NIKE RUNNING|ナイキがランニング革命を起こす!
NIKE RUNNING|ナイキランニング
米オレゴン州のナイキ本社直撃取材
革命を起こすランニングシューズ(1)
米オレゴン州ビーバートン──ご存知のとおり、ナイキの創業地であり、本社の所在地である。去る7月16日(現地時間)、ここでランニングにおける新たなプロダクトが発表された。ナイキのデザイン理念“NATURE AMPLIFIED”を具現する2つのランニングシューズ「ナイキ フリー フライニット+」「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」と、2つのアパレル「ナイキ エアロロフト 800フィルダウン ベスト」「DRI-FITニット」である。
Photographs by JAMANDFIXText by KASE Tomoshige(OPENERS)
世界中のプレスが集結
日本から飛行機で9時間、朝8時のポートランド国際空港は摂氏22度、湿度35%と実に快適だ。目指すはポートランド近郊の街、ビーバートンにあるナイキ本社である。「“NATURE AMPLIFIED(ネイチャー・アンプリファイド)”と呼ばれるデザイン理念に基づいた、新しいランニングテクノロジー」の取材が目的だ。もう少し簡単に言えば、ランニングシューズの新製品発表会にやってきたのである。
米太平洋岸北西部で、シアトル、バンクーバーに続いて人口の多いポートランドは、基本的には都会だ。しかし2時間も車を走らせれば、「オレゴン富士」とも呼ばれる、夏でもスキーが可能なフッド山(3429m)にたどり着く。その山裾には南北に「パシフィック・クレスト・トレイル」、東西に「オレゴン・トレイル」が伸び、ハイキングのメッカとなっている。
こうしたアウトドア・カルチャーを背景にしたDIY(Do it yourself)文化の発信地──と一般的に言われているポートランドであるが、ともかくも、自然と人間が良いバランスで共存している街であることは間違いない。
このポートランドから西へ12キロ、車で30分の距離にあるのが、ナイキが本社を構える街、ビーバートンだ。1968年の設立以来、ナイキのプロダクトはこの地で開発され続けている。2013年7月16日、ここナイキ本社に、世界中の新聞、雑誌、ウェブ媒体が集結した。
タイガー・ウッズ・センターの中の広大な(と表現したい)プレゼンテーション・ルームに、プレスが続々到着する。とにかくディスプレイも巨大。これから発表されるプロダクトに注ぐナイキの情熱の強さが、そのまま表されているようだ。
プレゼンテーションがスタート。ナイキCEOのマーク・パーカーが語り始める。「イノベーション(革新)は、ただ生み出されるだけでは意味がありません。目的を持ったデザインの、より良いモノ作りのためにあるのです。ランニングはナイキにとって最も重要なカテゴリーで、会社を前進させる原動力となるような、新しいイノベーションが生まれるカテゴリーなのです」
ナイキの出自は、ランニングシューズである。オレゴン大学の陸上部コーチだったビル・バウワーマンと、その学生だったフィル・ナイトによって設立された、ブルーリボンスポーツ社が前身。以来、ワッフルソールやエアシステム、近年ではナイキ フリー(素足に近い履き心地を実現する柔軟なソール)など、画期的、革新的機能を搭載したモデルを発表し続け、文字通りランニングシューズにおけるイノベーションを発信してきた来歴がある。
ディスプレイには、ナイキのこれまでの歩みを象徴する画像が映写され、プレゼンテーションが続けられた。そして、今回のプロダクトの根底を支えるデザイン理念、“NATURE AMPLIFIED(ネイチャー・アンプリファイド)”の説明が行われた。
「“ネイチャー・アンプリファイド”とは、動いている身体のためのデザインであり、人間の身体と一体となって機能するためのプロダクトでもあります」と、ブランドプレジデントのトレバー・エドワーズは言う。「今日発表するフットウェアとアパレルは、あらゆるレベルのアスリートやランナーの意見を反映し、ナイキスポーツ研究所の研究結果を組み合わせたものです。まさにデータを駆使しながら、身体に主眼を置いたイノベーションなのです」
そのプロダクトとは、ランニングシューズ「ナイキ フリー フライニット+」と「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」、そして2つのアパレル「ナイキ エアロロフト 800フィルダウン ベスト」と「DRI-FITニット」である。我々は、製品ごとのプレゼンテーションスペースへ誘導されていく。いよいよ新製品のお目見えというわけだ。
ナイキお客様相談室
0120-500-719
www.nike.com
www.nikerunning.com
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米オレゴン州のナイキ本社直撃取材
革命を起こすランニングシューズ(2)
