日産リーフの長期リポート企画第4弾!
NISSAN LEAF|日産 リーフ
日産リーフを導入! 第4回
リーフで巡る三浦半島13時間の旅
日産リーフの長期リポート企画第4弾。小誌編集部の”楽しい仲間たち”とさまざまなドラマを生み出してきたこのクルマともそろそろお別れの予感。そこで今回は少し趣向を変えて、クルマのことをまったく知らない編集部の女史3人が、初めての電気自動車(EV)に乗って体験リポートを敢行! 神奈川県の三浦半島を巡る約13時間(!)の旅。さて、今回はどんなドラマが生まれることやら……。
Text by TANAKA Junko(OPENERS)
全員がリーフ初体験! その乗り心地やいかに
2月某日。前日、東京では今年2度目の雪が観測されたばかり。積もり具合によっては、決行が危ぶまれる可能性もある。当日の天気やいかに。すると驚くほどの快晴。ここしばらく見なかった清々しい青空が一面に広がっている。これはなんとも幸先のいい滑り出し。飲み物やら車中の宴会グッズを用意したら、出発進行!
さて、ここでリーフに試乗した編集部のメンバーを紹介しよう。運転席で華麗に舵を取るのは運転歴約30年という40代のBだ。職場では主に経理を担当しているためか、数値には敏感。バッテリーの出力・回生具合を示すパワーメーターを常に左から3目盛りまでにキープ。「できるだけバッテリーを持たせるために(パワーメーターは)3目盛りぐらいまでに押さえておくといいよ」と、小誌の中で一番リーフを極めているクルマ担当のSから教わったことを最後まで守り通すとは、さすがの一言。ただし、自他ともに認める“ビビリ”ゆえ、常にバッテリーの減り具合を確認しながらドライブするリーフとの相性は今ひとつか。ドライブを進めるうちBの心境がどのように変化するのか、今回はそこにも注目してリポートをお届けしたい。
女性だけの気ままなドライブ。気まますぎるあまり、いや失礼、リーフの乗り心地の良さに、後方席で思わず眠りについていたのは30代のS。何を隠そう、免許を取って以来一度もハンドルを握ったことがない生粋の“ペーパードライバー”だ。宴会マドンナの名に恥じないしゃべりと笑いで車内を大いに盛り上げてくれた。また、超がつくほどしっかりもののSは、節穴だらけの筆者に代わって、道中・訪問先で私たちを引っ張っていってくれた。この場を借りてお礼を言わせていただきたい。助手席を温めていたのは私、免許を持ったことのない20代の筆者。クルマのことはまったく分からないが、フロントガラスから景色を眺めるのがお気に入り。小誌では主にSHIFT JAPAN!を担当している。まだ上京して数週間のため、ところどころ観光名所に過剰反応しすぎの節があるが、どうか温かく見守っていただきたい。
午前9時、航続距離120キロからのスタート
では、気を取り直して本題へ入ろう。時刻は午前9時過ぎ。編集部がある錦糸町の駐車場を出て、早速三浦半島に向けて出発した。と、ここでB。エンジン音がまったく聞こえない静かな走りに歓声を上げている。ハンドルも軽く、加速がスムーズなので、運転は非常に楽とのこと。「街中を走るためのセカンドカーとして持つのにいいかもね」とは、普段ミニバンを運転しているBの談。
首都高の錦糸町入口付近で捕まった渋滞を抜けた後、平均60~70km/hのスピードを保ったまま首都高をどんどん進んでいくと、左手にお台場が見えてきた。いやおうにも筆者のテンションは上がる。レインボーブリッジを渡ると、今度は羽田空港が目の前に。そんな一つひとつに身を乗り出している私たち、いや筆者の姿をよそに、リーフは相変わらず高級車のごとく静かでスムーズな走りをつづけながら、湾岸線で差し掛かった神奈川との県境もスイスイと通り抜けていく。ここでBの“萌え”スポット、工業地帯に差しかかった。まるで映画のセットのような一帯を横目に進むと、まもなく最初の目的地、そして最初の充電ポイントでもある『大黒ふ頭パーキングエリア』に到着だ。
午前10時、航続距離残り94キロで最初の充電ポイントへ
「いざ充電を」と駐車場にあるはずの充電ポイントを探すが、どこにも見当たらない。ぐるぐると駐車場を一周してようやく見つけたのは、駐車場の中でも一番端、周りに案内板も何もない急速充電器だった。これは分かりづらい。現状では、EVの利用者が少ないという“言い訳”が通用するのかもしれないが、ここはもう少し改善をお願いしたい。
