2015 ミラノサローネ 最新リポート|Catellani&Smith
Catellani&Smith|カテラーニ&スミス
ユーロルーチェ国際照明見本市 2015
オーナーデザイナーが語る“光”の未来
Catellani&Smith(カテラーニ&スミス)のプロダクトは、そのフォルムだけではなく、発する光そのものまでデザインされる。照明器具というよりも、まさに光のアートだ。イタリアブランドのなかでも、とりわけ異彩をはなつ同社の魂であり、“光の芸術家”とも称されるオーナーデザイナー、エンゾ・カテラーニ氏の単独インタビューは、光への愛情にあふれるものだった。
Text by YUDA Takeshi(TOL STUDIO INC.)
光の芸術家が生みだした名作たち
ミラノの中心地からクルマで15分ほどの場所にある「Casa della Luce(カーザ デラ ルーチェ)」。イタリア語で“光の家”と名づけられたこの場所は、「カテラーニ&スミス」が長年インスタレーションをおこなってきた光の聖地だ。
今回のインスタレーションは、“過去、現在、未来”を表現。入口には、“過去”の名作や芸術としての作品が展示された。お椀型のシェードのなかに水を流し込み、光を沈めた作品や、大きなランプがミンチ機によって小さな光を生み出すユニークな作品などがカテラーニ&スミスの世界へと誘い込む。
“現在”を表現したスペースには、主力商品が広がり、そのなかに和紙製の照明「Chapeau(シャポー)」が並ぶ。この作品は、エンゾ氏がこよなく愛する日本の作家・イサムノグチに捧げた作品で、彼にたいする敬意から販売はしないそうだ。コカ・コーラからオファーされて制作した「Coca Cola Light」を横目に、さらに上層階へと向かうと、“未来”のフロアへとつながる。
“未来”の展示スペースでは、マイクロLEDを活用し、繊細で神秘的な光の世界があらわれる。美しい陰影が室内に展開され、声を出すこともはばかられるような静寂が包み込んでいた。さらに奥へ進むと、プロトタイプ作品が並ぶ。ここでエンゾ氏に話を聞くことができた。
インド旅行中に出会った、あらたな“光”とは
プロトタイプを前に、エンゾ氏は「光の価値を伝えるために、できるだけシンプルかつ幾何学的に作り上げた」と語った。作品を前にして涙を流す人もいるという、見る者の心に響く光を生み出す源泉はどこにあるのか。「素材と光がどう交わるのか、つねに考えている。アイデアが浮かぶと、すぐにプロトタイプを作ってしまう」と話した。
さまざまな話をうかがうなかで、蛍光灯の話題になると、「大量の明る過ぎる光が、人の手による光の文化を壊してしまった。本来、光は精神性や生体に繊細に影響するものだ。先人たちはそれをよく理解して光と共存していたのに……」と、やや強張った表情で話した。
いっぽうで、今回のインスタレーションの話になると柔和な表情で、「インド旅行中に“リンガム”という石と出会い、その石にLEDの光をあてた瞬間に、言葉にならないほどの美しい光が天井いっぱいに広がった。自然が生み出した素材にテクノロジーの塊のような光が出会い、想像したことのない光が生まれた」と、“未来”を示した作品について教えてくれた。
日本人の光にたいする感性がとても好きだというエンゾ氏。「WA(輪)」という作品もあるほどで、ろうそくと和紙の光から得た和の感性は、現在、そしてこれからの未来への作品づくりにおける思想のひとつになっているのかもしれない。日本でも数多くの彼の作品が見られる日が待ち遠しいかぎりだ。
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