「ドレッシーに、ブルゾン!」
編集大魔王・祐真朋樹の渾身のチョイスが冴えわたる連載も六回目を迎え、ますます絶好調。今回は、あえてカジュアルに着ないミリタリーブルゾンをチョイス。Tシャツにジーンズの上に羽織ったのはもうひと昔、いや、5昔前。カラー限定でスタイリッシュにみえる着こなしを提案します。
Direction by SUKEZANE TomokiPhotographs by YAMAGUCHI KenichiStyling by KAWAI Kohta Text by HATAKEYAMA SatokoGrooming by 大東京
vol.6 オリーブカラーのブルゾン【ɑ'liv kʌ'lərd bláusɑn】
祐真 「去年から今年にかけて、レディスでMA-1が流行っていた時期がありました。本来はタフなミリタリーアイテムであるMA-1を、ちょっと小綺麗なスタイリングにあわせる着こなしが新鮮だったというわけですが、それをメンズでやっても面白いんじゃないかと思い、ピックアップしたのが今回のオリーブカラーのブルゾンです。
提案したいのは、ただ普通にアウターとして着るのではなく、ビシっとしたスーツの上にブルゾンを羽織るという着こなし。ブルゾンの裾からジャケットがはみ出すことで、ドレッシーで厳かな世界観にミリタリーの野暮ったさが加わるミスマッチな見え方がポイント。今回は特にそういう着方ができるようなブルゾンをチョイスしています。
ブルゾンの色は、黒やネイビーだとシックになりすぎるので、あえてオリーブカラーに限定。スーツと合わせた時の落差を狙いたいというか、ちょっとズレているほうが、洒落が効いていて面白いのかなとも思うからです。
そもそもスポーティな印象が強いブルゾンをさらっと着こなすというのは、なかなかに難しいもの。”キング・オブ・クール”と呼ばれた俳優のスティーブ・マックイーンは、Vネックセーターにシャツを着た上にG9(ジー・ナイン)を羽織るなど、エレガントなブルゾンの着こなしがとても上手でした。今回は彼のように『ドレスアップな気分とともに着る』ことができる7つのアイテムにフォーカス。みなさんにもぜひトライして欲しいです」
*ブルゾンの中にあわせたタートルネックセーター6万円(ジョンストンズ/リーミルズ エージェンシー 03-3473-7007)
LOEWE|ロエベ
祐真 「アイテムのルックスはミリタリーそのものですが、上質なナッパを使うなど素材がラグジュアリー。ドレスに着るのにまさに最適なブルゾンです。シルエットはややタイトめですが、ナッパなので薄くて柔らかく、革特有の突っ張りを微塵も感じさせないのもすごいところ。吸い付くようにしっとりしたレザーの質感に明るめのオリーブグリーンも合っていて、襟のボアも同色で作っているのがまたカッコいい。とにかく極端な魅力に包まれたリッチな一着です」
BURBERRY|バーバリー
祐真 「これはN2Bをベースに、M65やMA-1のディテールを加えてリファインした感のある一着です。艶やかな光沢感とカーキブラウンのミックス具合もよく、タイトなシルエットにもほどよくマッチ。すべてのディテールもよく作り込まれているなと思います。本物のミリタリーにはない洒落たルックスもいいですね」
TOM FORD|トム フォード
祐真 「日本では予約完売するほどの人気となった一着。ダークトーンで柄を抑え気味にしていて、迷彩なのか植物柄なのかわからなくしているところが洒落ていて、さらにその柄がヌバック地にプリントしてあるというのがラグジュアリーの極み。個人的に迷彩柄はあまり好みではないのですが、これは着たいなと思わせてくれます。G9(ジー・ナイン)に近いベーシックなデザインながら、存在感が際立つブルゾンです」
Saint Laurent|サンローラン
祐真 「サンローランは、B-15をベースにしたボンバータイプのブルゾンです。襟のボアを白、裏地のキルティングを黒と、表地とのコントラストを際立たせているのも、クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロらしいこだわりと今年らしいひねりが感じられます。襟のボアが着脱でき、チンカバーを付けてスタンドカラーにアレンジできるなど、機能性を盛り込んでいるのもいいですね」
BARACUTA|バラクータ
祐真 「ブルゾンといえばG9(ジー・ナイン)というぐらい、すべてのブルゾンの原型となっているのがこれ。1938年に誕生して以来、シルエットやデザインは時代とともにマイナーチェンジしてきてはいますが、やはりオーセンティックな魅力にあふれています。表地の色はネイビーや黒、赤がメジャーですけれど、オリーブグリーンだとちょっと大人っぽくて違った印象に見えるのが面白い。これこそエレガントに着こなすべき定番といえます」
VALENTINO|ヴァレンティノ
祐真 「後肩のダーツ部分とフロントのファスナーに沿ってあしらわれたロックスタッズがかなりのインパクト。上質なナイロン素材で、ややタイトめなシルエットが洗練された印象で、テーラリングを活かしたつくりでヴァレンティノらしいラグジュアリーな仕上がりになっています。アラフォー以降がミリタリージャケットを買う際に注意したいのは、決して本物のボンバージャケットを買って着ないこと。こういったこなれたアイテムのほうが洒落て見えるということは、ちょっと頭の隅に置いておいたほうがいいかもしれません」
ENGINEERED GARMENTS|エンジニアド ガーメンツ
祐真 「さりげなくミリタリーを取り入れたいというときに最適なブルゾンです。いわゆるミリタリーブルゾンを買いにいって『少しだけこうしてくれたらいいのにな』という願望がシルエットやディテールに的確に表現されていて、それほど本気じゃなくていいという人にはぴったり。ちょっとしたこなれ感が小気味いい一着です。まさに、今回のテーマにもガツンとハマるアイテム」
【spot light】
LOUIS VUITTON|ルイ・ヴィトン
祐真 「もともと野球少年だったので、スタジャンを見ると条件反射で着たくなる性分です。ただ、実際に着てみると『違うだろ』と自分でツッコミを入れることになる。小さい頃にスタジャンに憧れていた気持ちがバレる気恥ずかしさと、ノスタルジーが複雑に入り交じる心境…僕にとってスタジャンとは、着ちゃダメと思いつつも、つい着てしまう魔性のアイテムです。」
GUCCI|グッチ
祐真 「レインボーカラーのワッペンが背中にあしらわれたグッチのスタジャンは、見た瞬間に昔のヒューストン・アストロズを思い出しました。映画『がんばれ!ベアーズ特訓中』の舞台だったアストロドームで、当時のチームカラーのレインボーをあしらったユニフォームが懐かしい。とにもかくにも、スタジャンというは、大人のノスタルジーをいたずらに刺激してしまう、超デンジャラスなアイテムということは間違いないですね。」