リアルクローズドにマッチするモカシン

男にとってスーツはある意味、ユニフォーム的な存在であり、着こなしにもルールが存在する。ゆえに誰が着ても、それなりに見えるのだが、ことカジュアルにおいては、そうはいかない。なぜなら、自由度が高いから。

そこで試されるのが“センス”である。ひと口にセンスといってしまえばそれまでだが、その言葉はいくつもの意味を内包している。これまでに培われてきた審美眼、上質なものをさり気なく見えるような着こなしの配慮、そして文字通りのコーディネートを構成するためのファッション力、などなど。

いずれも一朝一夕にして手に入るものではないが、幅広いコーディネートにマッチする一足としておすすめしたいのが、モカシンである。スエードのアッパーにエプロン型のステッチをもつ、このタイプの靴はカジュアルとドレスの中間に位置するような存在のため、幅広い着こなしに対応してくれる。リアルクローズドにおける利便性の高さこそが、おすすめする理由だ。

カジュアルを引き締めてくれる、稀な存在

今季からはスニーカーも展開されているが、ジョンロブといえばドレスシューズを連想するひとも多いはず。しかしアーティスティック・ディレクターにパウラ・ジェルバーゼを迎えたことにより、その選択肢はさらなる広がりを見せている。彼女自身、「私は変化のための変化を起こすのではなく、ジョンロブがもっている美しさの概念を表現したい」といっているように、それは変化ではなく、今日的なスタイルに合うようにアレンジされた進化ともいえる。

それを象徴する一足が「リンサー」である。クラシックなモカシンとしてつくりを、ハンドソーンで仕上げることで、フィッティングには絶妙な甘さが残される。それを履きこむことで、モカシンとはいえしっかりと足に馴染んでゆく。そのかんがえ方はビスポークのスーツにも通じるもので、ミシンメイドでは味わえない心地よさがある。

そして「リンサー」のソールはトゥからヒールまで、一面にラバーがあしらわれたフレキシブルなもので、一般的なドライビングシューズとは違い、耐久性が高められており、実用性にも優れている。さらに持ち前の“カジュアルでもなく、ドレスでもなく”といった使い勝手があるため、ショーツはもちろん、白パンにジャケットというコーディネートにもマッチするのだ。

ファッショニスタのような華やかさよりも、大人のお洒落には控えめなトレンド感こそが重要。派手ではないけれども、夏らしい清涼感のあるカジュアルに「リンサー」を取り入れれば、穏やかな品格を備えたコーディネートが楽しめるだろう。

「LYNTHER（リンサー）」
価格｜10万8000円
木型｜0415
色/素材｜Dark Green, Ocean Blue, Aubergine, Navy, Dark Iron / Suede
ソール｜ラバーソール
サイズ｜5～9.5E