精悍なフェイスに充実の安全装備

ボルボC70における今回のマイナーチェンジのポイントを列記すると下記のようになる。

・T5への1本化
・フロントフェイス刷新
・リアデザイン変更
・インテリアデザイン一新
・シートベルト・プリテンショナーを全席装備
・ハイパフォーマンスオーディオ標準装備
・アダプティブブレーキライト新採用

フロントマスクはXC60や先頃マイナーチェンジを受けたC30に連なる精悍なものとなったのが印象に残る。従来モデルとプロポーションやルーフラインは同様ながら、細部に手を入れることでうまく現代性が表現されている。

安全装備の面も充実している。世界初を謳うドア内蔵型インフレータブルカーテン（サイドエアバッグ）で、オープン時でも側突の衝撃から乗員を保護するのが注目すべき点。さらに転倒時はROPSバーとよばれる格納式ロールオーバーバーが瞬時に飛び出しトップを上げているときはリアウィンドウを突き破って、乗員の頭部を保護する。シートベルト・プリテンショナーを全席に標準装備。さらに、時速50kmを超えての走行時に緊急制動をかけたさいブレーキランプが点滅を開始し、場合によってはハザードランプも併用する、アダプティブブレーキライトを採用している。

運転したのはラグジュアリーパッケージ装着車で、内容はセミアニリン本革シート、プレミアムサウンドシステム、死角情報を提供するBLIS（ブラインドスポットインフォメーションサービス）、キーレスドライブ、ボルボ・ガードシステム、18インチタイヤなどからなる40万円のオプションパッケージ。セミアニリン本革シートは、最近の高級車がこぞって採用していて、吸い付くような手触りがよい。内装に凝っているのは、電動格納式メタルルーフを開けたときにどう演出するかを重視したため。こういうクルマでは重要なことだ。

1,730kgの車両重量を感じさせないパワー

エンジンは2521ccの5気筒で、インタークーラー付きターボチャージャーを備えて230psの最高出力を発生する。特性としては2,000rpmを超えたあたりからターボバンドに入り、ぐいぐいと加速をしていく。ターボ領域への移行は滑らかで、自然で力強い加速感覚。パワーが途切れなく出てくる印象だ。重量1,730kgの車体を重いとは感じさせない。

乗り心地はじつは18インチタイヤ装着車だったせいだろう、このクルマに期待するより少し硬めだった。そのぶんハンドルを切ったときの車両の反応速度などはスポーティで、運転が好きなひとはこちらを選ぶ場合もあるだろう。ただハンドルの基本設定はどちらかというと、おおらかなフィールで、積極的にコーナリングを楽しむクルマという印象は薄い。ゆったりした気分で乗るほうが向いていそうだ。個人的にはこの感覚は気に入っているし、アウディやＢＭＷといったドイツのライバルがウルトラシャープなハンドリングを特徴とするのと一線を画しているのも、逆に強みと考えてもいいと思う。

オープン走行は気持ちがよく、サイドウィンドウを下げて高速道路を走っても、前席にいるかぎり風の巻き込みがわずらわしいと思うことはない。トップを上げてクローズ状態にすると、排気音、吸気音ともに侵入は抑えられていて、トップからの風切り音も低いレベルで、静粛性が高くなる。やはり優雅に乗るクルマとして開発されたという感がひとしお。オーディオもオプションで910ワットの14スピーカーを備えたシステムが選べたりするので、気持ちよく乗れるクルマを求めているひとには、C70はきっと満足がいく選択になると思う。おそらく17インチタイヤがお薦めだが。

ボルボではアウディA5カブリオレ（784万円）やBMW335iカブリオレ（802万円）といった輸入車市場におけるライバルに対しての価格優位性を強調する。たしかにベース価格が549万円で、ラグジュアリーパッケージが40万円で、組み合わせても589万円と、ドイツの2モデルよりはだいぶお買い得感が強い。ただアウディなどはクワトロ総輪駆動システムを装備しているので、クルマの性格が根本から異なっているわけだけれど。

VOLVO C70 T5 GT｜ボルボ C70 T5 GT
ボディ｜全長4,615×全幅1,835×全高1,405mm
ホイールベース｜2,640mm
車両重量｜1,730kg
エンジン｜2.5ℓ 直列５気筒DOHC＋インタークーラー付ターボチャージャー
最高出力｜169kW[230ps〕/5000rpm
最大トルク｜320Nm[32.6kgm〕/1500-5000rpm
駆動方式｜前輪駆動
トランスミッション｜5段AT
価格｜549万円