建築家・隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る(2)|INTERVIEW
SPECIAL INTERVIEW
建築家・隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る(2)
ゆっくり作って、ゆっくり売れることが一番幸せなこと
建築家の隈研吾氏が中心となって進めている、東北の伝統工芸職人とコラボレーションをおこない日用品を提案するプロジェクト「Ejp(East Japan Project)」。今回、木材や粘土で作られた型に紙を貼り付けて成形していく“張子”の造形技法によって作られる最新作「立ち上がれペン」が発売される。「私たちはコンピュータに囚われてはダメ、職人は自分のやり方に固執していてはダメ」と語る隈研吾氏。前回につづく、インタビュー第2回をお届けする。
Vol.1「建築家、隈研吾が「East Japan Project」と東北の復興を語る」はこちら
Photographs by SUZUKI Shimpei Text by KAJII Makoto (OPENERS)
いびつさが魅力になっていく「立ち上がれペン」
「Ejp(East Japan Project)」の最新作「立ち上がれペン」は、福島県の会津地方に古くから伝わる縁起物・郷土玩具である「起き上がり小法師」と「赤べこ」に発想を得た自立するペン。
「立ち上がれペンは、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウント・フジ アーキテクツスタジオ)主宰の建築家、原田真宏君がデザインし、福島県郡山市西田町の工芸家、橋本彰一さんが形にしたもの。小物デザインが好きな原田君にはこのアイデアは前からあったそうで、3種類ありますが、表情がひとつひとつちがいます。手仕事ならではの精度の悪さ(笑)というか、いびつさが大好きですね」と、隈研吾氏。
「私たちがこのプロジェクトで目指しているのは、日本に最適化した使いやすさとデザイン性をもち、これまでの生活とはちがう、“あたらしい生活”を送ることを可能にする実用品の提案で、ぜひ工業製品ではないものを手にしてほしい」とつづける。
すべてにおいて“ゆっくり”やることが大事
Ejp(East Japan Project)のプロダクトは、「手作りだから、たくさんつくれない」。隈氏は、そこから気がついたことがあるという。
「私たちの日常的な仕事は、急げ急げとせかされて、知らず知らずのうちにそういう時間感覚に慣らされて生活をしている。だが、Ejp(East Japan Project)を通じて、職人はそれではハッピーではないことがわかった。たくさん売れることがいいことではなく、ゆっくり作って、ゆっくり売れることが一番幸せなこと。これは当たり前のことでもあるけれど、私たちは忘れていたことでもある」と。
そして「私たちはコンピュータに囚われてはダメだし、職人は自分のやり方に固執していてはダメというということもわかった。クラフトは生きているモノだから、互いに絶えずあたらしい発見があるべき。このプロジェクトではそういう機会を増やしていきたい」とも語る。
NOSIGNER×宮城県・鳴子温泉のこけし職人のコラボ
たとえば、Ejp(East Japan Project)から生まれた「NARUCO Kokeshi Light」、「NARUCO Kokeshi Bottle Cap」は、気鋭のデザイン事務所NOSIGNERがデザインし、宮城県・鳴子温泉のこけし職人の“ろくろびき”の技術で1点1点手作りされるもの。伝統的な手法に敬意を払いながら、LEDライトやペットボトルキャップとして使われる感覚は、職人の創造力をさらに逞しくするにちがいない。
隈研吾インタビュー第3回は、「なぜ、多くの建築家がさまざまなかたちで被災地の復興支援に取り組んでいるのか」についてうかがう。
East Japan Project
一般社団法人Ejp事務局
隈研吾建築都市設計事務所内
東京都港区南青山2-24-15
青山タワービル12F
Tel. 03-5771-7577
http://e-j-p.org/