都会人のジャック・ケルアックが、山上でどんな服を着ていたのか

――2014-15年秋冬コレクションのテーマ／コンセプトは？

ジャック・ケルアックの『孤独な旅人』は八編の散文による作品集なのですが、そのなかに『山上の孤独』という話があります。ケルアックがシアトルの山奥で合衆国森林管理局の山火事監視員として3カ月間ひとりで過ごしたときのことを書いたものですが、そのなかにこのような台詞（せりふ）があった ――「荒野での退屈な孤独でさえも意味がある、自分自身を発見したただひとりの自分自身を頼り、その結果、真のそして隠れた力を学ぶのだ！　たとえば空腹のときに食べ、眠たいときに眠ることを学ぶように」。非常に、完全にひとりになるため、ジャック・ケルアックは都会からシアトルの山奥に入っていく。そこで孤独と向き合い、自分なりの心理を孤独のなかから拾いだしたのです。

都会人の彼が、山上でどんな服を着ていたのかを想像するところから今回のコレクションは、はじまりました。機能素材のパーテックスやプリマロフトで構成された防寒着、保温効果を高めるために、空気がたまりやすいように計算された編みのニット、天気の良い日にお気に入りの文庫本をポケットに入れて散歩するためのパンツ、動きやすさを考慮して製作されたストレッチパンツ、山上でのタフな作業に耐えるためのパディングジャケットなどをラインナップします。

東京の大雪のように、都会に住んでいても過酷な環境はいつどこからともなくあらわれます。都会の冷たい風から身を守るための服、急に降り出した理不尽な雨から体温の低下を防ぐ服、完全な孤独のなかにいても、気分を高揚させ己（おのれ）の向かう方向を教えてくれる羅針盤のような服。フィジカルとメンタルをサポートしてくれるような洋服を製作することが今季のテーマでした。

――今シーズンのルック撮影でこだわったポイントと、注目してほしいところは？

アウトドアデザインとベーシックアイテムのミックススタイリングが一番こだわったポイントになります。ナイロンのもつ光沢感をコットンやウールの素朴な素材感で中和させることがすべてのスタイリングに共通したポイントになります。ルックブックはウェブメディアでの掲載がほとんどなので、いろいろなウェブメディアの背景に馴染みやすいように白壁で統一し、モデルのポーズ、表情も統一しました。

――スタイリング、シルエット、カラーなど、昨年の秋冬コレクションとのちがいは？

1年前のコレクションは、製品やスタイリングに無骨さと土臭さが感じられます。今回のコレクションではその2点を排除しました。ボトムはスマートなシルエットで統一し、素材は光沢感のあるものを多く使い、カラーもブルーやイエローなど鮮やかな色を採用しています。無骨さ、土臭さの替わりに、静かな色気が漂うコレクションにしました。

――今シーズンのキールック（コーディネイト）は？

コヨーテカラーのパーテックスのセットアップのスタイリングですね。ナイロン上下のセットアップなのに、スポーツやアウトドアの匂いが感じられない。あたらしいバランスの提案になります。またフェイスガードジャケットのスタイリングは、気候状況によってひとつの洋服がトランスフォームしていく提案です。

注目は機能素材のパーテックスやプリマロフト

――キーアイテムとキーカラーは？

キーアイテムはフェイスガードジャケットとスーパートランプコート。キーカラーはコヨーテですね。

――今シーズンこだわった「素材」は？

防風性、撥水性、耐久性に優れたパーテックスナイロンと、保温性、ドライ性、柔軟性、圧縮性に優れたプリマロフトです。

――今、ファッションシーンで注目している「こと・人・モノ」は？

リハビリウェア（関節や筋肉を痛めた際にそれをサポートするようなウェア）です。このジャンルにもう少しデザイン性を取り入れたものがあればいいのに、と思います。

――ウェブマガジンOPENERS（http://openers.jp/）に期待すること

上品な大人のためのメディアでありつづけてほしいです。

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