22足目
#22 「ジョンマー」から、アメリカ今と昔
JOHNSTON&MURPHY/1983
これはビーフロール(コインストラップの両端に付いている縫い目)ではないタイプの「ジョンストン&マーフィー」(1880創業)のペニーローファーです。シャンパンゴールドという色が好きで買いましたが、ほとんど履いていませんね。ビームスFで販売していて、買っておかないと‥‥と思った靴です。当時、フレンチアイビースタイルと呼んでいたのは、ブレザーにジーンズかフランネルパンツにローファーのドレスダウンしたプレッピーのことでした。
中学時代、『メンズクラブ』を通じての「TAKE IVY」が僕のバイブルで、TAKE IVYに載っている服がVANで買えなかったのが、ビームスの始まりと言ってもいい。というのも高校のとき、ハワイに住んでいた姉に服を買って送ってもらっていたんですが、明らかにVANのものとは違う。あるとき姉がボストンに行って買ってきたハーバード大学の「Champion」社製のスウェットシャツを見たとき愕然としました。ものすごく良くできていた。素晴らしかった。65年製のChampionとか、まさに60年代のアメリカそのものでした。
でも、そういうのは取られちゃうんですよ。「逗子の重松ってヤツがなんかすごくかっこいいトレーナーを着ているらしいぜ」って、横須賀の悪い奴らが家まで来て脅し取られちゃう(笑)。まぁこっちはこっちでアメリカンスクールの子供を使って米軍キャンプの購買部に靴を買いに行かせたわけですけど(笑)。そんな時代でしたねぇ。
「ジョンマー」はアメリカでは最高峰でしたから、お金持ちしか買えない靴でした。我々は「セバゴ」とか「ボストニアン」とか1万円ぐらい安い靴を買っていました。「ジョンマー」では合衆国200年記念の“バイセンテンニアル・モデル”も持っていたんですが、どこを探してもない。フルハンドでスペードソールで、キュッとトゥが尖っているそれは美しい靴なんですが‥‥。
昨年の11月末に、クロムハーツの正規販売代理店として日本国内各主要都市へのクロムハーツ店舗の出店と運営に関する独占的ライセンス契約を締結するためにロスへ行って、その足で8年ぶりにラスベガスを見てきました。
アメリカでの良い店はすべて個店なので、個で見てしまうとなかなか比較しずらいのですが、ラスベガスはすべてショッピングモールで、主要ブランドが全部入っているので比較しやすい。それで思ったのはアメリカは最悪ということが再認識(笑)できましたね。もの凄い人で、活気はすごいのですが、モノは最悪で、どうして「アバクロ」が売れるのかがよくわかりました。アバクロは、見映えが良くて安い。そして他の大手チェーンブランドは寒気がするほど良くありません。クロムハーツのようなモノづくりしているところは、アメリカにはもうないということを痛感して帰ってきました。
(1983年/2万8000円)