トッド・スナイダー 独占インタビュー|Todd Snyder
Todd Snyder|トッド・スナイダー
待望の旗艦店が東京・神宮前にオープン!
「現代のスマートな紳士のために」
ポロ ラルフローレンのデザイナー、ギャップのディレクター、J.クルーのシニア・バイスプレジデントなど、メンズファッションにおける要職を歴任。J.クルー在籍時には「THE LIQUOR STORE(ザ・リカーストア)」というエポックメイキングなコンセプトショップを成功に導いた、トッド・スナイダー。2011年秋冬にスタートしたシグネチャーコレクションは、バーグドルフ・グッドマン、ニーマン・マーカス、ロン・ハーマンなど全米屈指の名ショップが買い付け、デビュー時から非常に高い評価を得て話題を呼んだ。ニューヨークから発信され、今世界で最も注目を集めるブランドが、トッド スナイダーというわけだ。来る3月15日(土)、記念すべき第1号店が東京・神宮前にオープン。その準備のために来日した、トッド本人に話を聞いた。
Photographs by JAMANDFIXText by america
“モダンジェントルマン”の流儀
「今は……そう、ずっと夢見てきたことの実現を前にして、とてもエキサイティングな気分ですね。たとえば『トッド・スナイダーって誰?』と尋ねられた時、ショップがその答えを代弁してくれるような――私のライフスタイルすべてを詰め込んだショップです。現代の紳士に必要な物がすべて揃う“TOWN HOUSE(集合住宅)”なんです。同時に、誰にでも開かれた、オープンなクラブでもある。それがこのショップのコンセプトです。
そこに集う人々のイメージをひと言でいうなら、“モダンジェントルマン”でしょうか。東京、ロンドン、そしてニューヨークというファッションの三大都市を巡る旅を通して得たフィーリング、それぞれの都市に暮らす人々のカルチャー、そしてスタイルのミックスアップから浮かび上がったのは……クラシックもコンテンポラリーも分け隔てなく巧みに融合し、自らのものとして取り入れる、スマートな遊びに満ちた現代の紳士たちなのです」
米アイオワ州に生まれ、そこで少年期を過ごしたというトッド・スナイダー。農夫を生業とし、日曜日には正装で教会へと出掛けていった彼の祖父の身だしなみや生き方が、彼の美意識の根幹となっているようだ。
「Tシャツにショーツ、泥だらけのブーツでハードに働きながらも、時には仕立てのいいジャケットに身を包み、磨き上げたドレスシューズを履く。男らしさと謙虚さを併せ持つことが、祖父の時代からの、ジェントルマンの必須条件でした。それに少しのお酒もね(笑)。スーツにスニーカーを合わせるといった、現代ならではの手法でドレスアップを楽しむ。そして、食事もなおざりにしない。それが“モダンジェントルマン”の流儀です」
ニューヨークをベースに活躍しながら、自身の名を冠した最初のショップを、東京にオープンすることを選んだトッド・スナイダー。この意外な決断には、いかにも彼らしい、明確な理由がある。
「私は日本の文化がとても好きです。食事も、桜も、人々も、寺や神社も、すべて素晴らしい。すでに30回以上も訪れていますが、来るたびに新たな発見と驚きがあり、クリエーションのインスピレーション源となるものに出合えるのです。特に、とてつもなく古い歴史や伝統に惹かれます。建国してからの歴史が短い我々アメリカ人にとっては、永遠の憧れですね(笑)。
日本人と日本の文化は、歴史や伝統を守りつつ、進取の精神も持ち合わせ、さまざまなスタイルのファッションを楽しんでいるように思います。クラシックやヴィンテージに、コンテンポラリーな要素をミックスした“モダンジェントルマン”のスタイルを具現するショーケースとして、日本、そして東京以上の環境は、世界中どこを探してもないでしょう。トッド スナイダーの第1号店は東京にこそふさわしく、今回の決定は自然で、理に適ったことだったのです」
ミックスアップすること
東京・神宮前にオープンする店の名は、「トッド スナイダー・タウンハウス」。地下1階から2階まで、計3フロアで構成されるショップには、フロアごとに異なる”ストーリー”が設けられている。その内容をつぶさに見れば、「トッド・スナイダーとは誰か?」という問いの答えが、手に取るようにわかるはずだ。
