連載・マシュー・ワォルドマン|Vol.24 「Beijing Trip」
Vol.24 「Beijing Trip!」
最近、2度目の北京へ行ってきました。聞いていたよりも、実際に体験すると、光化学スモッグはとても酷い状況です。それはさておき、北京はとてもおもしろい都市です。僕の浅い経験からしても、お金やファッション以外の文化にも興味のある中国人は、上海でもなく、香港でもなく、北京に住んでいます。そのことだけでも、とても国際的な都市なんだと思います。今回、僕はただの北京の旅行ガイドを書くつもりはないのですが、まだ北京へ行ったことのない読者の皆さんのために、いくつかのポイントには触れておきましょう。
文=マシュー・ワォルドマン
<広さ>
北京は広い! 本当に広いのか、もしかしたら渋滞と都市計画のせいで、広く感じるだけのことかもしれませんけど……。
地下鉄はありますが、電車が通ってない地域があるので、ほとんどの外国人はタクシーで街中を移動します。3回ぐらい地下鉄に乗りましたが、僕のような外国人はただのひとりも見ることがなかったです。
タクシーは日本と比べたら安いですが、夜遅くなると捕まえにくいので気をつけてください。地下鉄は22時30分ぐらいにはストップしてしまいます! 治安はそれほど悪そうではないから、歩けないことはありませんが、道で信号と信号のあいだはなんと最低でも1キロもあるそう……。
<食べもの>
東京と比較するのは、さすがに申し訳ないですが、北京の食は正直なところおいしいとは思えません。もちろん有名な北京ダックのお店に行けばなかなかのものですが、あまり食事には期待しないほうがいいと思います。
ただ、考えてみるとはじめてニューヨークに来るひとも、食べものはおいしくない街と思いがちですし……。やっぱり大都市を理解するまでにはいくらかの時間と知識が必要なのかもしれません。
確率としておいしいものにありつけるのは雲南料理。いま、ロスとニューヨークではタイ料理が人気で、レストランも多いように、北京でおなじようなトレンドは? といえば、雲南料理なのです。僕の経験では、雲南料理のレストランなら、野菜などの食材がフレッシュでおいしい! そして百貨店の食品売場にもおいしい食材があります。
<空気>
喘息のひとや、喉の弱い方は、絶対に北京へ行かないほうがいいです。日中はほとんど光化学スモッグと煙の影響で、直接日の光を見ることはほとんどできません。咳こむほどでもありませんが、身体的にはどこか疲れやすい気もします。短期間の滞在だったら全然平気だと思いますが。僕の子どものころのニューヨークもおなじような状況だった時期があるし、バブルのときの東京も光化学スモッグで僕はずっと気管支炎だったので、そのうちに北京もよくならないと困りますよね。
<798>
僕が北京で一番好きな場所は。「798」というアート村です。
1951年ごろ、ソビエトと中国が共同でつくった工場地域を、ギャラリーやカフェ、ショップ、美術館などが立ちならぶ地域として甦らせた場所です。洋食なら「at cafe」はおいしいし、また、菜食主義者向けの 「素食」というお店もあります。「UCCA Ullens Center for Contemporary Art」は良い美術館で、国外と国内のアーティストによるインスタレーションにくわえ、中国のデザイナーグッズショップもあります。そして「LONG MARCH SPACE(長征空間)」はとても良いギャラリーです。
<アーティスト>
僕がもっとも好きな中国人アーティストは、3人組メンバーの「Unmask Group」です。2年前に「798」でおこなわれた彼らの展示会の作品である、キメラをテーマにした彫刻を見て、感動したのを覚えています。
作品はとても高額で、そのときは何も買えませんでしたが、ギャラリーのオーナーに彼らの連絡先を聞いたら、大変珍しく親切なことに連絡先を教えてくれました。その後、彼らとメールのやり取りをして親しくなり、じつは彼らはアート作品だけではなく、デザイングッズもつくっていることがわかり、基本的には彼らはNookaとおなじ哲学のもとで活動していると思えました。そこで昨年の秋に、香港で開催された「NookaNooka Custom Show」にも参加してもらい、「Unmask Group X Nooka」として、キメラの素晴らしい作品を彼らは出展してくれました。
そして今回、2011年10月に、はじめて直接彼らに会うことができました! Juang Junさんと、PRディレクターのJiang Jianさんと、前述した「at cafe」で食事をしながら、アート、デザイン、そしてビジネスとが交差する、曖昧なバランスにかんしてひと通り話してから、クルマで彼らのスタジオへと行きました。