中原慎一郎のalso craft 09│成田博昭氏と語る
Design
2015年4月13日

中原慎一郎のalso craft 09│成田博昭氏と語る

also craft #09 「アーキテクチュラルポテリー」
カリフォルニアモダンデザイン──成田博昭氏と語る

ついにというか近年のガーデニングのブームもあってか、カリフォルニアから「アーキテクチュラルポテリー」を輸入するひとがあらわれてくれた。
日本においてモダンデザインのヴィンテージファニチャーを長年紹介してきたエルモ・ルイスの成田博昭氏だ。

Text by NAKAHARA Shinichiro

まさか「アーキテクチュラルポテリー」を日本で展開するひとがあらわれてくるとは

建築にかんしては近年だいぶ個性的な建物が増えつつあるけれども、ことガーデニング(ないしはランドスケープ)の分野においては、日本ではモダンな解釈のツールや器は皆無に等しかった。
僕もおなじヴィンテージの業界にいたから、この「アーキテクチュラルポテリー」の存在は知っていたが、まさかこれを日本において展開するひとがあらわれてくるとは思わなかった。

ぼくはその復刻されたシリーズを今回の対談まで見たことがなく、楽しみにしていた。
実際に見てみると、ヒース・セラミックスの復刻を目の当りにしたときとおなじ感覚をもてた。つまり復刻されたものが古いものよりもいいと思ったのだ。質感なのか、それとも成田くんの器のしつらえの所為なのかはわからないけど、とにかく新鮮に見えた。
アーキテクチュラルポテリーの歴史はいろいろとあって、さまざまなデザイナーがデザインを提供している。日本の陶磁器メーカーのノリタケとも関係のあったラ・ガルド・タケットもデザインを提供しているし、ポール・マッカブもそう。

今回その作品群が一堂に日本で展開されるということなのだ。対談しながらも自分の発注をしてしまう始末。ちなみにヴィンテージのアーキテクチュラルポテリーは相当な価格になっていて手がでないというのが現状で、なかなか日本ではこれまで紹介されることはなかった。現在のデザイン建築にどのように置かれているのか楽しみである。

成田博昭氏と中原慎一郎氏

もともとはアートスクールのプログラムとして、「Architectual Pottery」は誕生しました(成田博昭)

中原 
成田くんが「アーキテクチュラルポテリー」(Architectual Pottery)を知ったきっかけは?

成田 
2003年にお店(当時、目黒通りにあったインテリアショップ「ローレイダー」)をやっていたときに知りました。
モダン&コンテンポラリーデザインのオークション「wright20」で、MICHAEL BOYD(マイケル・ボイド/モダンファーニチャー界屈指のコレクター)のコレクションをやったときですね。カタログに掲載されていたのがきっかけで。

中原 
アーキテクチュラルポテリーのフォルムは、ミッドセンチュリーを代表するフォルムだよね。いま会社はどこにあるの?

成田 
本社はサンディエゴで、工場はロスにあります。現在の権利はVessel USA Inc.(ベッセル)という会社がもっていて製造・販売しています。
その歴史をひも解いてみると、もともとはアートスクールのプログラムとして、「Architectual Pottery」は誕生しました。デザインからマーケティングまで学生がすべて計画するというプログラムです。デザインといってもメーカーがもっていた植木鉢の型を使って組み合わせたり、といった具合なんですが。それを当時の「ケッペル&グリーン」(アウトドアのメーカー)を通して、一気に広まったんです。

中原 
モダン建築が広まっていく過程のなかで、生活調度品も一世に広まったんだよね。アーキテクチュラルポテリー同様、Heath Ceramics(ヒース・セラミックス/カリフォルニア州サウサリートにある陶器メーカー)もそう。

成田 
そういえばVesselとHeath Ceramicsは仲が良いみたいですね。

中原 
カリフォルニアのデザインは横のつながりが強いからね。

「アーキテクチュラルポテリー」いよいよ日本展開、そのはじまり

成田 
最初、Vesselに連絡して、商品を送ってほしいと伝えたら「送る気はない」と言われて(笑)、直接話せばなんとかなるかなと思ってアポとったら、工場に来てと言われてすぐにいきました。

工場は約300坪の敷地なんですが、そこに3人しかスタッフがいなくて。さらには商品のストックもない状態。オーダーを入れても「窯がいっぱいにならないなら……」と断るほどでした。そうこうしているうちに、うちが「Architectual Pottery」の日本での正規代理店になり、こけら落としのイベントとして※TOTAL展を開催するにいたったんです。

中原 
アーキテクチュラルポテリーは、モダンテイストの建築にガーデンツールとして絶対あうと思うんだ。

成田 
これまでもマイケル・ボイドの家もそうだし、ケーススタディハウスの22番(ピエール・コーニッグ設計によるスタール邸)にもありましたからね。そういえば、変わった使い方として、アメリカではプランターのなかに薪を積んでいる人がいました。

中原 
あと魚を入れて水槽代わりに使っている人もいるよね。それでは最後にこの建築家でアーキテクチュラルポテリーを使ってほしい、という人はいる?

成田 
いますね。荒木信雄さん(アーキタイプ)と谷尻誠さん(サポーズデザインオフィス)ですね。この2人の建築には合うと思いますよ。

中原 
そうだね、あうだろうね。

※TOTAL展は、2009年4月3日から9日まで、品川のエルモルイスギャラリーにて開催。「Architectual Pottery」のプランターに、人気フラワーアーティスト・東信氏がデコレーション。また新進気鋭のアーティスト・佐々木憲介氏による数々のペインティングが展示され、強烈なまでの要素が織り混ざりながらも、不思議な一体感に会場内は包まれた。

成田博昭(エルモルイス 代表)
デザイン、デザインアート、クラフトなどのスペシャリストとして活動を通して、デザインのもつ本来の目的である生活用品としての美しさ、手軽さを追求している。
デザインに関する企画展やライフスタイルのコーディネイト、企業ディレクションなどを主な業務とする。
現在、エルモルイスでは、「Architectual Pottery」の日本正規代理店業務のほかに、店舗、企業、一般ユーザーへ向けたモダングリーンを提案している。

エルモルイス
Tel. 03-6804-1206
http://www.elmo-lewis.com/
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