第11回 足袋を履いてみよう
Fashion
2015年5月21日

第11回 足袋を履いてみよう

男のキモノ、その形拵え(なりごしらえ)の「基本のキ」を、イラストレーターの穂積和夫さんが解説します。
第11回は、足袋のはなし。洋服のソックスとちがい、つねに人の目にさらされるものなので、その選択や履きどころなどをちゃんとわきまえて臨みたいもの。

文と写真=穂積和夫

コーディネイトのキモは足元に

着物を着たときの足もとには、夏場の浴衣がけのとき以外はまず足袋を履くというのがキマリだ。
年中、下駄や雪駄を履き慣れていないと、素足ではどうしても「鼻緒ずれ」が出来やすい。足袋は一年中を通して和服の必需品なのである。

白足袋

足袋には白足袋とそれ以外の色足袋がある。白足袋は冠婚葬祭のときとか、やや改まった場面に履くフォーマルな気分のものと思えばいいと思う。
邦楽や舞踊の発表会の舞台では、たとえ「浴衣ざらい」のような場合でも白足袋を履くのが常識だし、お茶席に出席するときも白足袋だ。夏場なら白麻の足袋がいい。

おかしいのはこの茶道の場合で、洋服で茶席に出る場合もキモノに準じて白いソックスを履くように指定されている。
え?? スーツに白のスポーツソックスなんて、中学生並みでいかにもダサいよ? などといってもそういう「キマリ」になっているんだから何とも致しかたない。
つまりお茶を習うならやっぱりキモノを着なくちゃお話にならないということだ。

長唄、小唄その他の邦楽関係では、そこまでうるさいことはない。小唄の発表会では男性でスーツ姿で舞台に上がる人が圧倒的に多いが、白ソックスという人はさすがにいないようだ。
でもネクタイ締めて小唄をウナるっていうのも、なんだかしっくりこない。キモノに白足袋(羽織や腕時計、指輪などははずす)、角帯をキリリと結ぶというスタイルのほうが、たとえ唄は下手でもサマになることは当然だと思う。

穂積和夫 Photo02

色足袋

白足袋のほかに色物の足袋もある。
その代表的なものが、黒足袋と紺足袋。どちらも木綿だが、黒足袋は黒繻子(しゅす)、紺足袋は濃紺の木綿のキャラコ地を使っている。内張りは一般に晒裏、冬場などはネル裏もある。

粋な足袋といえばもちろん下町風の紺足袋だ。
黒足袋は一般に「ヤボ」だということで、池波正太郎先生などもお好きではないらしい。

「黒繻子ってピカピカ光ってる足袋があるだろう。あれをはいたらだめなの。おかしい。やっぱり紺の木綿の足袋でないと、あれを履くと田舎のお大尽になっちゃう(笑)。」(『男の作法』より)

和服ファンは圧倒的に紺足袋派が多いようだが、わたしは案外黒足袋が好きだ。紺足袋の粋に対して、黒足袋はどちらかというと山の手風のちょっとヤボくさい味がいいのである。
唐桟などの粋好みのキモノには紺足袋だが、絹の柔らかものだと繻子のテカリがけっこうマッチすると思う。

最近は男の色足袋にもいろいろバリエーションが多く、褐色系、モスグリーン系、グレー系などの色ものも増えている。ちなみに歌舞伎の「助六」は黄色の足袋を履いている。

足袋選びなど

そのほか小紋柄のような柄入りも人気があるようだ。しかし足下をスッキリ見せるという点では、目立つだけにキモノ全体とのコーディネートが難しくなる。
そこへ行くと、純白の鮮やかさは白足袋の身上だ。汚れたのはやっぱり格好悪い。あまり色足袋というものに関心のないわたしも、グレーの足袋はよく愛用している。

木綿は江戸時代に一般化したもので、それ以前は麻素材や革素材が使われていたようだ。
最近は化繊素材も多く、メリヤス編みのものなどはサイズが合えば余計なシワなど気にしないでピッタリと履き心地が良い。

昔は紐で結んで履いていたのが、元禄時代ごろから鹿の角などで作った小鉤(コハゼ)という爪形の「止め具」が工夫された。現在は真鍮製で、4枚コハゼと5枚コハゼがある。数は各自の好みでどちらでもいいと思う。

足袋は履き心地が重要だ。サイズがブカブカ、シワシワでは見た目にも悪いし、履き心地もよろしくない。小さすぎても足が痛くなる。
誂えで作ってくれる足袋屋も少なくなったが、デパートなどでは既成のお試し用を揃えているから、自分のサイズが判っていても、いちおう履いてみてから買うことをお薦めする。
サイズは、昔は「文(もん)」を使ったが、これは一文銭の直径(約24ミリ)を単位にしたもの。
現在はセンチが広く使われている。足袋は洗っているとやや縮むから、0.5ミリほど大きめを選ぶといい。

           
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