Committeeが紡ぎだすリヤドロの新しい物語
リヤドロには「新しい形」に挑戦する、クリエイティブな精神と力がある──
Committeeインタビュー
星の数ほどいる若手デザイナーのなかからCommittee(コミッティー)をパートナーに選んだリヤドロ。
その“マリアージュ”が正しかったことは、工房の職人たちのほうが彼らの作品に惚れこんでいるということからもうかがい知れる。
まとめ=武井正樹Photo by Jamandfix撮影協力=CIBONE AOYAMA
フィギュリンという“新しい言語”で紡ぎだす物語
──自分たちの作品と、リヤドロ社とのコラボレーションの根本的な違いはなんでしょうか?
Committeeとしては「自分たちが見たい世界」、「夢にみている世界」を描き、それを見てくださる方が共有できる作品を制作しています。リヤドロ社とのコラボレーションでは、私たち、リヤドロ、お客さまとの三角形の関係を構築する作業が優先されます。
──おふたりにはお客さまは見えていますか? 具体的にこういう人たちに届けたいというのはありますか?
自分たちの作品を違う文化の人たちに理解してもらいたい、というのが私たちの根底にあります。その方たちが私たちにとってお客さまなのかもしれません。
──「フィギュリン」(陶磁器人形)というのは、スペインに限らず、おふたりのご出身であるイギリスでもポピュラーなものですか?
はい。歴史のあるポピュラーなものであったと思います。特に1800年代は廉価なものでしたし、たとえば、時事のニュースを伝えるものとして使用されていました。しかし、過去50年、英国においてはヒッピーやパンクの台頭で伝統を廃棄していくことが加速しました。
いったんは廃れたフィギュリンですが、今では何かを表現する上での、新しい言語になりつつあると思います。
──自分たちの作品の中で「英国的な部分」を感じる点はありますか?
自分たちには見極めが難しいのですが、そういった部分があるはずなんですよ(笑)。逆にお聞きしたいのですが、どう思いますか?
──英国的かどうかはわかりませんが、おふたりの作品は「narrative(物語的)」なものであると思います。
そうですね。今、そうおっしゃったことは、私たちがデザインでなく、アートを学んだことに起因しています。アートはコンセプトがあって、ストーリーがあって成立するもの。それを表現しているのですから。
──今回のコレクションは緻密な作業の賜物ですが、苦心された点やサンプル制作時のエピソードを聞かせてくださいますか?
今回のコレクションはリヤドロで働くクラフトマンとの信頼関係があったからこそ成り立ったと思います。クラフトマンひとりひとりのスキルの高さが、私たちの願望をひとつひとつ叶えてくれました。イギリスの陶磁器メーカーでは、「新しいモノ」といってもカラーチェンジをするくらいがせいぜいです。
しかしリヤドロはチーム一丸となって、「新しい形」にどんどん挑戦するクリエイティブな精神と力を備えています。
──制作時にはリヤドロとの間に「制約」はなかったのですか?
リヤドロ社内には「クリエイティブコミッティー」というのがあり、最終的はそこにデザインが提案されて、意志決定、制作進行がなされます。私たちは出来る限りのクリエイティビティを発揮し、自分本望なデザインをさせていただきました。
──日本のデザインについてはどう思いますか?
純粋な素材そのものを、何ものでもないピュアなものを表現していると思います。日本のデザインは応用ですね。他の国では、「決まったものは決まった使い方」でしかありません。日本の場合はさまざまなところから要素をもってきて、それを実用的なものに昇華し、新しい命を吹き込む。それが日本のデザインだと思います。
──それはときにマイナスの評価をうけることだと思うのですが?
それはネガティブな意見ではありません。デザインとは興味深く、文化を繁栄するものだと思います。他の国に存在しているものを、一生懸命知り、学び、そこから新しい発見を見出し、使えるものにする。それは真実であり、真剣さ以外のなにものでもない。
他国と比べ日本独自なものといえば、ものに対する扱い方だと思います。たとえば伊勢神宮のように千年以上もの歴史ある神社やお寺を分解し、再建立する。このようなものに対する執着とそれを大切にする行為は、ヨーロッパ人には理解しがたいかもしれません。
──それではリサイクルについてはどのように考えていますか?
私たちのケバブランプ(コミッティーの代表作:右写真)は、蚤の市やアンティークマーケットで見つけた、様々なオブジェを使っています。よく環境にやさしいですね、と言われますが、廃棄物処理の解決策という気持ちで使用したわけではない。ひとつひとつのオブジェにはメッセージがあり、その価値を見出しているだけです。
高価なものでも、安価なものでも使っていた人の人生や経験が投影され、形となっている。私たちはそのメッセージを自分たちのアートの一部に使うだけです。リサイクルのソリューションは科学者が考えることであって、私たちにはリサイクルに貢献できる違う道があるんじゃないかと思っています。
──今、世界的に大きな流れとして、スイスのアートバーゼルに代表されるように、デザインとアートの境界線がなくなってきたように思います。今、デザイナーは付加価値をつけた「アートピース」を制作している。このことについてはどのように感じますか?
とても面白いトレンドであると思います。アートにものすごい価値を付加し、私たちの世界とかけ離れた存在にすることを「ギャラリーシステム」と呼んでいますが、私たちはこのシステムを否定する反面、「ギャラリーシステム」に頼ることで、投資を生み出す分、ユニークな作品を作ることができる。
しかし今のデザイン産業は爆発している段階だといえます。どうしようもないものをつくりだしている状況でありながら、一方では新たなアイディアやプロセスも考えだされている。そういう状況下では、デザインが正しい方向へ進んでいかないといけないのですが、デザインに対しての懐疑的な見方や間違った解釈が横行しているのが現実です。
その原因は「市場」の存在であると思います。しかし市場が真実を伝えるようになったときに、バイヤー、お客さんがやっとモノの本質を掴むのではないでしょうか。私たちは現実的な「アートの価値」を持った作品を作っていきたいと考えています。
Committee
コミッティー。ハリー・リチャードソンとクレア・ペイジによるデザイン・ユニット。
ともに1975年に英国で生まれ、リバプールにあるLiverpool School of Art & Designを1998年に卒業後、ロンドンへ。2001年結婚と同時にデザイン・ユニットCommitteeを立ち上げ、家具、照明、テキスタイルなどのインテリアデザインを手掛ける。2005年に発表されたフロア・ランプ、Kebab Lampで一躍有名となった。
LLADRÓ リヤドロ
Tel. 03-3293-0802
http://www.lladro.co.jp/