RANGE ROVER |レンジローバー(前編)|レンジローバーの世界観は健在
RANGE ROVER|レンジローバー(前編)
レンジローバーの世界観は健在
レンジローバーヴォーグ、レンジローバースポーツが新エンジンを搭載し、さらに走行性能が向上。2009年12月5日よりジャガー・ランドローバージャパンの手で発売のニュー・レンジローバーの試乗記をお届けする。
文=小川フミオ写真=吉澤健太
新開発の5リッターV8ユニット
レンジローバーヴォーグには新開発の5リッターV8ユニットが搭載された。従来のスプレーガイデッド・ガソリン噴射システム、トルク駆動独立デュアル可変カムシャフトタイミングといった新技術の採用を特徴としており、「レンジローバーヴォーグ5.0 V8」には自然吸気エンジン、「レンジローバーヴォーグ5.0 V8 SUPERCHARGED」にはおなじユニットにスーパーチャージャーを組み合わせたものの2種類が用意されている。
自然吸気エンジンは、従来の4.4リッターV8の306ps/5750rpm、44.9kgm/4000rpmに対して、新型は375ps/6500rpmの最高出力と、52.0kgm/3500rpmの最大トルクを誇るようになった。いっぽうスーバーチャージドは、従来は4.2リッターで396ps/5750rpm、57.1kgm/3500rpmだったものが、今回は5リッターV8に過給器が組み合わさることで510ps/6000~6500rpmの高出力と625Nm(63.8kgm)/2500~5500rpmの大トルクを得ている。メーカーのランドローバーによると「燃費効率とCO2排出量を増加することなく」これらの高性能を実現したという。
同時に「ビークルダイナミクス」の向上も謳われている。ひとつは「SUPERCHARGED」に標準装備される「アダプティブ・ダイナミクス・システム」。随時モニターされる路面状況を判断し適切なダンパー設定を連続的におこなうものだ。
オンオフともに走行性能が向上
オフロードとオンロードともに走行性能の向上させることも今回の眼目で、特徴を列記すると下記のようになる。
・ダイヤルによって走行状況に応じたエンジンとトランスミッション、サスペンションとトラクションの統合制御を行える「テレイン・レスポンス」
・急勾配の斜面を下るとき最適な制動力を自動的にかけてくれる「ヒルディセント・コントロール」
・急勾配でのスムーズな坂道発進を行える「グラディエント・リリース・コントロール」
これらの装備に今回は改良をくわえている。たとえば、レンジローバースポーツ SUPERCHARGEDでは「テレイン・レスポンス」にダイナミックモードを追加。オンロードでの走行性能を向上させるためのもので、ステアリング、サスペンション、スロットルレスポンスを統合制御して、一層スポーティな走行を可能にしている。さらに同モデルでは、ステアリングホイールにパドルシフトを備えるようになった。
デザインも一新
外観上も従来モデルと一線を画すデザインが採用されている。レンジローバーヴォーグではフロントグリルの基本意匠が横方向の3本ラインが強調されたメタリックなものとなり、それにシンプルで丸みを帯びたフロントバンパーが組み合わされる。3本ラインのモチーフは前輪背後のエアベントにも用いられ、側面からでも新型であることが一目瞭然だ。レンジローバースポーツでは横2本のラインが特徴だ。かつレンジローバースポーツでは室内装備がより豪華になっている。
もうひとつ、今回の新型導入にあたって注目すべきことはランドローバージャパンが導入した「新車CO2オフセットプログラム」だ。購入すると、1台あたり走行距離7万2000kmで排出されるのと同量のCO2を相殺(オフセット)するプロジェクトにランドローバー社が資金を供給するというもの。
はたして試乗すると、レンジローバー・ヴォーグでまず印象に残ったのが室内。計器盤には液晶画面をもちいたバーチャル・インストゥルメントパネルが採用されていて、エンジンスタートさせると、眼前に速度計と回転計をはじめ、計器や各種操作系の作動状況が表れる。メーターの針を虚像で表記するのは、メルセデスSクラスをはじめ、高級車の世界ではときどき見られる傾向だが、すべてバーチャルというのは、新しい感覚だ。コンピュータに慣れているエグゼクティブなら違和感がないのだろう。
よりパワフルになった走り
乗り出しての第一印象は375psの5リッターV8の恩恵でよりパワフルになった。かつこのエンジンの魅力である、たっぷりしたトルクと途切れないパワー感覚は、レンジローバーヴォーグの一種の「過剰さ」とよく合っている。乗り心地はソフト方向で、長距離ドライブに「巡航」という航海の用語を使うことがあるが、その感覚によく合う気がする。長い距離をものともせず、ストレスなく乗員を運んでくれる、そんな役割をしっかりこなしてくれる機能性は、豪華で高価で大きな車体がこのクルマの存在理由でないことを知らせてくれる。
4970mmの車体に1880mmの全高。その広さと開放感にくわえて、「オートバイオグラフィー」と呼ばれるシートやダッシュボードの色や素材をかなり幅広く選んで組み合わされるプログラムが、高級車としてのレンジローバーの魅力であることは変わりがない。カタログを取り寄せて自分の好みを探すのはかなり楽しい。そしてこの居心地のいい世界が、高速で移動し、かつ(日本では少ないけれど)オフロードにまで分け入っていける。そんな可能性をいろいろ夢想するだけでもレンジローバーの世界観は健在だと知れる。
ランドローバーコール
0120-18-5568