中原慎一郎のalso craft 12│盛永省治のつくる木の器
Design
2015年4月13日

中原慎一郎のalso craft 12│盛永省治のつくる木の器

also craft #12 「Crate」

盛永省治のつくる木の器──ターニング・ウッドの世界

日本ではまだまだ“ターニング・ウッド”という分野は知名度が低いのが現状ですが、アメリカやヨーロッパなどでは工芸のなかではしっかりとしたひとつの分野として確立されています。

文=中原慎一郎

木そのものの良さを活かしたターニング・ウッドの世界とは

とくにアメリカではミッドセンチュリーといわれる蜜時期に優れた工芸家がすばらしい作品を生み出していました。
ジェームス・プリスティーニや、ボブ・ストックスデール、デビッド・エルスウォルス、アレクサンドル・ノルなどその当時を象徴するフォルムをつぎつぎと生み出したのです。

日本では“挽き物”と呼ばれるのがそれにあたるのですが、なにかその響きからはひとつの技術にしか聞こえず、その工芸としての良さが理解されづらい感じさえあります。

日本においてはより手間をかけることが評価を受けやすいのもあると思います。
たとえば機械で削ることよりも手で削るとか、漆を塗るとか、磨くとか。もちろんその分野の良さもあるのでしょうが、ここではその良さよりも木そのものの良さを活かしたターニング・ウッドの世界の面白さを紹介したいと思います。

工房兼店舗「Crate」 盛永省治の作品

工房兼店舗「Crate」 盛永省治の作品

Crateの盛永省治のつくる木の器は、まさに前述のターニング・ウッドの世界のものです。
モダンでありながらも木そのものの良さを引き出すこと、そして自身の手の形というか身体からあらわすことのできる形を追いかけ創作しているのです。

限りなく薄く挽かれたもの、厚くどっしりと存在感あるもの、その木の特性からくる良さを判断し手をくわえます。その手のくわえ加減に難しさがあるのです。

木との対話を経て生まれでてくる木の器は、たんに機能として生活に役立つだけではなく、もっと心に豊かさを与えてくれる器として存在してくれるものだと思います。そういう器をつくろうと挑む人間がでてきてくれたことはうれしいことです。

盛永省治|MORINAGA Shoji
1976年生まれ。職業能力開発総合大学校にて工業デザインや彫刻を学び、卒業後、木造の大工を2年ほど経験。その後、「FACTORY1202」(鹿児島)にて7年ほど家具製作に従事する。
2007年、工房兼店舗「Crate」(鹿児島県日置市)を設立。
http://www.crate-furniture.net

           
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