まさに「イブニングドレスに身を包んだF1マシン」そのものだった──フェラーリ ローマに試乗|Ferrari
CAR / IMPRESSION
2021年3月31日

まさに「イブニングドレスに身を包んだF1マシン」そのものだった──フェラーリ ローマに試乗|Ferrari

2682万円というプライスはリーズナブルかもしれない

ステアリングホイールに設置されたスターターボタンを押してフロントのV8ツインターボユニットに火を入れ、京都の狭い路地をATモードで走り出す。前述の新型8段デュアルクラッチ式トランスミッションは、オートマッチック車と遜色ないほどスムーズに、1,000〜2,000rpm辺りで最適なギアへと駆動力をつなぐ。上質なクーペをドライブしている感覚だ。
エンジンは低回転域でも低音の効いたサウンドを奏でるが、オーバー600psのハイパワーユニットであることが嘘であるかのごとく扱いやすい。街中でのストップ&ゴーでも、ドライバーの右足の動きに忠実に、なめらかに加減速を繰り返してくれる。アクセルやブレーキのコントロール性が極めて高いから、ステアリングを握った瞬間から体にしっくりなじむ。
フェラーリGT系モデル初となる5モードを備えたマネッティーノ(ドライビングモード)を「ウェット」、もしくは「コンフォート」にセレクトしている限り、乗り心地はタウンスピードでも上々。スタイリングの印象通り、上質でエレガントな走りが印象的だ。もちろん、それなりに締め上げられたサスペンションにより、路面の状況によっては輪郭のはっきりとした突き上げを伝える。しかし、フェラーリならではの高いボディ剛性やサスペンションをはじめとする各パーツの取り付け剛性ゆえ、ハーシュネスや振動が増幅されることがないから、不快じゃない。
京都の交通量の多い市街地を東へと行き、山中越えといわれる峠道を抜ける。すると、京都と滋賀県間にそびえる比叡山の山腹を縫う、比叡山ドライブウェイと奥比叡山ドライブウェイが続く。起伏に富んだワインディングロードでのローマは、まさに「イブニングドレス」という形容がふさわしいエレガントな外観とは裏腹に、スーパースポーツそのもの走りが楽しめる。
とにかく身のこなしが軽快で、適度な重さのステアリングをコーナーの頂点に向けてじわりと切り込むと、ロールをしっかりと抑えながら、優美なロングノーズを鋭くインへと向ける。フロントミドシップレイアウトのせいか、ロングノーズでありながら、ドライバーを中心に曲がっていく感覚があるのも、好感が持てる。
最高出力620cvと最大トルク760Nmというアウトプットを誇るおなじみのV8ユニットは、ターボエンジンのネガを一切感じさせないのがいい。回転数の上昇とトルクの盛り上がり、そしてサウンドの高まりをピタリと一致させながら、NAユニットのごとく7,500rpmのレッドゾーンまでシャープに吹け上がるのだ。コーナー頂点からアクセルペダルを踏込むと、低回転域からでも間髪入れずにリアタイヤが地面を蹴り上げ猛然と加速する。とにかく絶品のエンジンである。
シャープなハンドリングといい、パワフルかつレーシーなエンジンといい、サーキットを走らせても、きっと十分以上に楽しめるだろう。走れば走るほど、「イブニングドレスに身を包んだF1マシン」というフレーズが説得力を帯びてくる。
短い距離ではあったが、名神高速でのクルージングも体験した。速度100km/h程度で8段ギアをセレクトすると、エンジン回転数1,500rpmほど。つまり車内は静かで快適そのものだ。しっとりと安心感のあるステアリングフィールや、アクセルペダル操作で思うように加減速が可能なパワートレーンなど、単に快適なだけではなく運転自体も楽しめるのは上質なGTならではだろう。GTとしての資質とパフォーマンスの見事な融合ぶりは、たとえばポルシェ911ターボに勝るとも劣らない出来だと思った。少々車高が低く車幅が広いことを除けば、911ターボと同様に高い日常性も備えている。しかも、ローマには、唯一無二の美しいスタイリングという美点もある。2682万円というプライスは、もしかしたらリーズナブルといってもいいのかもしれない。

Spec

Ferrari Roma|フェラーリ ローマ

  • ボディサイズ|全長 4,656 × 全幅 1,974 × 全高1,301 mm
  • ホイールベース|2,670 mm
  • トレッド前/後|1,652 / 1,679 mm
  • 車両重量|1,570 kg
  • エンジン|3,855 cc V型8気筒DOHC ターボ
  • ボア × ストローク|86.5 × 82.0 mm圧縮比|9.45:1
  • 最高出力|456 kW(620 cv)/ 5,750-7,500 rpm
  • 最大トルク|760 Nm / 3,000-5,750 rpm
  • トランスミッション|8段F1デュアルクラッチ
  • 駆動方式|FR
  • タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 285/35ZR20
  • 0-100km/h加速|3.4秒
  • 0-200km/h加速|9.3秒
  • 最高速度|320km/h
問い合わせ先

フェラーリ

https://auto.ferrari.com/
https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-roma

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