デザイナーが“MICK”とロングセラーを語る|Dartin Bonaparto
Dartin Bonaparto|ダルタンボナパルト
ブランドディレクターが語る、パターンとスワロフスキーのこだわり
アイコンキャラクター“MICK”がロングセラーの理由
東京・表参道ヒルズのファッションショップでつねに売り上げ上位を記録するブランド「Dartin Bonaparto(ダルタンボナパルト)」をご存知だろうか。国内ブランドが低迷するなか、あたらしい富裕層からデザイン好きの若者、さらにアジアの人びとなど幅広い男女が、アイコンキャラクター“MICK”と、着心地の良さに惹かれてぞくぞくと来店する。ブランドディレクター井上玲(あきら)氏にこだわりのものづくりについてうかがった。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)
架空のミュージシャン“MICK”登場!
ブランド名の「ダルタンボナパルト」は、フランスの三銃士伝説に加わった「ダルタニアン」とフランス帝国の闘将「ナポレオン=ボナパルト」の名前からインスパイア。ブランドディレクター井上氏によって2007年秋冬シーズンにデビューした。
スタート当初はフランス・ドゥニーム地方をブランドの根源として、労働者階級の象徴であるデニムに、貴族的なゴージャスさをプラスしたデニム中心のコレクションを展開していたが、ブランドのアイコンキャラクターとして“MICK(ミック)”が登場して、その人気に火がついた。
ミックは架空のミュージシャンで、4人組バンドで世界ツアーに出て、そのシーズンその場所で影響を受けたファッション、文化、スタイルをコレクションのなかで表現。ミックの姿は刺しゅうやプリントなどで多彩に表現されている。
ミックは1976年生まれのバンド(ブランド)の中心人物で、70年代のロックに魅了され、現代のオルタナ系ロックに当時のプログレをミックス。彼のスタイリングそのものがブランドの方向性を示し、バンドにはほかにベーシストでバンド唯一の紅一点、SUZY(スージー)、ドラマーのCOZY(コージー)、ギタリストのJEFF(ジェフ)も存在する。
スワロフスキー+シルエットの美しさ
ダルタンボナパルトはミックの人気に加え、ブランドの原点であり、井上氏が「もっとも重要なデザイン」というフーデッドパーカがキーアイテムで、見どころはスワロフスキー社に別注したジッパーと、シンプルでスタイルを良く見せるシルエット。さらに背中にミックがスパンコール刺しゅうされ、ゴージャスでコンファタブルなアイテムとして不動の地位を築いている。
「シンプルでセンスあるファッション観の表現として、あえてフロントジップにのみスワロフスキー社製ジップを使用しました。このジップは長さとカラーにこだわった弊社だけのスペシャルオーダー。またミックのスパンコール刺しゅうは、高い技術力が求められるので、すべて国内で加工しています」
井上氏は、パターンへのこだわりについて「自分のキャリアのなかでデザイナーズブランドをはじめ、イギリスやイタリアのファクトリーブランドなど紳士服のブランドと数多く契約してきましたが、はじめて携わったブランドでシルエットの重要さを知り、シルエットの構築とともに人体の構造や身体の可動域など、身体と商品のシルエットとの関係性に興味をもつようになったのです。そのなかでたとえジャージ素材であっても、シルエットは構築できるのでは、とおもい、商品に生かせる方法を考え出しました」という。
着用感の良さの秘密とは
「痩せていても身体を鍛えている、いわゆる“痩せマッチョ”は、腕の筋肉が発達しているひとが多いので、腕の可動域が多く、楽に腕を動かせるラグラン袖を採用。タイトなシルエットに見えながら、鍛えられた肩や二の腕の筋肉にキツさを感じさせない、きれいなシルエットを保つパターンを構築しました。
また、通常ジャージのパターンは、前身頃、後ろ身頃の2枚で作られることが多いですが、それだとタイトなシルエットにしないと身体の立体感が出ず、窮屈な感じだけを与えますが、ダルタンボナパルトでは“脇パネル”を作ることで、無理なく身体の立体感に沿ったシルエットを構築できます」と井上氏。
人気のフーデッドパーカは通年アイテムだが、秋冬はベストセラーのダウンベストやダウンジャケットが登場する。旗艦店のダルタンボナパルト 表参道ヒルズ店と、ユナイテッドアローズ 六本木 メンズストア、オンラインショップのみで購入できるという希少性もブランドの神話性を高めている要素といえる。
ダルタンボナパルト 表参道ヒルズ店
Tel. 03-5474-1874
http://www.dartin-bonaparto.com/