スペイン、ヴァレンシアの名陶「リヤドロ」の革新
スペイン・ヴァレンシアの名陶「リヤドロ」の革新
オウプナーズではクリエイティブ・ディレクター、ハイメ・アジョンによるコンテンポラリーな作品群「Re-Deco」についてはすでに触れた。
そして今回はクリエイションの側からでなく、ブランドを動かす立場の若き後継者に、ここのところ相次いでいる革新的な試みについて話を聞いてみた。
Text by OPENERSPhoto by Jamandfix
ブランドのDNAに基づきながら、いかに「再生」するか
「Re-DecoもRe-Cyclosも、リヤドロの歴史にエボリューションを起こす――ブランドを革新する取り組みでした。
著名なアーティストとコラボレーションした結果として、リヤドロのDNA、エッセンスを振り返ることになったのですが、彼ら外部のクリエイターはそのDNAをきっちり理解してくれたうえで、新しいクリエイションを生み出してくれました」
リヤドロ創業ファミリーの第二世代で、マネージメント担当のエグゼクティブ、ダビッド・リヤドロは語る。
「Re-Cyclosは断片的なフラグメンツをまったく別な形態に再構成するプロジェクトです。それらはホームデコールやアクセサリーとして、機能美をもつ存在に生まれ変わっています。
リヤドロのプロダクトのなかにずっと存在してきたものの一部分を使いながら、新たなコンビネーションの作品となっています」
たとえば、蝶の羽を持つよう精が無数に集うシャンデリアは、デザイン面がコンテンポラリーというだけでなく、光ファイバーを用いたことでポーセリンのオーナメント自体が発光しているように見える。
今もヴァレンシアにこだわり続けて
「一方のRe-Decoは過去のベストセラー作品を、単純に振り返るのではなく、コンテンポラリーに、シックによみがえらせたコレクションです」
カタチはそのままに、シルバーの彩色が本来のそれをなぞるようにランダムに施されたアイテムは、従来のリアルな再現性を離れ、新たにモダンな佇まいを獲得している。
ダビッドをはじめとしてリヤドロ・ファミリーは、いまなおスペインのヴァレンシアに住んでいる。
「ヴァレンシアという街は太古から陶磁にまつわる長い歴史をもつ街でした。このスペイン第三の都市には、いまなお陶磁について学ぶ学校が多数あります。
私が住んでいるのは18世紀後半に建てられたものをリファービッシュした家で、天井が高くドアの上部にはまるでオーナメントのようなガラス装飾が入っています。スパニッシュ・バロックとモデルニスモの影響が残る家に、コンテンポラリーな家具を入れて、クラシックとモダンを融合させています。
リヤドロの作品ではパンダや大壷を飾っていますが、なかでもいちばん気に入っているのがサムライですね。デザインもそうですがそのコンセプトが気に入っているのです」
世界じゅうを駆けまわる彼の、リヤドロでの役割はどのようなものなのか。
「私たち第二世代は皆が役員なのですが、私はマネージメント戦略を担当しています。制作に携わる側にまわりたい、と思ったことがないといえばウソになりますが、クリエイティブは何もデザインだけではありません。
たとえば、私が関わっているマネージメントの仕事のように、ポーセリンという素材を使って何ができるのかという、その可能性を広げる業務も、十分クリエイティブなのです」
Re-CyclosやRe-Decoといった新たな方向性は、彼ら第二世代がリヤドロを動かしはじめたからこそ実現した企画だろう。そしてさらなる新製品として発表されたのが、リヤドロ初のルームフレグランスである。
いくつかのパーツに別れたアイテムを、それぞれ自由に組み合わせてオリジナルのフォルムを楽しむことが可能で、なかでもキャンドルはうつわに鼻がついており、思わずクスリとさせられる。
香調は全部で6種類。
「東洋の夢」や「アフリカの鼓動」などは、世界中のエスニックモティーフを扱う彼らのポーセリンそのものである。
最後に、リヤドロを3つの言葉で表現してもらった。
「それは何といってもPurity(清浄さ)、Preciousness(貴重さ)、Serenity(晴朗さ)ですね」