パワーユニットは3.7リッターと2.5リッターの2本立て

フーガは4,945mmと余裕ある全長に1,845mmという堂々たる全幅をもつ4ドアセダン。米国ではプレミアムブランドであるインフィニティのチャネルで売られるため、ライバルとなるレクサスやドイツの各車などを意識したのか、後輪駆動方式が引き続き採用され、全輪駆動モデルもラインナップに設定されている。

フロントに縦置きされるパワープラントはV型6気筒となり、333馬力の3.7リッターと、225馬力の2.5リッターの2本立て。トランスミッションはマニュアルモード付き7速トルコン式オートマチック。今回は日産としては初の車両統合制御システムであるドライブモードセレクターがオプション設定されたのが特徴。スタンダードモードをはじめ、パワートレインのレスポンスを高めるスポーツモード、スムーズな発進などにくわえやはりオプションのECOペダルと組み合わせれば、アクセルペダルからの反力で燃費の悪化を運転者に伝えるECOモードが設定されている。

好感のもてるステアリングフィール

今回試乗したのはシリーズ中走る楽しさをもっとも追求したというフーガ370GT type S（492万4500円）。ドライブモードセレクターにくわえ、スポーツチューンド・サスペンションを装着している。それだけに走り出しから2,025kgの車重を意識させない活発さで驚かされる。とりわけスポーツモードを選択してアクセルペダルを軽く踏めば、後ろ脚でいきおいよく地面を蹴り出すような軽快な加速感を味わえる。

ハンドリングの味つけは日産はとりわけ上手で、フーガでは中立付近から切り出しへと移行していくときも適度な重厚感を保ちつつも、重すぎることはなく、また車両の挙動を正確にドライバーの手の平に伝えてくれる。たとえば欧州のスポーツセダンのライバル、アウディやＢＭＷのような分かりやすいスポーツ感覚ではないが、この重さはフーガの個性となっていてとても好感がもてる。

優れたグランドツーリングカー

スポーツモードでの軽快な加速感については書いたとおりで、足まわりも少し硬すぎか、と思う場面がたびたびあった。なので、スタンダードモードがちょうど落ち着きがあって好ましいが、ストップ＆ゴーがさほど多くないところではECOモードも試す価値がある。ペダルの反力は好みで2段階選べるようになっているが、アクセルペダル自体が反力で踏みすぎを注意してくれるまでの加速はけっして悪くない。ペダルが“許してくれる”範囲でアクセルペダルを踏み込む練習をすると、かなりの好燃費が期待できそうだ。

室内はセミアリニン本革シートを備え、ウッドパネルも本木目だったので豪華だが、このtype S というスポーティさがウリのグレードにはやや重すぎの印象。もっと薄くていいかもしれないし、場合によっては軽快な2トーンとか、フェアレディZ ロードスターのようなスポーツウェアを思わせる素材をシート表皮に採用するぐらいやってもよかったかもしれない。送迎からスポーツドライビングまでカバーする範囲が広すぎるということかもしれないけれど、楽しい自動車ライフを提供してくれることを考えているなら、もう一歩コンセプトで踏み込んでもらいたかった。

このフーガで東京と岐阜の美濃を日帰り往復したことがある。大人4人でのドライブだったが、高速での乗り心地は快適。中間加速性にも優れ、疲労感は驚くほど少なかったのが印象に強く残った。ハンドルが中立付近で少し神経質だったようだが、タイヤのせいだろうか。

NISSAN FUGA 370GT typeS｜日産フーガ 370GT タイプS
ボディ｜全長4,945×全幅1,845×全高1,500mm
エンジン｜3.7ℓ V型6気筒DOHC
最高出力｜245kW[333ps〕/7,000rpm
最大トルク｜363Nm[37kgm〕/5,200rpm
駆動方式｜後輪駆動
トランスミッション｜7速AT
価格｜492万4500円