短靴でブーツの儀式を愉しむ|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョン ロブ
「CLIFFE」に見るブーツメーカーとしてのこだわり
バックルを留めることで完成する儀式
大人の男にとっての身だしなみとは、ルーティンのようなもの。自分が納得するひと手間を加えることで、心は安らぎを得て、満たされた気持ちになれる。これは合理的な女性からみれば、理解できない世界観かもしれない。そのこだわりにも似た儀式を愉しむ一足として「CLIFFE(クリフ)」を紹介したい。
Photographs by KOBAYASHI Takashi(ITARU Studio)Text by ITO Yuji
無駄なようでいて、決して削れないもの
例えば、ウエットシェービング。ソープをアナグマの毛を使ったブラシで細かく泡立て、熱く湿らせたタオルで蒸らした肌に塗ってゆく。そしてレザー(T字剃刀)で丁寧に剃り上げる。一般的なかんがえでいえば、ただでさえ忙しない朝にそんな優雅な時間のかけかたをするなんて、とおもいがちだが、本人にとってみれば、それはいつもの習慣。そのひと手間を踏むことによって、内面は満たされ、気持ちにもゆとりが生まれる。
男にとって儀式とは、そういうものである。無駄なようでいて、決して譲ることのできないもの。靴をはくという作業さえも、お気に入りのシューホーンを使い、しっかりとレースアップシューズを結びあげたときの満足感は急いで済ませたときとはまったく違うものとなる。
それをブーツでいえば、バックルを留めるということで儀式は仕上がる。その醍醐味を味わえるのが2016SSでジョンロブが提案する「サドル・ストーリー」である。
バックルを留めることで、気持ちは引き締まる
ダービーシューズの上をストラップで多い、バックルで留めるという独特なデザインは、ブランドがブーツメーカーを出自としていることにインスパイアされたもの。新作となる「CLIFFE(クリフ)」は、その「サドル・ストーリー」を体現した一足といえる。昨年のモデル「COMBE(コーム)」はレースアップのブーツにシングルストラップをあしらったデザインだったが、そのディテールをダービーシューズとして再現したものが「クリフ」なのだ。
内側の部分の羽根にストラップをつけて、外側のバックルに通すというデザインは、パーツと靴本体のデザインを巧みに融合させることで、どことなくエレガントな薫りさえも漂う仕上がり。その美しさと“バックルを留める”というブーツやストラップシューズだけに限られていた愉しみを「クリフ」はあわせもつ。
また素材はカーフとスエードの両方がラインナップされるので、幅広いスタイルに合わせられるのも魅力といえる。靴をはくたびに心が引き締められるような、手間のかかる儀式を楽しめる男たちにこそ「サドル・ストーリー」をぜひ体験してほしい。
モデル名|「CLIFF(クリフ)」
色/素材|Black,Claret/Calf、Parisian Brown/Suede(名古屋松坂屋限定色)
ラスト|8695
ソール|シングルレザーソール
製法|グッドイヤーウェルト製法
価格|29万1600円
サイズ5E~9.5E