「地下1階は、『CITY GYM』と名付けられたスポーツのフロアです。ニューヨークにある同名のポップアップショップ(2014年3月末まで)とリンクした内容で、懐かしくも新しい、さまざまなスポーツアイテムが手に入ります。友人のネッド・モンローがディレクターを務めているチャンピオンは、単に自分が好きというだけではなく、とても重要なブランド。ネッドと協力し作り上げたチャンピオンとのコラボレーションラインを中心に、ニューバランスやPFフライヤーズのスニーカー、バスケットボールやベースボール用のバッグ、そしてオフィスや自宅に置いて楽しむグッズや装飾品などを取り揃えています。
1階は、トッド スナイダーのシグネチャーコレクションが多くを占めています。メインのコレクションはもちろん重要ですが(笑)、コスメティックアイテムや、ヴィンテージの腕時計、書籍や写真集、ポスタルコのステーショナリーやレザーグッズなど、人間“トッド・スナイダー”に欠かすことのできないライフスタイルアイテムが充実しています。また日本初となるモスコット(アイウェア)のショップ・イン・ショップにも注目してほしいですね。
そして2階はよりオーセンティックなイメージです。サウスウィックとのコラボレーションによるテーラードウェアや、英国ベイツのハットに加え、オールデン、トリッカーズ、クロケット&ジョーンズなどといった、レザーシューズの名品が豊富に揃います。特にオールデンは、秘蔵のデッドストック・コレクションから厳選された1点モノまで取り揃え、個人的には世界一のシューストアだと自負しているくらいです」
スポーツ、テーラード、ライフスタイルなど、さまざまな要素が渾然一体となり、独自のムードを醸し出すであろうこのショップ。しかしブランドの世界観を表現するモノは、決して商品だけではないという。
「例えば1階の内装はミッドセンチュリー・モダンを強く意識していますが、地下1階はインダストリアルなイメージに仕上げています。そして2階はミッドセンチュリーとコンテンポラリーのミックス。これは、私のデザイン哲学を反映したものなのです。
私にとって建築は、ファッションととても近しい存在。バウハウスも、インダストリアルスタイルもともに好きで、両者を融合し共存させることこそ、最も自分らしいことなのです。同様にファッションも、ヴィンテージやクラシック、スポーツ、カジュアル、ラグジュアリー、テーラードなど、異なる要素をミックスしてこそ、ユニークなスタイルができあがると考えています。
2階にはウイスキーバーの『OLD TOWNE BAR』を設け、リラックスできるスペースを確保すると同時に、飲食もライフスタイルの重要な一面であることを提示しています。さまざまなスタイルや要素のミックスアップこそ、このショップの真髄であり、トッド スナイダーらしさなのではないでしょうか」
渋谷・明治通り沿いのタウンハウス。決して大きくはないけれど、東京の新たな名店となることは間違いなさそうだ。
「元々小さなお店にしようと思い、いろんな場所を探し続けていたんです。より多くの人に知ってもらうために、人気のある大型店の隣が理想的だと思っていました。そんなある日、明治通り沿いのポール・スミスのショップの隣に、空き物件が出るということを知ったんです。まさに文字通り飛び込んでいって、しつこく交渉しましたね(笑)。理想の場所で、思い描いていたとおりの、世界で唯一のショップがオープンできる。まさに、夢のような気分です。だってポール・スミスは、私のヒーローのひとりですからね」
トッド スナイダー・タウンハウス
東京都渋谷区神宮前6-18-14(B1~2F)
Tel. 03-6418-6076(ショップ)
Tel. 03-3409-9070(カフェ、バー)
営業時間11:00~20:00 不定休
カフェ「パドラーズ コーヒー」11:00~19:00
バー「オールド タウン バー」18:00~23:00(水~金曜のみ営業)
3月15日(土)オープン
アングローバル
Tel. 03-5467-7874