繰り返しになるが、EV初体験の3人。乗るのも初めてなら、充電するのももちろん初めて。ここが今日一つ目の難関ポイントになるかと思いきや、実際にはじめてみるとその方法はいたって簡単。充電器のタッチパネルに出てくる指示通りにノズル形式の急速充電コネクタを差し込んで、スタートボタンを押すだけ。ガソリン車の給油のようにガソリンがこぼれてないか、手が汚れないか心配することもないし、あのいやーなガソリン独特の臭いもない。これは、男女問わず、クルマに乗るひとなら誰でもうれしいところではないだろうか。さらに、現在のところ、ディーラー以外のこうした公共施設にある充電器での充電は、ほとんどの場合、無料だということも付け加えておこう。
順調に充電をつづけていると、お隣にもう一台銀色のリーフがやってきた。見ると「日産レンタカー」の文字が。千葉在住という30代のカップルは、リーフを1日5000円で借りられるという破格のキャンペーン価格にひかれ、今回初めてEVに乗ってみたのだという。下調べはすでにばっちりのようで、幕張のレンタカーショップを出発し、ここの大黒ふ頭と藤沢市役所の2カ所でバッテリーを充電した後、江ノ島を目指すのだそう。
時間をつぶすにも、ここは駐車場の端。後ろに誰かを待たせていては、近くの公園に軽く散歩というわけにはいかない状況に。せっかくなので、ここでBに聞き取り調査を行うことにした。「ぶっちゃけリーフの印象はいかがですか」という問いに対し、Bは「アクセルを踏んだときのガツンやグワーっというの(注:急発車して揺り動かされる感じ)がなくスースー(なめらかに)動く。とくに100km/h以上出してみるとそれがよく分かる。これだとストレスなくいつまでも走っていられるね」と、かなりリーフをお気に召したようす。
先ほどのカップルを待たせているのが気にかかりながらも、立ち話をつづけているうちに早くも充電完了。400ボルトで7.5キロワットを充電し、航続距離は再び100キロ台に。この間、所要時間約20分。思ったより早く完了したが、やはりひとつの充電ポイントにひとつの急速充電コネクタしかないというのは、これからますますEVが普及していく可能性を考えれば、懸念点のひとつと言えるだろう。
DATA
大黒ふ頭パーキングエリア
神奈川県横浜市鶴見区大黒ふ頭15
営業時間|24時間
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日産リーフを導入! 第4回
リーフで巡る三浦半島13時間の旅(2)
正午、EV利用者に優しい横須賀美術館へ
時刻は午前11時。リーフの腹ごしらえが終わったところで、今度は私たちの腹ごしらえといきたいところ。目指すは海と森に囲まれた全国でも有数の絶景美術館と名高い『横須賀美術館』。少し飛ばして100km/h近くまでスピードを出しながら、首都高速から横浜横須賀道路を経て『馬堀海岸インターチェンジ』を出たら、そこにはヤシの木が並んだ、海岸沿いらしい景色が広がっていた。青空の向こうに太陽がサンサンと輝いていている、そんな天気とも相まって、まさにドライブ日和を満喫といった具合だ。トンネルを抜けて海沿いをそのまま進むと、右手に美術館の建物が見えてきた。
後ろ三方を森と公園に囲まれ目の前に海が広がる景観は、名声に違わずまさに絶景だ。だが、今回この美術館を訪問した本当の目的は、地下駐車場に備え付けられているという充電ポイントを確認するため。そう、ここは普通充電器の備わったEVに優しい美術館でもあるのだ。さかのぼること2011年の春、横須賀市は東日本大震災の経験を踏まえ、災害時にエネルギーが途絶えない仕組みを作ろうとEVのインフラ整備を進めていた。その仕組みづくりの一環として、ここの地下駐車場にも無料(*)の充電ポイントを2カ所設けたのだ。横須賀美術館職員の遠藤創太郎さんによると、今のところ半年で10件ぐらいの利用があるという。
(*)ただし、駐車料金は必要。普通自動車であれば1時間まで=300円、以降30分ごと=150円。展覧会のチケットを購入した場合は、1時間まで無料になる。
