特集|ヴィンテージから新作まで、いま欲しいのは “クラシックな眼鏡” Vol. 03「ブロウ」
特集|いま欲しいのは “クラシックな眼鏡”
ヴィンテージから新作まで、厳選のラインナップ
第3回「ブロウ」
“クラシックな眼鏡” としてリバイバルを見せている「ラウンド」「ボストン」「ブロウ」の3型の眼鏡にフィーチャーしてお届けする本特集。ヴィンテージアイウェア専門店「ソラックザーデ」との共同企画にて、同店が所蔵する1万本以上のアンティーク、ヴィンテージのなかから歴史的に重要なアイテムをピックアップ。オーナーである岡本龍允氏の監修のもと、それぞれのルーツを紐解き、各スタイルの発生から変遷をたどる。
Photographs by JAMANDFIXText by OPENERS
1950年代の知性の象徴
第3回は「ブロウ」。ボストンの眼鏡のあとにアメリカで生まれた、定番的な眼鏡のひとつだ。その名の通り、眉毛のようなフレームにより、身につけるものの顔立ちを引き立てるデザインが特徴だ。
写真は1940年代後期に製作された「SHURON(シューロン)」社によるもの。「RONSIR(ロンサー)」と呼ばれるこのモデルは、いま親しまれているブロウ型眼鏡の原型である。1865年に創業したシューロンは、「アメリカンオプティカル」「ボシュロム」と肩を並べる米国3大眼鏡メーカーであり、なかでもこのロンサーは大ヒットを記録し、メーカーを代表するモデルとして知られている。
眼鏡としての機能のみならず、個性的なルックスに重きを置いたデザイン。ラウンド、ボストンにつづいて米国で誕生したブロウは、知的な印象をあたえる特徴的なハーフリムで1950年代に人気を博した。
’50年代には、「アメリカンオプティカル」が、米国軍のモント将校の “威厳の出る眼鏡を” というオーダーでブロウ型の眼鏡を製作。これがのちに「サーモント ブロウ」と呼ばれるモデルとなり、「ロンサー」に並ぶ名作として、現代でも復刻をおこなうブランドが出てくるなど、金字塔を打ち立てている。
’60年代には、デザインのバリエーションが増え、鏡面のメタルパーツを用いたものなど、ユニークなデザインが登場。このような遊びが利いたデザインが生まれるということが、当時の定番的な人気を裏付けている。またアイビーブームの影響もあり、若者のあいだでも着用されることがあった。
デザインがさらに拡張される1970年代以降
’70年代に入ると、プラスチック素材のレンズが登場したことで大きなレンズのフレームデザインが可能になり、ブロウの眼鏡にも大ぶりのタイプが登場。そして、日本国内でもブロウ型眼鏡の流行が起こる。高度経済成長期で活気づくビジネスマンや政治家のなかで、精悍な顔つきをアピールするのに、非常に効果的だったという。
西ドイツ、つづいて日本が世界のもの作りを牽引する国として台頭する’50年代から’60年代を経た、’70年代以降は、世界中の眼鏡店のラインナップを西ドイツの製品が席巻した。
そのなかでもとくにドイツらしさを象徴するブランド「RODENSTOCK(ローデンストック)」は、アメリカの製品とはまたちがう、質実剛健な作りで世界中のひとの心を捉えた。
86年にはブロウ型の眼鏡のデザインを下敷きとした「レイバン」のサングラス、「クラブマスター」が発表される。このモデルは当時、’50年代のスピリットを反映したフレームとして大ヒットを記録。ムービースターやロックミュージシャンが愛用し、そのイメージを決定づけた。
視力矯正の道具としてだけではなく、男性が印象をコントロールするファッションアイテムとして登場したブロウ型の眼鏡。現代において、アメリカントラディショナルなスタイルの回帰から “クラシックな眼鏡” として、メンズ・ウィメンズともに盛り上がりを見せているセクションだ。
いま手に入れるべき「ブロウ」型の眼鏡8本
ブロウ型の眼鏡は避けることのできない題目として、ブランドの前にあらわれる。それぞれ、共通するデザインのなかで、レンズの大きさや丸み、ブリッジやリムのディテールで個性を演出している点に注目していただきたい。ここで紹介するのは、いずれも各ブランドが自信をもって送り出す逸品だ。