フルモデルチェンジした新型クラウンに試乗|Toyota
CAR / IMPRESSION
2018年7月18日

フルモデルチェンジした新型クラウンに試乗|Toyota

Toyota Crown|トヨタ クラウン

フルモデルチェンジしたトヨタの旗艦、クラウンに試乗

トヨタのフラグシップセダン、クラウンがフルモデルチェンジし15代目に進化。千葉を舞台に、新型の実力を試した。

Text and Photographs by HARA Akira

起死回生の若返りを目指した新型

6月26日から販売が開始された新型トヨタ「クラウン」。1955年の誕生以来、トヨタの、そして日本のフラッグシップセダンとして開発が続けられてきた日本専用の高級車だ。創業者である豊田喜一郎氏によって誕生した初代、3代目の「白いクラウン」、4代目「クジラクラウン」、7代目「いつかはクラウン」、12代目「ゼロクラウン」、14代目「ReBORN」など、世代ごとに大胆なアップデートが行われていて、今回は15代目となるフルモデルチェンジとなる。

クラウンを取り巻く状況としては、ユーザーの高齢化(平均で60歳代後半)、メルセデス・ベンツ「Cクラス」「Eクラス」、BMW「3シリーズ」「5シリーズ」、アウディ「A4」「A6」シリーズなど上級セダン市場でのドイツ御三家のシェア拡大、SUVやミニバンなどのクルマの多様化など、大変厳しいのだそうだ。そこで新型は、従来のユーザーを考慮しつつもターゲット層を40〜50歳代に設定し、起死回生の若返りを目指したのだ。

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開発を担当した秋山晃チーフ エンジニア

開発を担当したのは秋山晃チーフエンジニア。7代目クラウンのCMを見てトヨタ自動車への入社を決め、卒業アルバムにも「いつかはクラウン」と書いたという。新型は「初代クラウンが誕生した創業期の意思を継承し、“日本人の頭と腕”でもう一度世界を驚かせたい、との気概で開発した。デザインや走り、コネクテッドなど、すべての面でお客様にハッとしていただけるようなクルマに仕上がったと実感している」と紹介した。

千葉県内の一般公道を走り、デビューしたての市販モデルの実力を試した。

Toyota Crown|トヨタ クラウン

フルモデルチェンジしたトヨタの旗艦、クラウンに試乗(2)

V6ハイブリッドは最高級のクラウン

先代モデルでは、ショーファー用の「マジェスタ」、フォーマルな「ロイヤル」、パーソナルな「アスリート」がラインナップされていたが、再出発を目指す新型ではこれを一本化。代わりに3種類のパワートレーンを採用することで、クルマの性格づけを行うという方法がとられた。

最初に乗ったのが、8GR-FXS型3.5リッターV型6気筒マルチステージ ハイブリッドシステムを搭載した「G-Executive」だ。最高出力220kW(299ps)/6,600rpm、最大トルク356Nm/5,100rpmを発生するV6エンジンと、132kW(180ps)、264Nmのモーター、リチウムイオンバッテリーの組み合わせで、システム全体の出力は264kW(359ps)というハイパワーを発揮する。

このパワートレーンはレクサス「LS」や「LC」と同じもので、トヨタ車としては初採用のもの。深くアクセルを踏み込めばV6エンジンらしい緻密な回転音を伴って、制限速度域まではあっという間に到達する見事な加速を披露してくれる。

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ハイブリッドシステムには有段ギアが組み合わされており、制御としては10段変速のトランスミッション。パドルシフトが備わるので、ワインディングロードなどではドライバーの思い通りの走りも楽しめそうだ。

一方、ドライブモードをNORMALに切り替えてゆったり走る際にはEV走行領域が一気に拡大し、静かで優雅な走りが楽しめる。特にG-Executiveモデル専用として、バックガラスの高板厚化、後席シートやラゲージ周辺への吸音材やリアホイールハウスへの遮音材の追加が行われており、「最高級のクラウン」を求めるオーナーは、このモデル一択と言っていいと思う。

Toyota Crown|トヨタ クラウン

フルモデルチェンジしたトヨタの旗艦、クラウンに試乗(3)

オールマイティな2.5ハイブリッドとスポーティな2.0ターボ

次は、最量販モデルとなるであろうA25A-FXS型2.5リッター直列4気筒エンジン+リダクション機構付THSIIハイブリッドシステムの「G」。最高出力/最大トルクが135kW(184ps)/221Nmのエンジンと、105kW(143ps)/300Nmのモーター、ニッケル水素バッテリーを組み合わせ、システム全体で166kW(226ps)を発生するモデルだ。

3.5リッターモデルに比べると、豪快な加速感という面では一歩譲るが、その走りには全く不満がなく、加減速時の安定感や、ステアリングが一発で決まるコーナリング、目線の動きが少ない走りなど、今回のクラウンが目指したという走りそのものが実感できる。テストのためにドイツ・ニュルブルクリンクの北コースに持ち込んだのもこのモデルだったということで、あらゆるシチュエーションで安心感がある。JC08モードで24.0km/ℓという優れた燃費性能と、2.5リッター車だけがレギュラーガソリン仕様であることを加味すると、経済性の面でもプラスポイントが高いモデルだ。

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最後は、最高出力180kW(245ps)/5,200-5,800rpm、最大トルク350Nm/1,650-4,400rpmの8AR-FTS型2.0リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載した「RS」。