早速地下駐車場に入ると「CHARGING POINT」と書かれた青い標識が。まずは、矢印に沿って充電用駐車場にリーフを止める。Sの尽力によりトランクに積んであった充電コネクタを見つけ出し、ロックがかかるまで普通充電ポートにまっすぐ差し込んだら準備完了。あとはフロントガラス手前の充電インジケーター(*)のランプが点滅しはじめたら充電が正常に開始した証拠だ。
(*)リーフは、3つのインジケーターの点灯・点滅・消灯によって、充電中に現在までの充電量を教えてくれる。
とかく充電時間の長さを目の敵にされがちな普通充電器(*)だが、美術館のように長時間滞在することの多い施設とは相性が良いのかもしれない。というのも、急速充電器の場合、充電が完了するまでの時間が短いため、完了したらすぐにEVを動かすようお願いされることが多い。それでは時間が気になって、ゆっくり美術鑑賞や館内を散策というわけにはいかないだろう。対する普通充電器であれば、EVを駐車場に預け、充電したままどこかへ出かけられる。もちろん満充電には時間を要するため、1時間に約12%程度軽く補充するぐらいの役割に制限されてしまうが、図書館や温泉など長時間滞在型の施設に普通充電器を設置することはひとつの策と言える。または、遠藤さんのお薦めに沿って、満充電になるまで「充電しながら美術館の中のテラス付きのレストランでご飯を食べて、近くの観音崎公園やスパで過ごす」——そんなゆったりとした一日の過ごし方があってもいいのかもしれない。
(*)リーフは充電がゼロの状態から、普通充電器200ボルトだと約8時間で満充電、急速充電器400ボルトだと約30分で80%充電ができる。満充電で走る距離は160〜200キロ。
現在『正岡子規と美術』展を開催中の横須賀美術館。開放感たっぷりの館内と、目の前に海が広がる屋上広場をひととおり散策した後は、美術館内のイタリアン『アクアマーレ』で魚介類中心のランチを堪能。リーフを迎えにいくと、充電インジゲーターのランプが2つから3つに増えていて、私たちが太陽の光を浴びながら心地良い2時間半を過ごしている間、充電が70%から90%以上にまで増えたことを教えてくれた。
DATA
横須賀美術館
神奈川県横須賀市鴨居4-1
開館時間|10:00〜18:00
※駐車場の営業時間は8:00~22:00
休館日|毎月第1月曜日
Tel. 046-845-1211
http://www.yokosuka-moa.jp/
午後2時半、航続距離126キロからの三浦半島横切り作戦
少しばかり時間が押してきたため、ここからはショートカットで先を急いだ。とはいえ、やはり外せないのは、日本で最初の洋式灯台として有名な観音崎のシンボル『観音崎灯台』。下から灯台を拝んだ後は、内陸部に入り反対岸に向かって三浦半島を横切ってしまおう。目指すは、編集部のYから夕日がきれいだとすすめられた長者ヶ崎。慣れない山道に手こずり、途中お菓子休憩もはさみ、約2時間ドライブをつづけたところで、ようやく目的地に到着。残念ながら、夕日入りの時間とはいかなかったが、海岸沿いを背景にリーフの写真をパシリ。なお、この撮影のために止まった駐車場には、EVの文字と「50%割引」と書かれた標識が。聞くと、これはEVのインフラ整備を積極的に進めている神奈川県の制度の一環で、EVと認定されたクルマに交付される「神奈川県電気自動車認定カード」を掲示すると、県立施設の一部有料駐車場で駐車料金が半額になるというものだそうだ。
ここからはつぎの目的地、佐島まで一直線のはずだった。が、ここでBの“ビビリ症”が本領を発揮。バッテリーの残量を示す残量計の目盛り(1〜12)は7を超えているから、ゆうに100キロ以上は走り続けられる計算だが、Bはそれでもバッテリーの残りが心配だという。確かに、Bの心配にも一理ある。急速充電器の設置数約50台を誇る横須賀市をはじめ、三浦半島は充電ポイントが充実しているとはいえ、南端の城ヶ島から西側の海岸沿いを走る134号線周辺ではほとんど皆無に等しいのだ。もし三浦半島西側の沿岸ドライブに出かけるなら、途中で横浜横須賀道路に入り、『横須賀パーキングエリア』で充電するという方法を採らざるを得ない。私たちの場合、すでにその充電ポイントを越えた場所にいたため、さらに134号線を北上して逗子市にある充電ポイント『逗子菊池タクシー』に立ち寄ることになった。
午後4時40分、逗子で長時間の急速充電!?
