2010 ミラノサローネ 最新リポート|川合将人のミラノサローネそぞろ歩き(2)
DESIGN / FEATURES
2015年4月17日

2010 ミラノサローネ 最新リポート|川合将人のミラノサローネそぞろ歩き(2)

特集|ミラノサローネ国際家具見本市 2010

川合将人のミラノサローネそぞろ歩き (2)

2010年最新ソファ事情

インテリアジャーナリスト&スタイリスト 川合将人がお届けするミラノ・サローネ速報。第2回目となる今回は「2010年最新ソファ事情」と題して、サローネで発表されたソファを(またしても)独断と偏見でセレクト。老舗ブランドから新ブランドまでふくめて、率直に気に入ったもの、よいと思ったものを一挙に紹介する。

写真・文=川合将人

個性豊かなソファが一堂に会した

家族の憩いの場所として機能するリビングルーム。せっかくなら暮らしのスタイルに合ったベストなソファを置きたいものだ。春の訪れとともにインテリアを変えたいひとも多いと思うので、最新版のソファカタログとして眺めてもらいたい。

ソファに限った傾向としては、ファブリック張りのものが主流に感じられた。さまざまな組み合わせが楽しめたり、アシンメトリーなフォルムのものも多く見受けられた気がする。レザー張りのものも、ポイントで発色のよいカラーを使うなどして、よりカジュアルに見せる提案が目立った。

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MAXALTO|マクサルト ソファ“LUTETIA VESTIS”。ベルベットのパイピングがアクセントに用いられている

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Baleri|バレリ 「メゾン マルタン マルジェラ」が発表したソファ。製造はイタリアの「Baleri」が担当している

ファブリック張りのソファでよかったのは、1回目のレポートと重複してしまうが、オランダの「LINTELOO」 のソファ。生地のやわらかな質感と、適度に配されたチェックの柄など、ラフな雰囲気と洗練された部分がうまく組み合わされていて、気兼ねなく使えそうである。さすがはナヴォーネだ。最近日本で見なくなってきたが、「GERVASONI(ジェルヴァゾーニ)」の製品が好きだったので、また展開してほしい気がする。

ほかには、4月29日に都内にもショールームがオープンした「MAXALTO(マクサルト)」からも布でカバーリングした新モデルのソファが発表されていた。形はオーソドックスだが、ベルベット素材をパイピングに使用するなど、ディティールづかいがすばらしかった。

そして印象的だったのは、アシンメトリーなフォルムに布のカバーリングを使った「Maison Martin Margiela(メゾン マルタン マルジェラ)」のデザインによるソファ。異なる椅子を折衷したような形を単色の白いカバーリングとスチール板の構造体でまとめている。

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Cassina|カッシーナ 大御所ガエターノ・ペッシェの新作ソファ“Notturno a New York”

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Meritalia|メリタリア 市内のメリタリアのショールームに置かれたソファ“LA FIORITA”。こちらもペッシェによるデザイン

じつはこのソファに形状が似ていると思ったのが、「cassina(カッシーナ)」から発表された、ガエターノ・ペッシェのソファだ。過去にペッシェがデザインした「Sunset in New York」のアップデート版で、太陽は月に変わり、暗闇のなかにニューヨークのビル郡が浮き上がっているように見える。柄はプリントでなく織りで表現されていて、ざっくりとした質感も心地よかった。

ペッシェは「Meritalia(メリタリア)」からもソファを発表したが、こちらはまた雰囲気が全然ちがう。モップのような新素材を使ったもので、お花のクッションなどと合わせてガーリィな演出を展開していた。

しかし、このデザイン。ペッシェだから許されるのだろうが、誰も知らないデザイナーで、誰も知らないメーカーがひっそりとこれを出したとしたら黙殺率100パーセントな気がするのだが。巨匠系はなんでもありというイタリアっぽさを感じる例のひとつだ。きちんとしたメーカーだから製品として成立しているし説得力もあるので、女性や子どもウケはすこぶる良いと思うが。自分も嫌いではないので、理解ある家庭からの案件があればぜひとも納入してみたい。

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Bokja 市内のRossana Orlandiで展示されていた、Bokjaのソファ

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Cappellini|カッペリーニ 新作。サイドに収納ポケットが付属する、ジャスパー・モリソンのソファ“CAMP”

ガーリィつながりでもうひとつ挙げたいのが、Rossana Orlandiで売っていた「Bokja」のソファ。アンティークの家具にパッチワークのように古い生地を張り込んであるのだが、仕上げもきれいで製品としてもすぐれていた。

最後に紹介するのは、「Cappellini(カッペリーニ)」から発表された、ジャスパー・モリソンのデザインによるものだ。本体構造はメタルフレームとモールドしたポリウレタンからなるもので、簡単に取りはずしができるファブリックのカバーをかぶせてある。

特徴は両アームの側面に設置されたポケットで、本や雑誌などを収納できるようになっているところだ。生地自体の重さから生じる適度なシワの感じや、やや丸みをもたせたフォルムなどと合わせて、非常に好印象だった。硬質な素材のものやエッジのきいた隙のないデザインというのは、いまの気分ではないのかもしれない。とくに斬新さはないが、今年のサローネで見たなかでは強い印象を残したソファである。
いよいよ、次回は最終回。これからの時代を担うであろう注目デザイナーの作品を中心に、2010年のサローネ総論をお届けします!

川合将人のミラノサローネそぞろ歩き(3)"につづく

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川合将人|KAWAI Masato
東京出身のインテリアジャーナリスト&スタイリスト。
雑誌やカタログ、広告、展示などを中心に、
空間のスタイリングやプロデュースをおこなう。
また、豊富な経験をもとに
各メディアで執筆活動も展開している。

           
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