車体重量は、試乗した3.5リッターモデルが1,900kg、2.5リッターモデルが1,750kgであるのに対し、複雑なハイブリッドシステムを持たない2.0リッターターボは1,730kgに収まっており、当然ながら軽快感やコーナリング性能はこちらが上。エンジンとハイブリッドシステムの切り替えがないためか、低速から高速まで、アクセルペダルと車速がリンクする感覚が分かりやすい。

スポーツ+モードを選択すると、エンジン音にスピーカーからの音がミックスされてビート感溢れるものとなるが、荒れた一般道ではゴツゴツ感が増してくる。そんな時は、コンフォートにするか、カスタムモードで自分の好きなセッティングを選ぶという手もある。燃費は12.8km/ℓとそれなりのもの。RSモデルらしい左右4本出しマフラーやトランクリッドの小型ウイング、クロームメッキが輝く5本スポークホイールなど、スポーティなクラウンを求めるならこのモデルとなる。

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フルモデルチェンジしたトヨタの旗艦、クラウンに試乗(4)

6ライト化で上質なスポーツセダンであることを表現

アイコンである太いCピラーを廃した6ライトに試乗後、新型のデザインを担当した國重健・グローバルデザイン企画部主査、走行性能を担当した菊池巧・車両技術開発部運動性能試験課チームリーダー、電装関係の落合弘明・MSシステム設計部主任に話を聞いた。

國重氏は、エクステリアが大きくスポーティに振られた理由として、先代モデルで初めて「アスリート」が「ロイヤル」を抜いて6〜7割を占めたことと、法人用モデルがセダンからミニバンなどへと多様化していったことを挙げた。

そのため、若いユーザーにも反応してもらえるロングノーズ・ショートデッキ、短いオーバーハング、四隅に配したタイヤなど、グローバルのトレンドに則ったものに一新。また、デザインを模索していた初期の段階で新型のスケッチを社内公募したところ、どの作品にも全て太いCピラーが描かれていて、新型は「変わった」ことを発信するため、これを外すことを決断。流麗な6ライトウインドウと後方に伸びやかに流れるルーフラインを採用することで、上質なスポーツセダンであることを表現したという。

ただし、車幅は1,800mmをキープすることが至上命題であったため、ワイド感を出すための前後の絞り込みのラインは相当苦労したようだ。

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一方で、大きく変わったボディデザインに対して、顔は今までの財産を残したものとし、どこから見てもクラウンであることが分かってもらえるようにしたとのこと。上品なグリルとするため、クローム部分を立体の内側に取り付け、そこにグリルのギザギザが写り込まないよう、別にブラックの壁を取り付けるなど、日本的で細かな作り込みがされていることも紹介してくれた。

「広い室内空間や、トランクにゴルフバックが入ること、1,800mmを超えない全幅など、クラウンマストを死守したところにクラウンらしさが表現されています」と語る國重氏。「クラウンの中では4台目のクジラクラウン、それ以外なら初代セリカは今でも大好きなクルマです。大きなクルマの開発を担当していますが、実際に自分が運転しているのは小さなクルマです。そして、ボディの立体感が手のひらに伝わってくる洗車が好きなんです」とのことだ。

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フルモデルチェンジしたトヨタの旗艦、クラウンに試乗(5)

BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスの良いとこ取り

ニュルブルクリンク北コースで行われた操縦安定性のテストのため、欧州トップのテストドライバーの助手席で全開走行する新型クラウンに乗った菊池氏は、その走行後「日本専用車でこんなレベルが必要なのか? ここまでは要らんだろう。こっちでそのまま出せばいいのに」とドライバーに評価されたことを披露。ライバルとなるBMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスに乗り、それらの良いとこ取りできたのが今のクラウンである、とした。

レクサスでは「GS」「IS」「RC」などのスポーツモデルを担当してきており、今回のクラウンは、古いユーザーにも満足感を与えつつ、現代の走りに耐えられる操縦安定性を見つけ出すという兼ね合いの部分で、一番苦労したのだそうだ。

電装を担当した落合氏は、目線を落とさず操作ができるクラウンの2画面ディスプレーと、新型の柱であるコネクテッドを紹介。実際にコネクテッドを試してみた。ステアリングのトークスイッチ一つで24時間365日、専任オペレーターと会話しつつナビの設定や行きたいお店の情報などきめ細かいリクエストに対応してくれる「オペレーターサービス」と、機械音声対話で検索等が行える「エージェントサービス」を選ぶことができる。その便利さは、一度味わうとやめられなくなりそうだ。

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3台を乗り終えてみると、やはり1,800mmの全幅と5.3メートルという最小回転半径が、輸入車に比べて大きなアドバンテージであることを感じるし、クラウン用のナローボディTNGAプラットフォームによる走りが、進化の度合いを意識させてくれる。インテリアでは、カップホルダーや小物入れの動きに高級車らしいなめらかな動きを取り入れていて、ちょっと感心させられてしまう。これなら歴代のオーナーでも、新規の若いオーナーでも十分満足できるのでは、と思わせてくれる仕上がりである。話を聞かせてくれた3人は、上から目線で申しわけないが、なかなか素晴らしい仕事を達成されたようだ。

価格は、3.5HVが623万7,000円から718万7,400円、2.5HVが497万8,800円から632万3,400円、2.0ターボが460万6,200円から559万4,400円となる。

           
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