ここの急速充電器は基本的に午後5時まで一般開放しているが、主な設置目的は自社の「EVタクシー」用。それ以外では、1ヵ月に10件ぐらいの利用があるそうだ。到着したときは、先客の赤いリーフがちょうど充電を終えたばかり。持ち主はリーフ歴3ヵ月ぐらいという神奈川在住の50代夫婦。充電スポットの多い神奈川県内でのドライブを中心に、その静かな走りを楽しんでいるようだ。
ここで思わぬ展開が待っていた。すっかり慣れた手つきでSが急速充電コネクタを差し込んでスタートボタンを押すと、なんと「残り時間60分」という表示が。充電がゼロの状態から約30分で充電完了という目安を信じ切っていたため、途方にくれる私たち。もともと時間が押していたこともあってこれはかなりの痛手。仕方がないので、近くのパスタ屋でご飯を食べながら充電を待つことに。それから1時間近くが経過した頃、そろそろ完了したころかしら、とリーフの元にもどってみると確かにまだ充電が続いている。しばらくしてようやく充電完了。所要時間はちょうど60分。400ボルトで7.6キロワットを充電し、航続距離は126キロにまで増えている。さあ、先を急ごう。夕日がもう沈みはじめている!
DATA
逗子菊池タクシー
神奈川県逗子市久木1-3-6
営業時間|8:00〜17:00
Tel. 0468-71-2117
NISSAN LEAF|日産 リーフ
日産リーフを導入! 第4回
リーフで巡る三浦半島13時間の旅(3)
午後5時40分、海辺の別荘で夕日をキャッチ
134号線を南下して向かったのは、1週間単位で借りる“海辺のウィークリー別荘”こと、佐島にある別荘『Nowhere but Sajima』。佐島は横須賀の中では比較的観光客の少ない知るひとぞ知る穴場スポットで、一年を通して海の幸やマリンスポーツを楽しむことができる。そして、この美しい湘南の海辺に建つ白いモダンな3階建ての一軒家こそ、Nowhere but Sajimaだ。定員は4人となっているが、2人分のエキストラベッドの用意があるため、最大6人まで滞在することができる。建物の中からは富士山や江ノ島を見わたすことができるほか、海に向かって垂直方向に建っている作りゆえ、窓の近くに立っているとまるで海の上に浮かんでいるような感覚さえ覚える。運営元Nowhere resortの清水絢子さんによると、最近では滞在だけでなく、ウェディングやギャラリーの利用も増えているという。
ちなみに、ここの駐車場には米テスラの急速充電器が備え付けられている。これは約1年前、某百貨店でテスラのEVとNowhere but Sajimaの滞在がセットになったプレゼント企画が持ち上がったさい、テスラが準備したものだという。残念ながらリーフの規格「チャデモ」には該当しない規格だったが、テスラのEVをお持ちの方には朗報であろう。
DATA
Nowhere but Sajima
神奈川県横須賀市佐島3-10-8
問い合わせ|Nowhere resort
Tel. 03-5785-2320
http://www.nowhereresort.com
午後7時、旅の終盤で、1時間超急速充電の悪夢再び
そろそろ旅も終盤になったところでいざ鎌倉へ。ミシュラン1つ星を獲得したという蕎麦屋「梵蔵(ぼんぞう)」で舌鼓を打ったら、帰宅前に急速充電器が備えてある鎌倉市役所で最後の充電をしよう。そう思っていたが、一筋縄ではいかないのが私たちの旅。まずはリーフの代わりにカメラのバッテリーが尽きてしまった。これは完全に予備のバッテリーを忘れた筆者のミス。嗚呼。その後蕎麦屋へ向かうと、まさかの「臨時休業いたします」の文字。仕方ないので鎌倉市役所へ向かい充電を開始すると、またもやあの「残り時間60分」の表示が。私たちはとにかく気を持ち直そうと、近くのカフェで暖を取りながら、お腹を満たしつつ帰り道の作戦を立てることにした。
ここまで私たちのドライブに付き合っていただいた方はお気づきかと思うが、すでにこの時点で急速充電3回、普通充電1回、合わせて4回充電している。前述のリーフに慣れ親しんだクルマ担当のSによると、急速充電器で80%まで充電したとして、だいたい100キロぐらいを走れるというから、現時点での走行距離148キロという数値を見るとやはり充電の回数が多過ぎた。そこで帰りの76キロは一度も充電せずに、鎌倉から錦糸町まで一気に駆け抜けてみることにした。このプレッシャーにはたしてBが耐えられるのか?