Photographs by JAMANDFIXText by KASE Tomoshige(OPENERS)
足の感覚、身体の感覚
「まるでソックスじゃないか──!」。一目見て驚き、また触ってみて驚いた。2004年に発表された素足のような履き心地実現するソールシステム「ナイキ フリー」。そして昨年発表された軽さと優れたフィット性を備えるアッパー「ナイキ フライニット」。その2つの機能が融合したランニングシューズが、そこにあった。
その名は「ナイキ フリー フライニット+」。もう見た目でわかる。限りなく素足に近い感覚が味わえるランニングシューズであることは、間違いないだろう。
「サポート性のある靴下のようなアッパーに、足と一緒に動くアウトソールとミッドソールを組み合わせた『ナイキ フリー フライニット+』。これは、身体の自然な機能を生かすという思想を、究極的に表現したプロダクトだと思います」と、ナイキランニングのクリエイティブディレクター、ショーン・マクドゥエルは言う。
そして足にぴったりフィットさせることで、ソールが足に密着し、推進力を高めてくれる、とのことである。こうした機能ももちろん斬新だが、アッパーの、まるで等高線のようなデザインもまた極めて個性的だ。
「カラーを担当しているデザインチームが優秀なんです。派手な色も、中間色も実にうまく扱ってくれる。とはいえ、この模様も機能を表しています。簡単に言えば、色が違う部分は編み目の強さが異なるのです」
例えば甲の部分は屈曲しやすいように伸縮性とゆとりを持たせ、周辺部の編み目をきつくすることで、前足部と踵を安定に導く。このアッパーデザインこそ、快適さとフィット性を両立する機能の表出なのである。
続いてはアパレルの新製品だ。これも一見して“イノベーション”を感じ取ることができるダウンベストといえよう。「ナイキ エアロロフト 800フィル ダウンベスト」。革新的な気孔を備える――つまり、穴の開いたダウンべストである。
寒い時期のランナーの体温を維持するために開発されたこのダウンベスト。温かく、しかし温かすぎないような状態を保つためにどうするか、その回答が通気孔なのである。身体が動くことで、ダウンパックの継ぎ目に開けた穴から熱が抜けるというわけだ。もちろん800フィルパワーのダウンの保温性は言うまでもないだろう。軽量で薄く、しかもパッカブルにできるという便利さだ。
またインナーは「DRI-FIT ニット」など、いくつかの素材とモデルが揃っているが、いずれも肌の表面の汗を外側に運び出し(!)、常に肌を乾いた状態で快適に保持してくれる優れたプロダクトだ。「ナイキ エアロロフト 800フィル ダウンベスト」とともに、“ランナーの理想的な体温環境”を整える役割を果たしてくれるはずだ。
もう一つの新ランニングシューズ「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」のプレゼンテーション・ルームの前で、我々は履いている靴を脱がされ、ソックスだけになった。そして部屋に入っていく。床はアスファルト、ウッドチップ、陸上のトラックに敷かれるラバーなどさまざまマテリアルとなっており、まさに路面の違いを肌で感じることとなった。
「ここで紹介する『ナイキ フリー ハイパーフィール ラン』は、パーツを少なくすることに加えて、反発性のあるルナロンフォームを足の直下に配置し、より繊細な感覚を味わえるようになっています。走っている路面の違いを、足で感じることができるようにサポートするのです」と語るのは、ナイキ フットウェア イノベーション担当のバイスプレジデント、トニー・ビグネルだ。
後で触れるナイキスポーツ研究所(NSRL)にて、徹底的な研究がなされたという。足のどの部分が地面に接触して衝撃を吸収するのか、そしてどの部分にグリップが必要なのか。圧力の分散を地図のように示すプレッシャーマッピング技術を駆使し、高速ビデオで動いている足の動きを解析した。
そして「人間の足の複雑な動きを模倣する」シューズが生まれた、というのだ。ルナロンフォームは足の裏のクッションであり、アウトソールは固い皮膚のように足を守り、アッパーのダイナミックフライワイヤーは靭帯のように伸縮する。足と一緒に自然に動くために生まれたシューズ、「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」。自前の足がそのまま靴になったような感覚を味わえるということか。
製品のプレゼンテーションを聞き、午前の取材を終えた我々は、ナイキ本社敷地内の芝生のトラック&フィールドに向かった。「ナイキ フリー フライニット+」と「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」、この2つのモデルを試し履きして、実際に走ってみるのだ。
ナイキのシューボックスと同様のオレンジ色の、レトロなワゴンが停まっている。積まれているのは、先ほど見たばかりのランニングシューズ2モデルだ。まずは「ナイキ フリー フライニット+」を履いてみる。
