連載・Yoko Ueno Lewis|暮らしノート・第2回 「パンプキンオレンジの街」
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2015年3月12日

連載・Yoko Ueno Lewis|暮らしノート・第2回 「パンプキンオレンジの街」

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暮らしノート 第2回 「パンプキンオレンジの街」

サンフランシスコからゴールデンゲイトブリッジを渡りきると、別荘や高級住宅地で知られるマリン・カウンティに入ります。プライベートなヨットハーバーも多く、静かな海岸とレッドウッドの森に挟まれた美しい町並みがつづきます。このあたりから少し山側に入ったところに、ミルバレー(Mill Valley)という小さな山間(やまあい)の街があります。

写真と文=Yoko Ueno Lewis(Oct. 2010)


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まるでペイントしたような鮮やかな縞模様のパンプキンが告げる秋

ミルバレーには、詩人や作家、アーティストや引退した知識人がたくさん住んでいて、独特の雰囲気を醸し出しています。澄みわたった青空を突くレッドウッドの大木がつくる木漏れ日の街も、ハロウィンのパンプキンオレンジに彩られ、すっかり秋を迎えていました。

Yoko Ueno Lewis|土佐龍 06

レッドウッドの木陰の通り

この時期にはインディアンサマーと呼ぶ乾いた晴天がつづき、日中は30度近くになりますが、湿気が非常に少ないうえ、秋特有の角度の浅い強い光に溢れ、木漏れ日のコントラストが増すとても魅力ある季節となります。10月31日のハロウィンが過ぎると、夏時間(デイライト・セイビングタイム)も終わりを告げ、時計を1時間遅らせると、めっきり日が暮れるのが早くなったと感じます。まるでペイントしたような鮮やかな縞模様のパンプキン……秋の日差しに映えて、深まりゆく秋と同時に一年が後半を迎えていることをそれとなく教えてくれます。

冬を前にして、気持ちを豊かにしてくれるオレンジ

オレンジというとアメリカではパンプキン。日本では柿の実やカラスノマクワウリの色ですね。どちらも深まりゆく秋の風情を鮮やかに喚起する象徴的な色だと思います。私が学生のころはオレンジとターコイズブルーは工業デザインの色と言われていました。オレンジはこれほどまでに秋色モードでも、なかなか難しい色だったのです。

Yoko Ueno Lewis|土佐龍 10

自然にあっても、工業製品にあっても、強いイメージで迫ってくるオレンジ、夏の疲れのだるさを引き締め、実りに感謝し、間もなくやってくる冬を前にして、いっとき、気持ちを豊かにしてくれるオレンジ。東京のスーパーモダニズムにも、このミルバレーのパンプキンのインダストリアルオレンジも微妙にシュールに似合うと思いますが、どうでしょうか? シュールといえば、草間彌生さんの直島のパンプキンの写真もどうぞ。

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