萩原輝美 連載 vol.170|パリに発表の場を移したビューティフル・ピープル熊切秀典氏に聞く
パリに発表の場を移した熊切秀典氏に聞く
ビューティフル・ピープルは昨年10月のコレクションを最後に東京からパリに発表の場を移しました。この3月、パリ、プラス・ヴァンドームにほど近いスペースで、インスタレーション形式で2017-18AWコレクションを発表。自然光の入る部屋でモデルが5人ずつ並んで4回着替えるという趣向です。テーマは「WAFUKU」。部屋に入ると掛衣桁(和服用の直線ハンガー)に服が飾られています。ぽっくり靴にコマのように巻かれた紐ベルトがディスプレイされています。初めてのパリ進出、コレクション発表翌日、パリショールームにデザイナーの熊切秀典氏さんを訪ねました。
Text by HAGIWARA Terumi
ヨーロッパシックに挑む東京モンスター
ビューティフル・ピープルのパリデビュー
Q:予定通りのパリ進出ですね。感想は?
A:はい、2年前から考えていました。でも初めての海外発表では、表現しきれなかったこともいっぱいです。
Q:テーマの「WAFUKU」は意外でした。パリだから意識したジャポニズムですか?
A:ビューティフル・ピープルの最初のコレクションは子供服を大人が着る、というテーマでした。いつも相反する要素を合致させながら服を作ってきました。
Q:覚えています。最初のコレクションはママと娘が登場して同じ10歳用のライダースを着ていました。
A:そうです。そして「女服と男服」など……。だからパリの「洋服」に対して「和服」というテーマは自然でした。でもカタチだけの「WAFUKU」にしたくはなかった。もの作りのアプローチ、機能美を表現したかったんです。
ふっと立ち上がって、1点のコートを取り説明が始まりました。
A:着物の反物って巾37センチって決まっています。今回は広巾の生地を37センチに裁断しステッチで縦に接ぐことによってきちんとたためる服にしたんです。「洋服」の立体裁断に対してとことん「平面」の美しさを追求しました。
Q:なるほど、服といえば「立体裁断」が美しいと思っていましたが最近のトレンドはニューボリューム。キモノスリーブも多く登場してベルトで締める着こなしが秋冬も引き続いていますね。
A:このニットもそう。普通、ニットは前下がりをつけて前後身頃が抜けないように作られます。このニットは後ろの背中のところを横直線に折るとぴったり前後が重なります。つまり隠れ肩線が後ろ身頃にあるのでネックが自然に前下がりになるんです。
Q:インスタレーションではわからなかったですね。
A:そうなんです。もちろんモデルが着るルックを見てもらってコレクションが評価されると思いますが、そのアプローチを知って欲しかった。伝えきれなかったことは反省しています。次回は「ヨーロッパシックX東京モンスター」の見ごたえあるコレクションを発表します。期待してください。
インタビューを終えて
東京ではいつもの仲間とコレクションを発表してきたけれど、パリでは海外スタッフも加わりコミュニケーションが大変だったとか。10月のラストコレクションのフィナーレではライブ演奏してパリへの旅たちを宣言しました。まだスタートしたばかり。現地ジャーナリストの評判は良く「目指せボン・マルシェ(パリの百貨店)!」に向けて次回が楽しみです。
熊切秀典|KUMAKIRI Hidenori
ビューティフル・ピープル デザイナー
1974年 神奈川県に生まれる
1997年 文化服装学院アパレル技術科卒業
2007年 ビューティフル・ピープルを立ち上げる
東京でコレクションデビュー
2017年 パリコレクションで発表
10/25(水)~11/21(火)の期間限定で、GINZA-sixにbeautiful people17-18AWパリデビューコレクションのポップアップショップがオープンする。「和服」と「洋服」、「東京POP(ネオギャル)のモンスターカラー」と「パリシックなBCBG」という相反する要素を組み合わせることにより、境界線を越え新しい価値観を提案した同コレクション。限定アイテムとしてモンスターカラーのライダース小物や、普段は直営店でしか購入できないネームトートのスペシャルバージョンなどを販売する予定。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/