「ナイキ フリー フライニット+」はとにかくフィット性が高い。そしてソールの屈曲も実に優れている。見た目はソックスのようだったが、意外なほどにサポート性を感じる。走ってみる。最も強く感じるのは屈曲性で、地面を捕える感覚がある。
次に「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」。このモデルをひと言で表すなら「研ぎ澄まされた感覚」であろうか。そして履いて歩いた時には、ぐっと前に推し進める感覚がある。走るとその推進力がさらに強まるように感じた。
試走を終え、昼食をとる。午後の部はいよいよ、ナイキのイノベーションを支える心臓部、ナイキスポーツ研究所(NSRL)に潜入する。このようなプロダクトはどんな研究過程を経るのか。めったに入ることができない場所だけに、期待は高まっていく。
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米オレゴン州のナイキ本社直撃取材
革命を起こすランニングシューズ(2)
Photographs by JAMANDFIXText by KASE Tomoshige(OPENERS)
プロダクト製作の舞台裏
“Nike Sport Research Lab”、すなわちナイキスポーツ研究所。ここでは多くの研究者とアスリートによって、ナイキのプロダクトの根幹となる“イノベーション”が、具体的に生み出される場所である。各国のプレスとともに、ナイキの核心部に歩を進めていく。
ナイキ歴代の名作シューズやアスリートの足型、シューズのパーツなどが展示された廊下に、モニターが据えられている。写っているのは足のサーモグラフィーのようだ。ここで説明が始まった。
「生理学チームは、足が動いたときの熱について考察しています。地面からの突き上げやねじれによって、足にどのような負荷がかかり、どのように発熱するのか。それを表すのがこの図です」と、モニターを指す。モデルが歩くと、その足がどのように動き、熱を持ち、圧力がかかるのかがひと目でわかる。こうしたリサーチが、シューズ作りの根本だという。
続いてランニング時のデータの計測である。女性ランナーがさまざまな計器を着けてルームランナーの上を走っている。こちらは非常に理解しやすい“研究の様子”であるが、目を移すと、同じように走っている何者かが視界に入る。それがランニングロボット「ハル」だ。人間と同じように走り、なんと汗までかいている(発熱すると蒸気が出る仕組み)。もちろんナイキのアパレルを着て、だ。人間でのデータ採取に加え、疑似的ではあるがロボットでもデータを集積しているという事実にはなかなか驚かされる。
さらに研究所内部を進んでいくと、長いトラックが現れ、ランナーが待機していた。身体の各部分にセンサーが着けられている。これが今回の“ネイチャー・アンプリファイド”のデザイン思想を支える、「モーションキャプチャー」の実験現場である。
「点を規定し、力の場所、力のベクトルを計測して、数値化するんです。そしてアスリートの身体の動きを再現して、モニターに表します。やってみましょう」
女性ランナーがスタートする。学生選手権に出場するスプリンターだけに、その走りは素人でもわかるほど“本物”だ。走り終えると即時データが解析され、身体の各部の動きがモニターに映し出される。腕の振り、姿勢、腿の上げ方、膝の曲がり具合など、360度方向から、すべての動きが目視できる。ほう……という嘆息があちこちで漏れる。
最後はバスケットボールだ。ハーフコートにカメラと照明がセットされ、プレイヤーが準備している。先ほどの「モーションキャプチャー」とは違って、映像である。担当者からは「1秒間に360コマの撮影が可能な超高速カメラ」との説明があった。
そして期待通り、プレイヤーはドリブルからのワンハンドダンクを決めてくれた。ジャンプする瞬間の足の動きが、超スローモーションで再現される。膝や足首ではなく、足自体が思いのほか捻じれていることがよくわかった。
1日という短い期間ながら、非常に内容の濃かった今回の取材。研究所を後にしてまず思ったのは「最新技術と最新の研究がプロダクトに注ぎ込まれている」ということ。そして次に思ったのは「何よりも“人間の動き”を重視している」ということである。デザインは単にデザインではなく、機能のために存在する。機能は単に機能ではなく、動いている身体のために存在する。あらゆるレベルのアスリートのために、ナイキは今日も研究を重ね、プロダクトを作り続けている。
今回紹介した、ナイキのイノベーションを具現するランニングプロダクトの数々──「ナイキ フリー フライニット+」および「ナイキ フリー ハイパーフィール ラン」と、2つのアパレル「ナイキ エアロロフト 800フィルダウン ベスト」と「DRI-FIT ニット」。「ナイキ フリー フライニット+」の日本上陸は本日、8月2日である。身に着け、その身体を動かして、ナイキの“ネイチャー・アンプリファイド”の理念を感じていただければ幸いである。
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