そんな作戦会議を約20分ほどした後リーフの元に戻ってみると、「残り時間41分」と表示されている。やはり時間がかかっているようだ。後からSに確認すると、これは同じ急速充電器でも30分以上かけて100%になるまで充電する機種ということ。先ほどの逗子菊池タクシーの機種も同様だったようだ。さて、まだ充電の途中だが、遅くなってきたこともあり充電を途中で切り上げて帰り道を急ぐことにする。ここでは400ボルトで5.8キロワットを充電、航続距離は再び100キロ台に戻った。
鎌倉市役所では2009年末に急速充電器を1台設置。1日に平均して6件ほどの利用があり、守衛さんによると今年に入ってから利用者の数が一気に増えたという。EVタクシーの利用が3分の1、残りの半分は地元の住民が、その残りをネットで事前に調べてやってくる観光客が占めている。こうした観光地で週末に24時間充電できる急速充電器があるというのは、EVの利用者にとって非常にありがたい話だ。
DATA
鎌倉市役所
神奈川県鎌倉市御成町18-10
営業時間|平日=8:00〜16:30、土日・祝日=24時間
Tel. 0467-61-3421
午後8時すぎ、鎌倉から76キロ先の錦糸町を目指す
さて、帰路についたのは午後8時すぎ。ここから一気に錦糸町まで駆けぬけられるか。横浜横須賀道路に入ったと同時に、早速バッテリーの減り具合を心配するBの“ビビリ症”が再び顔を出しはじめ、エアコンが消された。この時点で航続距離が100キロあるため、残りの76キロは問題なく乗り切れるはずだ。ここはやはり慣れの問題だろう。三浦半島での過剰な充電に慣れてしまい、バッテリーの残量計が7を下回ると不安になってしまうのだ。凍える私たちをよそに、リーフはぐんぐん進む。そしてBはというと、行きに充電した大黒ふ頭パーキングエリアが近づくにつれて、充電したくてたらまらないといった様子。エアコンが入っていないのにも関わらず「暑い」と言っている。
が、この日一番の佳境を突破し、目的地まで残り30キロになった時点でBの心は一気に落ち着いたよう。エアコンのスイッチが再び入れられ、Bとも話ができる状態になった。少し余裕が出てきたので、今さらながら筆者のIPodを取りだし、夜景をバックにショパンの『子守唄』などを流してみる。Sと筆者は一様にそのスピーカーから聞こえてくる音の良さに驚く。これもエンジン音のない静かなEVだからこそだ。ここで改めて聞いてみよう。Bさん、このリーフと良い関係を築けそうですか。
「充電に関しては気が気でない。理屈では80%の充電で100キロほど走れると分かっていても、実際にはどれぐらい走れるか分からないから不安だった。逆にもし『このぐらい(の距離が)走れますよ』ときちんとした数値が出るようになっていれば、あんなにたくさん充電しなくても安心して走れたと思う」と語ったB。そう、リーフではメーター上に航続可能距離が出るものの、その瞬間、瞬間の走行状況に応じて出された数値だけに、ちょっとしたことですぐに変動してしまう。つまり常に100%信頼できるとは言いがたい。Bにとっても、実際にどのぐらいの距離が走れるのかを正確に示した数値が出ないことが気がかりだったようだ。これは、EVに初めて乗るひとは、誰もが一度は通らなくてはいけない道なのかも知れない。つまり、回数を重ねてある程度バッテリーの残量と走行距離との関係性が分かってくれば、そして充電がなくなるかも知れないという不安とうまく付き合うことができるようになれば、リーフを楽しく乗りこなすことができるということなのだろう。
ただし、乗り心地に関しては「小回りが利いてとても運転しやすかった。スピードを出したときやカーブに入ったときに、スーッと動いてくれるのがとても心地良かった」と大絶賛。またリーフと過ごした一日を振り返って「燃料代が0円だったのが大きい。あと、高速に乗ったときに、追い越し車線に行こうという気にはならなかった。スピードを出してパワーメーターの数値が上がることを気にしてのことだったが、結果的にこんなにゆったりドライブしたのは初めてというぐらい休日らしい一日を過ごすことにつながった」とも。224キロ、13時間にわたる旅を終えた時点で、すでにBはリーフとの付き合い方をマスターしたようだ。