NISSAN LEAF|日産 リーフ 第5回
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

NISSAN LEAF|日産 リーフ 第5回

NISSAN LEAF|日産 リーフ

日産リーフを導入! 番外編

EVを巡る、沖縄のいまとこれから

民間による充電インフラ整備を手がかりに、EVの普及を図り、スマートグリッド社会を見据えたスマートアイランド実現へ躍進する沖縄。その現状を周知させるべく、日産はリーフの試乗会を彼の地で開催した。今回は、リーフ長期リポートの番外編として、EVを巡る、沖縄のいまとこれからをリポートする。

Text by YAMAGUCHI Koichi(OPENERS)
Photographs by KAWANO Atsuki

EVの普及に適した地

紺青に澄んだ海を背景に、潮風に吹かれながら日産リーフを撮影していると、額にジワりと汗が浮かび上がってきた。メーターパネルを覗き込むと、外気温計は25℃を示している。東京が寒波で震え上がっていた2月中旬のある日、筆者は日産が沖縄を舞台に開催したリーフの試乗会に参加していた。

「電気自動車が充電してるー」。撮影を終え、コンビニエンスストアに設置された急速充電施設でリーフを充電していると、通りがかりの小学生男子3人組が嬉々として駆け寄って来た。目新しいものに目がないのが子どものつねだが、彼らにとって、シュイーンとモーターの回転音をかすかに聞かせながら走り去るリーフは、未来の世界をイメージさせてくれる、尽きない好奇心の対象なのだろう。

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そんなリーフをはじめとするEVが、沖縄のひとたちの一般的な足となる日が、すぐそこにまで来ている。いや、そんな日を一日も早く実現させるためのプロジェクトが、現在、進行中なのだそうだ。沖縄EVタウン構想である。

「そもそも沖縄はEVの普及に適した地なんです」。試乗に先立って行なわれたプレゼンテーションで、日産の広報担当者はそう語った。なぜか――それには南北に約130km、東西に約30kmという地理的な要因が大きい。EVのウィークポイントである航続距離がシビアに問われずに済むうえ、最小限の投資でインフラ整備が可能だからだ。また、充電設備を南北に走る主要幹線道路沿いに効率的に配置できるというメリットもある。実際、沖縄ではすでに高速道路のサービスエリア(SA)や道の駅、そしてコンビニエンスストアなど交通の要所となる18カ所に27台の急速充電器が設置済みで、普通充電設備についてもホテルや観光スポットなどにバランスよく配置されているのだそうだ。

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日産リーフを導入! 番外編

EVを巡る、沖縄のいまとこれから(2)

EV普及の尖兵となるレンタカー

そんな彼の地でEV普及の尖兵となるのが、レンタカーだ。言うまでもなく、沖縄は国内屈指のリゾート地である。年間の観光客は600万人。その半数がレンタカーを利用する。つまりレンタカーにリーフを導入することが、ユーザーにEVを体験してもらう絶好の機会となり、ひいてはEVの全国的な波及効果に資するとの判断から、日産では同県へのEVレンタカーの導入を積極的にサポート。県下のレンタカー全体の約1%にあたる220台のリーフを納車したのだそうだ。

しかし沖縄にEVが普及しても、それがレンタカーであるかぎり、本当の意味での“普及”とは言えない。いかにして 地域住民の足として受け入れてもらうか――

「一般的にレンタカーは3年サイクルで入れ替えられます。すると、レンタカーとしての役目を終えたEVが毎年継続的に中古車市場にこなれた価格で供給されることになります。沖縄県の中古車マーケットの規模は90万台なので、充電インフラの整備を進めることでEVの需要を創出することがEV普及のスキームになります」

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そう語るのは、沖縄県内の充電施設の設置/運営をおこなう株式会社AEC(Advanced Energy Company)の松本宗久氏だ。同社は、県内の関連企業10社をはじめ、自動車メーカーからITソリューション企業、商社まで計26社が資本参加して2010年に立ち上げられた。いわば、沖縄EVタウン構想の牽引役だ。

松本氏によると、「沖縄型EV普及モデル」と題された同社の事業計画において、EVレンタカーを利用する観光客向けインフラ整備として、高速道路SAや観光スポットを中心に急速充電施設を50基程度設置するのが第1フェーズとなる。さらに第2フェーズとして、中古EVを入手した住民へのユーザビリティを見据え、3年から4年後をめどに合計100基程度まで増やしていくとのこと。

