ROLLS-ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE|重厚さと、軽快な雰囲気
ROLLS-ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE
ロールス・ロイス ファントム ドロップヘッドクーペ
重厚さと、軽快な雰囲気
ブランド開始から100年目の2004年、ロールス・ロイスは“100EX”なるスタディモデルを発表した。ドロップヘッドクーペ、すなわち、2ドアコンバーチブルの100EXに対し、その市販化を望む声が上がり、これに応えるべく、同社は2007年のデトロイトショーで量産型の「ファントム ドロップヘッドクーペ」を披露、新生ロールス・ロイスとしては2番目のモデルとなった。
「ファントム」のサルーンがベースとなるものの、ボディパネルはすべて専用にデザインすることで、ファントム ドロップヘッドクーペは新しい個性を手に入れた。サイズも全長と全高がそれぞれ220mmと75mm小さくなり、よりパーソナルな雰囲気を強めている。
特徴的なのが、後ろ側にヒンジのある“コーチドア”の採用で、前席はもとより、後席の乗り降りを便利にしている。それと同時に、Aピラーの一体成形が可能なることから、オープン化により低下しがちなボディ剛性を高めることができたという。
チーク材を用いたリアフードカバーやブラシ仕上げのボンネットも、このクルマならではの演出である。開けるとベンチ状になるトランクも遊び心をくすぐるデザインだ。セダンの重厚さとは対照的に、軽快な雰囲気を持つファントム ドロップヘッドクーペには、ロールス・ロイスの新たな魅力が溢れている。
ロールス・ロイス ファントム ドロップヘッドクーペ
ボディ|全長5605×全幅1990×全高1580mm
エンジン|6.75リッターV型12気筒
最高出力|338kW[460ps]/5350rpm
最大トルク|720Nm[73.5kgm]/3500rpm
駆動方式|FR
トランスミッション|6段オートマチック
価格|5323万5000円
(2008年5月26日現在)
BRAND HISTORY
ヘンリー・ロイスとチャールズ・ロールスが初めて会ったのは1904年のこと。イギリスでモーターなどを手がけていたロイス社が、新しいビジネスとして自動車を試作したところ、評判を聞きつけたロールスがこのクルマを試乗に訪れる。その仕上がりの良さに感銘を受けたロールスが、ロイスがつくるクルマの販売を申し入れたのがロールス・ロイスのスタートになった。
高級車ブランドとしてその名を知らしめたのは、1906年に生産を開始した「40/50HPシリーズ」。6気筒エンジンを搭載したこのモデルは、後に「シルバー・ゴースト」と呼ばれるのだが、そのエンジンの滑らかさや静粛性、クルマとしての高い信頼性、そして、質の高い素材による仕立の良さから、上流階級から大きな支持を得ることとなった。ロールス・ロイスのマスコットとして知られる“スピリット・オブ・エクスタシー”が生まれたのもこの時代だった。
その後、1929年には「ファントム」を世に送り出し、1931年には同じイギリスのベントレーを買収するなど順調な歩みを進めた同社。第二次世界大戦中は航空機エンジンなどに専念する時期もあったが、1947年から自動車の生産を再開。ファントムシリーズをはじめ、「シルバークラウド」「シルバーシャドウ」といった名車をつくりだしていく。しかし、1971年に航空機エンジン部門の不振から会社が倒産。この際、航空機エンジン部門は切り離され、残された自動車部門は一時政府の管理下へ。そして1980年にはヴィッカーズ社の傘下となった。
さらに1990年代後半にはフォルクスワーゲン(VW)とBMWによる買収劇が巻き起こる。混乱の末、工場とベントレーのブランドはVWの手に渡り、一方、BMWはロールス・ロイスの名前だけを手に入れる。そして2003年、新体制のもとで開発が進められてきたファントムにより、ロールス・ロイスは新しい歴史を踏み出すことになった。