第8回 ボスコ社のノベルティとヴィンテージの真贋
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2015年3月10日

第8回 ボスコ社のノベルティとヴィンテージの真贋

第8回
ボスコ社のノベルティとヴィンテージの真贋

文=金澤アリアードナPhoto by Jamandfix構成=竹石安宏(シティライツ)

BOSCO ―― チョコシロップの懐かしい甘さ

ボスコはアメリカを代表するチョコレートシロップのブランドです。1928年に全米で売り出され、その甘さで子供たちを虜(とりこ)にしました。大人にもファンが多く、あのアルフレッド・ヒッチコック監督はボスコが大好物だったらしく、1960年の代表作『サイコ』では血のり代わりにも使ったそうです。そんな国民的チョコレートシロップのキャラクターが“ボスコ・ベア”。雪合戦ではアタマに雪玉を食らい、口笛を吹きながらスケートを楽しむその先には割れた氷の穴が待ち受け、スキーをすれば転び、蜂には追いかけられ、玉乗りにも失敗する。ボスコ社がアンカーホッキングに作らせた1940~'50年代のノベルティマグ(rumorsで販売中)やタンブラーに描かれているとおり、子供たちにとってボスコ・ベアはヒーローとして描かれていない分だけ、身近に感じることができる愛すべきクマでした。

ボスコ・ベアの描かれたマグは、ファイヤーキングのマグでは最初期である「フィルビーマグ」に近い形でありながら、このためだけにつくられた金型を使い、ヴィトロックと呼ばれる陶器風ガラスで製造されています。まさに雪のようなヴィトロック独特の質感にブラウンの単色のみで描くという斬新なデザインです。
見ているだけで、口の中にチョコの味が広がっていくような不思議な感覚。温かいミルクにシロップをグルグル混ぜるだけで出来るミルクチョコレート。早くミルクを色づかせたくて、無心にスプーンを動かした子供時代を思い出すようです。そういえば子供のころは、使った絵筆を水の中でグルグル回したりもしていました。なにかを混ぜることには、幸せが詰まっていたのかもしれませんね。

第8回<br>ボスコ社のノベルティとヴィンテージの真贋

そうしたボスコのノベルティグラスには、ボスコ・ベアのほかに前回ご紹介したウォルト・ディズニーの映画『白雪姫』シリーズもありました。同時期に製造されたアンカーホッキング社製のノベルティタンブラーと比べると大雑把な印象を受けますが、コロンとした可愛らしさは、この会社のテーマでもあるように思えてきます。

幻のノベルティアイテム、その真贋やいかに

前回の連載後に「ファイヤーキングのDハンドルマグにも『白雪姫』のマグが存在するのでは? オークションなどで高額で取り引きされているのを見ました」というご質問をいただきました。私の知る限り、ディズニー公認のアンカーホッキング社製ノベルティマグはペプシコーラのミッキーシリーズ、ミニーとミッキーのマグ、プーさんのマグのみです。アメリカのコレクターズブックに掲載されている『ピノキオ』のジミニー・クリケットのマグは、当時オマケとして付属していた“ディカール”と呼ばれるシールが貼ってあります。シールにはほかにバンビなどもあり、写真のみを見て購入すると「あら、シール?」と驚くかもしれません。そういう意味でも、昔のシールをいまファイヤーキングのマグに貼って、高額で販売している場合があることも事実です。

ここ数年のネット上でのヴィンテージグラスウェア販売で問題なのは、そうした本物であるか否かという、手にしなければ分からないことをどう見極めるかに尽きるのではないでしょうか。古いモノの収集は、グラスウェアに関わらず知識があっても失敗することがあります。そうならないためには、自分が信頼できると思ったお店で購入するのが、やはり一番なのではないのでしょうか。とくに初期に製造されたファイヤーキングには、刻印がないものもあります。刻印がないから偽物とも言い切れず、反対に刻印があるアドマグのなかにも現在絵柄をプリントされたものがあったりと、判別はとても難しいです。
rumors内の「キッチュイン」の商品にそうした間違えがあってはいけないと、私も日々勉強を続けていますので、安心してお買い物をしていただければと思っております。

ヴィンテージアメリカングラスウェア

           
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