『My Freedamn! Vol.6』完成!(1)
『My Freedamn! Vol.6』完成!
そして制作過程で思ったこと……(第1回)
前作『My Freedamn! Vol.5』の発表からおよそ3ヵ月。早くも去る3月23日には最新作『My Freedamn! Vol.6』が発売された。そこで今回は、そのVol.6の見どころと、制作過程で田中氏が見たアメリカの過去と現在、そしてアメリカ人にとってのフィフティーズなど、彼が感じたアメリカを思いのままに語ってもらった。
interview&text by TAKEUCHI Toranosuke(Citywrites)
アメリカのフィフティーズとは、シャツの時代
──最初に『My Freedamn! Vol.6』の概要を簡単にご紹介いただけませんでしょうか
田中凜太郎 前回までのこのコーナーでもお伝えした通り、Vol.5とこのVol.6は「フィフティーズ」というひとつのテーマで作った本の前編、後編の関係に当たります。で、Vol.6に収めたのは、主にエルビスのブレイク以降、年代でいえば1956年以降のフィフティーズの服たちです。一般的にフィフティーズと呼ばれるファッションや風俗は、こういうテイストを指すことがほとんどでしょう。そして、この時代の象徴的アイテムであるシャツが、今回の本の見どころになっています。
──確かにフィフティーズといえば、さまざまな色柄や素材のシャツが誕生していますね
田中 間違いなくフィフティーズはシャツの全盛期です。
──Tシャツではなく、シャツなんですね
田中 そう、Tシャツよりもまずはシャツだったんです。50年代というのは、世の中(アメリカ社会)が軽量化した最初の時代。そんな軽量化しアクティブになった社会を代弁する存在が、軽快なシャツだったというわけです。中でも象徴的なのは、一際軽くて発色のよいレーヨン製のシャツでしょう。
派手なプリントもきれいに表現できるレーヨンの隆盛というのはつまり、新しい時代を感じさせる新しい素材が人の心を動かしたということです。90年代のフリースみたいな感じといえば、おわかりいただけるのではないでしょうか。
シャツは軽量化した世の中の象徴だった
──なるほど、当時レーヨンはフリースみたいな存在だったんですね。デザインでいうとボウリングシャツなんかが象徴的ですが、ああいうスポーツウェアがファッションになるあたりも、フリース同様アメリカ的ですよね
田中 まさにそうですね。50年代には、みんながこぞってボウリングをやっていて、そこら中でトーナメントが開催されていました。そのトーナメント用のユニフォームというのが、ボウリングシャツのはじまりです。でも逆にいうと、ボウリングが大衆のレジャーから消えてしまったこれからは、ボウリングシャツも消えてしまうということなんです。ですから、こういうものもチャンスがあったら、触っておいた方がいいと思います。時代の空気に触れるということだけでなく、シャツ一枚にこれだけ手間暇かけるなんてことは、これから先のアメリカには、もうないでしょうから。