工夫して動きやすく作っています。
シンプルなTシャツを見てもらえればわかりやすいと思うのですが、通常わきの下の前身ごろと後身ごろの合わせの部分はまっすぐなんです。でもそこに可動分を足すことで、動きやすくなる。Tシャツやジャージのような、生地がもともと伸びるものでは感じずらいかもしれませんが、固い素材のものや、革製品、ナイロン系など、そんなに厚くなくても伸びないものって、腕を上げようとすると二の腕のところがひっかかっちゃうんですけど、こうすることでスムーズに上がるようになります。
また、肩のラインに対して袖が下向きについているのは、手を下した状態だときれいなんです。Tシャツって床に置くと本当に“T”の字になっているじゃないですか。でもああいった袖の付け方だと、着たときに袖が浮くから、シルエットが広がってしまう。デザイン的な部分をイメージしながら、肩の傾斜や袖山、トータルでバランスをとって、シャープさを保ちつつ、かつ腕が楽に上がるように工夫しています。
──アウターはどんなアイテムが?
“カバードベスト”をはじめ、今季は固いナイロンのブルゾンや、水をはじいて中の湿気は外に出す、という機能素材“スリーレイヤー”を使ったジャケット、それからシヴィライズドらしいシャープなサイズ感で表現したベーシックなM65など、すべて先ほどお話ししたような動きやすさを考えたデザインがほどこされているので、着てもらえればわかってもらえると思います!
その服には意味がある、そんな服を作っていけたら
──こうした機能的なアイテムを作ろうと思ったきっかけとは?
洋服好きな方ならたぶんみんなそうだと思いますが、僕も洋服が好きなのでいろいろなブランドのものを買うんですけど、気に入ってて手放せはしないんだけど……というものがどんどんたまっていくんです(笑)。でも実際に着るのって2、3着だったりする。雨の日はこれ、風の強い日は風をとおさないこれ、といった、“なんとなく”の感覚ってあるじゃないですか。そういうことに気づいてはいたんですけど、やっぱりそうだよなって。
以前の勤め先がファッションブランドの直営店だったので、そこの服を着ることがほとんどで、休みの日にしかほかのブランドの服を着れなかった。でも辞めてからは着る服に制限がなくなり、自由にどこのブランドのものでも着れたはずなのに、気づくと自分がいたブランドの服を着ていたんです。それって、必要なものがその服にあるってことなんですよね。冬は寒いからダウン、夏は暑いからTシャツ、雨が降ったら水をはじくもののほうがいい、そんな当たり前のことに気づかされた。この服には意味がある、そんな服を作っていけたらなと思っています。
──ありがとうございました。
CIVILIZED
http://www.civilized.jp/