Gravity Zero──ジュリアーノ フジワラ 春夏コレクション
島津由行が拓くメンズウェアの新たな領域
マツムラ マサタカがクリエイティブディレクターを務めるジュリアーノ フジワラは、ヨーロッパでつねに一定の評価を得ているブランドである。その先鋭的な春夏コレクションをスタイリスト島津由行の深い洞察力のもとに再解釈し撮り下ろした。
Stylist = SHIMAZU YoshiyukiPhotos = RrosemaryHair = ASASHIModel = Coley (EXILES)
コンセプトは“重力のない世界”
「自然は、その色と明るさを通じ、わたしたちの感覚を目覚めさせる。それは海面に無限大に広がる光の反射であり、深海の未知なる神秘の色。深海に深く沈んだとき、ひとは重力から解放された感覚を覚える」
今シーズンのジュリアーノ フジワラでキー・コンセプトになっているのが、“重力のない世界”。
それは軽く肌触りのよい素材や、自然の移ろいを取り入れたカラーとして表現されている。また、ランウェイで目を惹いたジオメトリックパターンは、1から24までの数字がランダムに重ね合わされたものだが、それは1日の時間を示唆するもので、時間という4次元の世界=無重力な世界というアレゴリーでもある。
コレクションを個別の側面からみていこう。
COLOR
光りをも吸い込む深い海底のダークブルー。白々と明けかかる夜明けの空の淡いブルー。その空に浮かぶ雲のホワイト。低く立ちこめた雲に映る海の薄いグレー。砂の色のベージュに、太陽が沈んだ水平線を染めるワインレッド。
刻々と変化する自然の色が多く取り入れられている。
STYLE
先シーズンから続く新たなプロポーションへの取り組みは、ここにきてさらなる進化を遂げた。
小さくなった肩幅に若干短めの袖丈。パンツは股上を深くとり、ジャケットと同じように丈は短めとした。これらの計算されたバランス感は、ジュリアーノ フジワラを象徴する新たなプロポーションとして確立されたといえるだろう。
MATERIAL
シルエットと着心地を追求した素材選び。
パンツに用いられたやわらかいタフタは、張り感を残したことで形状を自由に変えることができる。混紡されたシルクがさらにエレガンスをプラスする。シャツのコットンは軽く、まるで薄いガーゼのようだ。
とても軽く仕立てられたモヘア混のウールは、ハンドメイドのジャケットに。ミルク繊維を織り込んだニットは、それがイメージさせるとおりのなめらかさだ。
ハイテク素材ではコットンにシリコンコーティングを施すことで、防水性という機能に加えて、水の反射を思わせるイメージが表現されている。
ヨーロッパでの評価が高いと聞けば、どこかしら面映ゆいものの、日本人の身にはあまり“リアル”といえない服づくりのブランドが目立つなか、ジュリアーノ フジワラからはそうしたナショナリティを“瑣末な”ものとして傍らに追いやってしまうほどの、筋の通った普遍性が感じられる。それは、クリエイティブディレクターのマツムラ マサタカが好んで言及する、日本的な美意識の象徴である“侘び・寂び”とも通じるところだろう。
今後の活躍にさらなる期待が高まる注目のブランドである。
SHOP at TOKYO
giuliano Fujiwara AOYAMA
東京都港区南青山6-8-18
Tel. 03-5469-5558
SHOP at MILAN
モンテナポレオーネ通りとスピガ通りを結ぶボルゴスペッソ通りは、新たなファッションディストリクトとして注目のエリア。その地に去る1月20日、オープンしたばかりのミラノ直営店は、白を基調に1階と地階の2フロアで構成されたミニマルな空間である。
この東京・青山店につづき2店舗めとなるショップは、ピュアでシンプルな雰囲気のなかに、黒のグラフィカルなオブジェがコントラストをみせ、新鮮な美しさを誇っている。
giuliano Fujiwara MILANO
VIA BORGO SPESSO, 11 MILANO ITALY
Tel. 39-02-3653-1230
ステッドファースト ジュリアーノ フジワラ プレスルーム
Tel. 03-6823-6600