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日産リーフを導入! 番外編

EVを巡る、沖縄のいまとこれから(3)

充電時間の使い方

今回の試乗会場となったのは「カヌチャベイリゾート」。名護市の東岸に面したリゾートホテルだ。パームツリーが整然と並ぶ駐車場には、16口の普通充電設備が備えられている。他のリゾートホテルでは2口程度が一般的なため、ここはEVレンタカーの迎え入れ体制が圧倒的に整ったホテルなのだ。

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試乗では、カヌチャベリリゾートをベースに2日間で254.9kmを走った。その間、ホテル滞在中の普通充電と、急速充電が2回。1日目はコンビニエンスストア、2日目は沖縄自動車道伊芸SAの急速充電施設を利用した。コンビニでは、飲み物やらおやつやらを調達し、雑誌を立ち読みしているうちに完了した。サービスエリアでは、眼前の絶景にiPhoneのレンズを向け、旅の記憶を焼き付けているうちに済んでいた。急速充電の30分間を、たんに待つためだけに費やすのではなく、べつのなにかのための時間に組み込む。それだけで、EVの使い勝手は大幅に変わってくる。今回、沖縄で試乗して、あらためてそれを実感した。

伊芸SAで充電したときのこと。旅行者とおぼしき若いファミリーに出くわした。パパがまだ小さな子どもをあやし、リーフへの充電はママ。セルフサービスのガソリンスタンドでは見られない光景だとおもった。なんだかハッピーな空気が横溢していた。一方こちらといえば、首にストールならぬ手ぬぐいをまいた短パン姿のKカメラマン(40代男性)との2人ドライブ――。「僕らはバカンスではなく、あくまで仕事中なんです」。充電を終えたママと目があった瞬間、苦笑いしながら心の中でそうつぶやいていた。

2日間を通してなによりも印象に残ったのが、いつでも手の届く範囲に急速充電器があるという安心感だ。インストゥルメントパネルのモニターで急速充電施設を検索すると、おおむね航続可能距離内に存在していることがわかる。1日目のホテルへの帰路、カーナビに表示される目的地までの距離が航続距離を上回ったが、へっちゃらだった。いざとなれば、充電施設は近くにあるのだ。

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日産リーフを導入! 番外編

EVを巡る、沖縄のいまとこれから(4)

スマートアイランド 沖縄

短い試乗だったが、沖縄がEVユーザーに優しいところだと気づかされることもいくつかあった。たとえば沖縄自動車道SAの充電施設は、いずれも2台分が設置され、順番を待つ車両用の待機スペースまで用意されている。屋根も備えられており、雨天の充電作業でも雨に濡れなくて済む。充電施設の位置もショップやレストランの近くだから、充電しているあいだに買い物やお茶、なんてこともスムーズ。充電スペースへの案内標識も万全だ。ぜひ、NEXCO中日本にも見習っていただきたい。

2日目の朝、撮影ポイントを求めて、透き通った海を貫く長い橋を走った。本島北部の古宇利島と屋我地島を結ぶ沖縄県最長の橋、古宇利大橋だ。橋梁の頂点にさしかかると、ブルーの空が澄んだ海に溶け込む絶景が車窓に広がった。おもわずリーフの窓を全開にすると、乾いた風が波のさざめきを車内に運んできた。風と波が奏でる心地よい音色にしばし耳を傾けた。陳腐な表現だが、自然の懐に優しくつつまれている感じがした。普段、エンジン音を轟かせてクルマを走らせている時にはない感覚だった。充電用の電気がどんな方法でつくられているか、という問題はさておくとして、沖縄のすばらしい環境にEVはぴったりだとおもった。

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「私たちがEV普及を推進しているのは、必ずしも環境のためだけではありません。EVはいわば走る蓄電池であり、それが増えることで、低コストでスマートグリッド社会を構築できるのです」

前述のAEC松本宗久氏は、プレスカンファレンスの席で我われにそう強調した。エネルギー問題を見据え、風土を守りながら、地域経済を盛り上げるのが狙いだと。これは、スマートグリッド社会のメリットとして一般的に語られることだ。このすばらしいスキームが、絵に描いた餅になるか否かは、行政や企業のみならず、私たち生活者ひとりひとりの意識によるところも大きい。コンビニで出くわした小学生が免許をとり、EVのステアリングを握るころ、世界が範をとるスマートアイランドに沖縄がなっていたら、すばらしいな。そんなことをおもいながら、地上の楽園から極寒の東京へと帰路についた。

           
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