東レ|先端素材でできた、次世代電気自動車
TORAY|東レ
先端素材でできた、次世代電気自動車を試作
東レは、炭素繊維複合材をはじめとする先端材料や先端技術を駆使した、次世代型のEV(電気自動車)コンセプトカー「 “TEEWAVE”AR1」(Toray Eco Efficient Wave Advanced Roadster 1)を発表した。
Text by OPENERS
大幅な軽量化と高い安全性を両立
このコンセプトカーは、東レグループが取り組む自動車用途向けのグリーンイノベーション戦略の柱となるプロジェクト。同社がもつ最先端素材の技術を、今後自動車のスタンダードとして普及が見込まれる電気自動車へ活かすことで、低炭素化社会を目指すというものだ。
車体の基本構造には、軽量かつ高剛性な炭素繊維複合材による一体成形モノコックを採用。自動車にとっては相反する要件である軽量化と、優れた車体剛性(そして高い衝突安全性)を両立させたのが特徴である。
東レは同プロジェクトに3億円を投じ、車両の意匠デザインや構造設計、製作は、ゴードン・マレー氏が代表を務め、英国で環境対応タウンカーの企画・設計を担当する企業「Gordon Murray Design Ltd.」に依頼。ゴードン・マレー氏 といえば、数かずの名F1マシーンを設計した天才エンジニアとして知られるカーボンモノコックのスペシャリストで、東レのこのプロジェクトにかける意気込みがうかがえる。ちなみに東レでは、同プロジェクトの狙いについて、炭素繊維複合材で、軽量化や安全性について、実際にどれだけ優れたクルマを具現できるかの実証実験だとしている。
車重は約2/3に、CO2排出量は約9%削減
今回の2シータオープンモデルをベースに4シーター乗用車の性能を試算した場合、現在市販されている従来素材・構造からなる4シーターEVとの比較では、車体重量が1520kgから975kgと約2/3に軽量化でき、CO2排出量は14.9t が13.6tと約9パーセント低減可能になったという。
今回、炭素繊維複合材で製作されたモノコックは、単体で車体構造として必要な剛性を確保しており、わずかな寸法変更だけで4シーターハッチバックなど他モデルへの応用も可能とのこと。つまり、一般的な乗用車への展開も視野に入れているということだ。レーシングカーや一部のスーパーカーのみにしか採用されてこなかった炭素繊維複合材が普及すれば、環境性能や安全性において、自動車に革命的な進化がもたらされるかもしれない。もちろん炭素繊維複合材は通常のスチールとくらべて高価なため、コスト面での課題が残るが、量産効果や、一体成形ができることでの生産面での効率化も期待されている。
今後、さらなるエネルギーの効率化が求められる自動車業界で、ますます必要性が高まっている最先端素材の技術。東レは2015年をめどに、自動車業界への本格供給を目指していきたいとしている。
“TEEWAVE”AR1
車体サイズ|3975x 1766 x 1154mm
車体重量|846kg
航続距離|185km
最高速度|147km/h