ネイルケアツール「MIMUNO」プロダクトデザイナー・喜多俊之インタビュー(1)
DESIGN / FEATURES
2015年3月13日

ネイルケアツール「MIMUNO」プロダクトデザイナー・喜多俊之インタビュー(1)

新しいネイルケアツール「MIMUNO」に込めたデザインの挑戦

プロダクトデザイナー・喜多俊之インタビュー(1)

カミソリをはじめとしたビューティケアツールの老舗である貝印と、世界的プロダクトデザイナーである喜多俊之さんが手がけた「MIMUNO(ミムーノ)」は、MIM(金属粉末射出成形)という最先端テクノロジーを駆使した有機的かつ精密なデザインと、上質な牛革を使用した贅たくな専用ケースなど、これまでにないラグジュアリーな要素が話題のネイルケアツール。
デザインを手がけた喜多さんに、今回の取り組みについて、そして日本のモノづくりについてお話を聞いた。

文=竹石安宏(シティライツ)Photo by jamandfix

グローバル市場に通用する高級品を――

――まず、今回「MIMUNO(ミムーノ)」のデザインを依頼されたときの感想からお聞かせください。

私自身、ネイルというのは気になってはいましたが、トータルで手入れをしたことはなかったんですね。それで貝印さんからご依頼を受け、さあどうしようかと(笑)。それからよく調べてみると、一般的な関心がとても高いことがわかりました。また、粉末の金属を用いる新しい技術を開発されたということで、とても面白い新しいトライができ、良いモノが生み出せるのではと思ったんです。

――喜多さんにとっても、ネイルケア用品を手がけることははじめてだったんですね。

まったくはじめてのことになります。腕に近いモノでいえは、腕時計をデザインしたことはありましたけどね。

喜多俊之氏

――ネイルケア用品をデザインするにあたって、重点をおいたことはなんでしょうか?
まず安全性という面は基本にありましたが、使っていくうちに愛着のわくモノにしたかったですね。
どこに愛着をもたせるかをもっとも考えたと思います。

――愛着がわくモノとは、すなわち永く使えるプロダクトを目指すということですね。

そうですね。また、今回は世界市場に向けたグローバル製品と聞いていましたので、世界のどこのショップでも通用する高級品をめざしました。世界的に評価を得る新しい日本製品にしたいと思いましたね。

「MIMUNO」ネイルクリッパー(ツメキリ)(革ケース付)

「MIMUNO」ネイルファイル(ツメヤスリ)

デザイナーにとっての新しい挑戦

――では、先ほどお話に出ましたが、今回採用された新技術MIM(金属粉末射出成形/金属粉末を射出成形し、高温で焼き固める技術で高精度の成形が可能)を活かすために、どのようなデザインを心がけられたのでしょうか?

どちらかというとかたいカタチではなく、有機的なやわらかいカタチのほうがいいと思いました。まったくあたらしい技術なので、これまでの既成概念を一端取り去ってからデザインしましたね。
指の当たる部分などが少し膨らんでいたりするのですが、じつは通常の技術でこういった成形を行うのは大変なんです。普通なら板状の材料からつくったりしますからね。MIMだからこそ、このようなちょっとしたアクセントをつけることができたんです。それにツメ研ぎのヤスリ部分や部品の接合部分の細やかな仕上がりも、この技術ならではでしょう。

「MIMUNO」ネイルシザー(ツメキリハサミ)(革ケース付)

――なるほど。複雑な形状などもMIMなら簡単に、しかも高い精度でつくることができるわけですね

そうです。一見複雑なパーツも、この技術なら比較的容易に製造することができますね。

――デザイナーとして、こうした新しい技術と出合うことは刺激になるのではないでしょうか

はい。仕事をしていて楽しかったですね。新しい挑戦ができるというか、いままでやったことのないことができるわけですから。それはメーカーにとってもひとつの挑戦になるだろうし、新しい技術は私たちデザイナーにもそういった気持ちを抱かせますね。

――「MIMUNO」には喜多さんの新しい挑戦が込められているんですね。

そうですね。今回はいままでマーケットになかったものでもあるので、使いやすさはもちろんですが、ちょっとおおげさなくらい立派にしてみたんです。ケースまでデザインしたんですが、これには結構時間がかかりましたね。

ネイルケアツール「MIMUNO」
プロダクトデザイナー・喜多俊之インタビュー(2)
につづく

喜多俊之|KITA Toshiyuki
1969年よりプロダクトデザイナーとして活動をスタートさせ、イタリアをはじめヨーロッパ各国で活躍。家具やインテリア製品から家電、日用品、ロボットにいたるまで幅広いジャンルのデザインを手がけ、数多くのヒットアイテムを生み出す。その作品はニューヨーク近代美術館やパリ国立近代美術館、ミュンヘン近代美術館など世界のミュージアムに所蔵されている。日本の伝統工芸への取り組みをライフワークに、国内地場産業の活性化にも日々尽力している。

喜多俊之 オフィシャルサイト
http://www.toshiyukikita.com/

           
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