LAGUIOLE|ソムリエナイフの正統──ライヨール
LAGUIOLE|ライヨール
ソムリエナイフの正統
フランス南西部のオブラック地方にある小さな村、ライヨール。チーズの産地としても有名だが、なによりあのミシュランの3ツ星レストラン、「ミシェル・ブラス」があることで知られていると言えようか。その村で代々作りつづけられてきたナイフこそ、今日世界じゅうにその名をとどろかす“ソムリエナイフ”なのだ。
あらたな取り組みが伝統をよみがえらせる
ボトルのフォイルをスムーズに剥きとり、スクリューをコルクに突き立てるや、やすやすとそれも力まず引き抜く──あなたがプロのソムリエでなくとも、この一連の動作の習熟に興味がないはずはないだろう。それを可能にしてくれるのが、このライヨール社のソムリエナイフである。パリのカフェでギャルソンが使うその仕草に魅せられて以来ずっと探しつづけている、などとはよく聞く話だ。しかし、安手の土産物ならいざ知らず、ライヨール社の製品を日本で探すとなるとそれは容易なことではなかった。
ルモアズではそのソムリエナイフをはじめとして、原点ともいえるポケットナイフからパイプスモーカーナイフやゴルファーズナイフといったものまで、かなりのラインナップが揃っている。柄のカーブが美しいポケットナイフは、じつはテーブルナイフとして使うのも“手練れ”な感じがしていい。チーズを切りわけそのまま突き刺して口に運ぶという仕草は、その生い立ちを考えればまったく理に適っている。
ライヨール社は伝統を大切に守りつつも、あたらしい試みにも果敢に取り組んでいる。たとえば、建築家のジャン=ミシェル・ヴィルモットにデザインを委嘱したソムリエナイフ。それまでの天然素材から一歩踏み出したアクリルガラス製のボディは、コンテンポラリーに生まれ変わってはいるが、ソムリエナイフという伝統の完成形にとどまっている。彼はほかにテーブルナイフのセットも手掛けており、デザイナーのフィリップ・スタルクもまた同様にナイフのセットをデザインしている。
旧来のものをそのまま守りつづけているだけでなく、あたらしい“血”も貪欲に取り込みつつ進化するライヨール。たとえワインに詳しくないとしても、あるいは刃を開かないままに眺めるだけだとしても、この生活の道具の“用の美”にぜひ一度触れられてみてはいかがだろうか。