Jipijapa| 2009春夏コレクション
Jipijapa|ヒピハパ
いつもお洒落を忘れない、遊び心あるオトナ服
ウィットに富んだデザインでファンを魅了し続けるブランド『Jipijapa(ヒピハパ)』は、今年ブランド立ち上がりから16年を迎える。常に新たなスタンダードを私たちに提案してくれるデザイナー、加賀清一氏に話を聞いた。
Photo Jamandfix
冒険や挑戦をしつづけながら、自分のスタンダードを表現
さりげないカッティングやボタンのあしらい、1枚の型紙から作ったジャケット…一見普遍的なデザインであるのにどこかに「普通」ではおさまらない、ウィットに富んだディテールやアイデアが隠されている。「Jipijpa(ヒピハパ)」の服を端的に表現すると、こう言えるのではないだろうか。洋服ひとつひとつに、「スタンダードなものをデザインすることへの挑戦」のようなものが見え隠れするのだ。
「僕自身コンサバなものが好きだし、世の中にある“当たり前のもの”や“スタンダードなもの”が好きなんです。スタンダードなものを少し作り変えたり、自分のなかでスタンダードと呼べるものを作ってみたり。最終的には山手線に乗っていても大丈夫なものというか。ちょっと変わっているという程度のものでおもしろいものを作りたい、凝っていても見た目は普通でありたい、ということですね」
たとえば、マルチカラーボタンのシャツやチャイナシャツ、これはブランド設立当時からもあるアイテム。加賀さんのファッションフィロソフィーはブランド設立から16年を経た今でも、脈々とつづいているようす。
その確固としたファッション哲学はどのようにして培われたのだろうか。
「ファッションに目覚めたのは1960年代で僕が10代のころ。当時はアメリカのホームドラマを日本のテレビでたくさんやっていて、パーマネントプレスのパンツだったりを履いていてね。なんて格好いいんだ、と。日本で紹介されているようなアイビーとはかけ離れていたし、“本物のアメリカの服”が欲しいと思ったのがそもそものきっかけ」
そこから加賀氏は、「まるで魔法にかかったかのよう」にファッションに夢中になったという。
「当時はアメ横だったり、福生だったりリトルアメリカだったりによく出向いていた。でも理想のサイズがないから、返還前の沖縄にビザをとってまでしてわざわざ買い物ツアーに行ったり。とにかくファッションだったり格好良く思われんとするところにかけるエネルギーはそれはすごかったですね。女の子にもあまり興味が向かないくらい(笑)。27歳のときにはアメリカに単身渡って洋服を買いつけてきて、それを原宿で売ったり。そのころに婦人もののアイテム作りを依頼されて、そこからブランドがスタートした」
そこから加賀氏は「スキップ&ピー」「インテリア・エクステリア」を経て、「Jipijapa(ヒピハパ)」スタートにいたる。
「ちっちゃなブランドだからなるべくお金をかけずにおもしろいものを作ろうと工業用に使われるケプラーのような素材を取り入れたり、ライダースを裏返すとモッズパーカになるアイテムを作ったり、パーカの中から3人分のポンチョが出てくるアイテムを作ったり、災害時に1枚の型紙で作れるような服を考えたり、デート用のジャケットを考えたり」と、加賀氏の洋服作りには、つねに冒険と挑戦とがともにあるようだ。
「でも僕の基本は、Jipijapaのブランド名にも込められているのですが、“心に帽子をかぶりましょう”つまりはお洒落を忘れないようにしましょう、ということ。それは、自分がいちばん心地よくいられるものであり、自分の立ち位置を確認できるようなものなのだと思う。ジュヌヴィエーヴ・アントワーヌ・ダリオーの著書で『エレガンスの辞典』というのがあって、そのなかで“衝動買いしたものはいつも着ているけれど、頭で考えてこうしようああしようと考えて買ったものには袖を通していない”と言っているところがあって、それはまさにそうだな、と。衝動買いさせるようなインパクトがありながら、スタンダード。これが理想ですね」
ひねりがききながらも、気負わず着れる服。Jipijapaの魅力は、そんなところにあるのではないだろうか。